表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
157/368

109.ボーナ商店

今日は、ボーナ商店です。

ふふふ。楽しみです。


ボーナ商店が終ったら、念願の街歩きもあります。

ふふふ。楽しみです。


昨日の約束通り、今日もダナ管理官と一緒です。

昨日、海浜公園から、エクゴ商店に戻って、管理官は無事メガネを入手しました。

とても嬉しそうでした。ニコニコしてました。

私には、全く分らないのですが、ロウガンというのは、そんなに辛いものなのでしょうか?

「お前ら、若いやつには絶対に分らないよ。そのうち歳を取ったら嫌でも分るようになる。」

と言ってましたけど。


昨日、グラナラ城に戻る鉄道に乗っている間に、管理官と今後の予定を相談しました。

今日も入れて、滞在するのはあと3日です。


アトラス領の訪問にワクワクしていたら、あっという間でした。


たらら場の製鉄も見てみたいですし、ガラス研究所にも行ってみたいのですが、絶対にお土産を買う機会は逃せません。

昨日の状況では、ちゃんと予定していないと、どうなるか分りませんからね。


今日は、ボーナ商店に行って、街でお土産を手に入れます。


明日、たらら場とガラス研究所に向います。

管理官も見てみたいと言うので、明日も管理官と一緒に廻ります。


そして、その翌日は、最終日です。


同僚と分れて行動してましたから、最終日は皆と一緒に過そうと思っています。

夜には、考案税の調査官で集まって打ち上げをする予定です。


そして、その翌日の昼には、グラナラ港から、王都に戻ります。


本当に、あっという間でした。


例の如く、アトラス鉄道で、グラナラ駅から、マリム駅へ移動します。


途中のアトラス大橋は、本当に絶景です。

この絶景とも、あと3日でお別れです。


なんだか、王都に戻りたくなくなりつつあります。

何とか、ニケさんの助手に収まる方法はありませんかねぇ……。


うっ。いけない。いけない。

現実逃避してしまいました。


マリム駅に着きました。

管理官は、最初に手形代金の支払いにエクゴ商店に出向きたいのだそうです。まあ、ボーナ商店の向かいですから、私に異存はありません。


でも、王都にある支店で支払っても良いとエクゴ商店の人は言ってましたよね。


「昨日の夜、このメガネを使ってみて、絶対に手放せない道具だと分ったんだ。だから、完全のオレのものにしたいと思ったんだよ。」


そうですか。私には、あと20年ぐらいは、理解できそうもない感情ですね、それは。


駅から、歩いてエクゴ商店に向います。大店おおたなは、街の中心部あたりに集中しています。駅からもそれほど遠くありません。


ふむ。大店のあるあたりに駅を作ったのでしょうか?駅の側に大店が移転したのでしょうか?どっちでしょう?

なんとなく後者のような気がします。

この領都は、今や、駅を中心に人と物が流れます。

力と金がある大店が駅の側に無い理由がありませんからね。


管理官が、手形の手続きをしている間に、エクゴ商店の中を見て廻ります。一番の目的は、お土産です。

多分、一番お土産に良さそうな商品は、エクゴ商店の中にありそうです。


やっぱりガラス製品が多いですね。エクゴ商店には、沢山の工房の作品が置いてあります。

レオナルド工房の棚がありました。

あっ。昨日頂いた赤いガラスのコップが置いてあります。

金額は……


「嘘でしょ!」


一つ10ガリオン(=20万円)もします。二個で20ガリオン(=40万円)って。管理官のメガネが三つ買えるような金額です……。

こんなもの貰ってしまって本当に良かったんでしょうか……。


呆然としていた私のところに、手続きを終えた管理官がやってきました。


「どうした、ボーとして?」


「管理官、これ……。」


「ん。あっ昨日のガラスのコップだな。どれどれ、うえっ。」


管理官も固まってます。


「ど、ど、どうしましょう?」


「そ、そ、そうだな……。」


突然、管理官は突然深呼吸を始めました。落ち着いたのか話を再開します。


「だ、大丈夫だろう。なにか優遇した訳でもないし、戦友へのプレゼントと言っていたんだから。

しかし、やはりガラス製品は高いな……。

いや、この赤いガラスが特別高いみたいだな。やっぱりきんが入っているからか?

と、とにかく、金額の事は忘れよう。見なかったことにしよう。」


「そ、そ、そ、そうですね……。」


今日も、エクゴ商店の中には、沢山の人が居ます。

私達の周りの人たちが、こちらを窺っています……。

のんびりお土産探しの気分では無くなっていました。


「か、管理官、予定通り、ボーナ商店に行きませんか?」


「そうだな、()()()()()()()()()()()()()()()。」


急いでエクゴ商店を出て、向いにあるボーナ商店の店の前に移動しました。

まだ、心臓が自分の心臓では無くなっているみたいです。

とりあえず、管理官を真似て、深呼吸してみます。


「それじゃ、入るか?」


管理官は、私が落ち着くのを待っていてくれたみたいです。ありがたい事です。


「はい。それじゃ、夢にまでみたボーナ商店本店を訪問します。」


「随分大袈裟だな。」


「いえ、ここは、ニケさんと密接に係わる服飾品店ですよ。」


王都にも支店のある、ボーナ商会へは、何度か買い物に行きました。

ニケさんの考案申請を見ていて、密接に関連している事には気付いていました。

何しろ、紙の販売は、ボーナ商会が独占状態です。

紙工場の管理もボーナ商店なのは、先日のコンビナート訪問で知りました。


他にも色々係わっているフシがあります。

この目で見たり聞いたりしたいじゃないですか。


店の中に入ると、様々な色で染め上げられた布が大量にあります。

そして、その色はとても鮮かです。


漂白した布を染めると、ここまで鮮かな色の布になるのですね。

アトラス布が評判になるのも分ります。


中には、様々な色の花を染め上げている布もあります。

蝋纈染めでしょう。

これはニケさんの申請書にありました。


やはり、ニケさんと深く係わっているのは確かなようです。


「それで、どうする?また話を聞くのか?」


「そうですね。話は聞きたいんですけど……まずは、店の中を探索ですね。

エクゴ商店も、本当は店の中を見たかったんですけど、管理官のメガネと、昨日のガラス製品の所為で、店で扱っている商品を見れてないんですよね。

ボーナ商店は、まず、店で扱っている商品を見てからです。」


なんとなく、管理官は不満そうです。

男性の管理官は、服飾関係は苦手なんでしょうか?


「えっと、管理官?何か不味いことあります?」


「いや。大丈夫だ。何かを着てみたいとか言われると、ちょっと対応できないかなと思っただけだ。」


「えっ。そんな事しませんよ。大体、服を購入するお金なんて、持ってませんから。」


「あっ。そうか。なら良いんだ。オレの嫁さんとこういう店にくると、なかなか、終りが見えなくてな。どちらかというと、苦手なんだ。

そうじゃなきゃ、大丈夫だ。」


うーん。私は視察しに来たんですけどね。新しい服が買いたくて来た訳じゃないんですが……。

まあ、大丈夫といわれたから、店を堪能しましょう。


入口を入ってすぐのこのあたりは、沢山の布が置いてあります。流石アトラス布を売りにしている商店です。

白い布が沢山あります。やっぱり布は白が基本ですね。

この白さを見てしまうと、漂白していない布は、見窄みすぼらしく見えてしまいます。

種類も沢山あります。綿、麻、亜麻。毛布もありますね。

やっぱり本店です。品揃えと量が凄いです。


布が置いてあるところを過ぎると、革素材が置いてありました。

革製品は、王都支店では見たことがありません。

本店だけなのでしょうか?


革素材を過ぎると、縫製製品が並んでいます。

手に取ってみます。

管理官の表情が少し曇ります。


「だから、服は買いませんから。で、ですね。管理官。ここ見てくださいよ。」


「見ろと言われても……何処どこを見せたいんだ?」


「この部分と、この部分は別な布ですよね。この布を縫うのに、縫うための道具を使ってますよ。普通に縫うと、こちら側の縫い目と向こう側の縫い目で、かわりばんこに縫糸が見えるはずなんですけど、これ、どっちの面も同じじゃないですか?」


「お前、意地が悪いのか?オレの目で縫い目を見ろと言われたって、ムリだぞ。」


あっ。そうでした。管理官は小さなものが見えないので、昨日メガネを買ったのでした。


「管理官、メガネは?」


「一応、持ってるが……。人目があるところではちょっと……。」


「管理官。管理官の事を知っている人は、私以外に居ないんですよ。何を恥しがってるんです?」


「そ、そうだな。」


管理官は、そう言って、手持ちの袋からメガネを取り出して掛けます。

布の両面を見比べています。


「本当だな、これは、普通に縫ってないな。」


その時、入口の方で、声がした気がします。

「店長、物産展の方はどうでした?」

「ええ。今日も随分と人出が多いわね。それで……の人気が高くて……。」


管理官との会話を続けます。


「でしょ。これミシンですよ。ミシン。凄い道具なんです。同期の皆で悩みまくったんです。どうして、その仕組みで布が縫えるのか。

サムなんかは、絶対に有り得無いって言い張ってましたね。」


「そんなに難解な道具なのか?」


「そうですよ。縫い針の先端に穴が空いていて、それで縫える様になるんですけど、他にも複雑な仕組みがあって……アイルさんと、ニケさんは、天才です!」


「あら、ニケ様のこと、あなた御存じなの?」


突然、後ろから声を掛けられました。

昨日も似た状況がありました。


振り向くと、中年の美しい女性が立っています。


えーと。ひょっとして……ミシンの事は秘密なんでしょうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ