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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
150/368

102.エクゴ商店

管理官の希望を受けて、エクゴ商店を訪問しました。


エクゴ商店は、アイルさんとニケさんの考案した道具類を販売しています。

王都にも支店がある、大商店です。

管理官の希望が無くても、一度訪ねてみたいと思っていた商店です。


管理官は何かを期待しているのか、上機嫌です。

エクゴ商店に何が有るのでしょう?

商店を訪ねると、流石大商店です。大通りに面した三つの区画が全てエクゴ商店でした。


店内には、様々な道具が陳列されています。

これは、このまま展示品を販売している様です。

奥の方には、屋台や馬車までありました。

それにしても、沢山の人が居ます。

皆、お客さんなんでしょうか?


店を入ってすぐの所に、鉛筆が陳列されていました。新商品と札が置いてあります。ニケさんの言う通り、エクゴ商店で販売をしていたのですね。


ただ、鉛筆は消耗品です。王都で販売されるのは何時になるんでしょう?

お店に居た売り子の人に、鉛筆が何時王都で販売されるのかを聞いてみました。


「ちょっと、待っててもらえますか?店主を呼んできますから。」


そう言って、奥に入っていきました。

直ぐに、中年の男性と戻ってきました。


その男性は、店主のボロス・エクゴさんと言う方でした。


私達は、王都の文官で、視察のためにアトラス領を訪問していること。ニケさんのところで、鉛筆を何本か頂いたことを伝えました。

そして、王都では何時手に入るようになるのかを聞きます。


再来月には、王都で販売が開始すると教えてもらいました。

再来月ですか……微妙ですね。もらった鉛筆は、どのぐらい保つんでしょう。


鉛筆を12本と念のため消しゴム、鉛筆を削るための小刀を購入しました。それほど高くはありません。

鉛筆の側に、鉛筆ホルダーというものが置いてあります。


これは、何に使う道具でしょうか?


ボロスさんに聞いてみました。

鉛筆は削っていくと短くなっていきます。

手で持つことが出来無くなってしまった短い鉛筆をそのホルダーに差し込んで使うのだそうです。

最初からホルダーに差し込んでおいて使っても良いようになっているそうです。

鉛筆の差し込み口の反対側は、消しゴムが固定できる構造になっています。


これは便利そうです。


これもアイルさんとニケさんの考案だそうです。

便利そうだったので、それも購入しました。


「それじゃ、お二人にはお会いになったんで?」

とボロスさんが私達に聞いてきました。


「ええ。昨日まで色々教えてもらいました。」


「吃驚でしたでしょ?」


この吃驚が何の吃驚か分りません。ありとあらゆる事が吃驚でしたから。


「ええ。そうですね……色々と吃驚しました。」


「そうでしょ。私も最初会ったときに、どうして赤ん坊が話をするのかと思って吃驚、ソロバンや数字を二人が作ったと聞いて吃驚、その二日後には、ソロバンを作る道具を魔法でこしらえていて吃驚、鉄を魔法じゃなくて作ったと聞いて吃驚、ガラスも魔法じゃなくって作ったと聞いて吃驚。この3年間、吃驚させられっぱなしです。

今度は、あの鉄道ですからね。マリム大橋も吃驚で。

多分、このまま何時迄も吃驚させられ続けるんだろうなと思ってるんですよ。」


そう言えば、エクゴ商店は、ソロバンで財を成して、大商店になったと聞いた事があります。

やっぱり、ソロバンはあの二人が2歳の時に作ったのは確かな様です。

赤ん坊がソロバン作ったと知ったら、私も驚いたでしょう。


なにやら、横で管理官がソワソワしています。


「エクゴ商店でメガネを扱っていると聞いたのですが?」


そう言えば、メガネという物がありましたね。

アトラス領では、メガネを掛けている人を見掛けますけど、王都には殆ど居ません。年配の貴族の方が使っているのを見たことがあるだけです。


私の父は男爵ですが、それほど裕福じゃないので、メガネは流石に持っていなかったハズです。


色々見え難くなってきたとボヤいているのを聞いたことがあります。


という事は、管理官も目を患ってたんでしょうか?

そう言えば、そんなお歳でしたね。

時々顰めっ面をして書類を読んでいたのは……その所為だったんですか。


「メガネなら、私の父が扱ってます。ご案内しましょうか?」


「いえ、まず、どのぐらいの金額であつらえられるのか、教えていただけませんか?

王都のエクゴ商店で聞いたときには、躊躇してしまうような金額だったんです。

アトラス領なら、大分安価に手に入れられると聞いたのですが……。」


それから、ボロスさんと、管理官は、メガネの価格について話していた。メガネは、大体6ガリオン(=約12万円)から7ガリオン(=約14万円)ぐらいだそうです。

結構高いんですね。

でも、管理官が躊躇する程じゃないと思います。

管理官はその金額を聞いて喜んでいました。


「やっぱり、アトラス領だと随分と安く手に入れられるんですね。」


「それは……運ぶのにも、管理するのにも費用が掛ります。アトラス領のように、文官の方々のメガネを領地費用でお買い上げになったりしませんから、売れる数にも違いがあります。」


私は、小声で、管理官に王都で幾らと言われたのかを聞きました。

d40ガリオン(=約96万円)でした。それは……また……随分と高いですね……。

マリムの価格の7、8倍もします。


管理官は、生産しているのがアトラス領で、使っているのもアトラス領の住人が殆どだから、これは、これで仕方が無いことだと言っています。


それは、そうかも知れないです。しかし、物価が王都とマリムだと、随分と違っているんですね。

すると、鉛筆を王都で手に入れる場合、かなり高くなりそうです。

もう少し買っておいた方が良いのか……悩ましいです。


管理官は、ボロスさんと、ボロスさんのお父さんが商っているメガネの店舗に移動しました。

管理官の目の状態を調べて、レンズを選ぶので、時間が掛ると言われます。


本人が居ないと、メガネは購入できないんですね。

お父さんのために、メガネを買おうかと思ったけれど、ムリみたいです。


鉛筆は悩ましいけれども、どうやって、目の状態を調べるのかは、今しか分りません。

興味があったので、管理官に付き合う事にしました。


対応してくれたのは、バルノさんという、かなり大柄の人です。ボロスさんのお父様らしいのですが……ボロスさんは、どちらかというと小柄です。

顔は……どことなく似てますけれど、体格が全然違います。


管理官は、レンズが入っていないメガネの様な道具を掛けさせられました。


大きさの違う凹んだ丸が沢山付いている金属の板を渡されています。

良く見ると、丸の途切れているところがあります。

バルノさんが、細い棒で、金属の表面を指します。

上下左右のどこに途切れがあるのかを、管理官に聞いてます。


なるほど。どのぐらい小さな字が見えるのか確認しているんですね。


ボロスさんが、私に、「この道具もアイル様に作ってもらったんです。」と教えてくれます。

「この道具のどこらへんまで見えるかで、だいたいどんなレンズを選べば良いか分るんですよ。」


管理官の目は、やはりロウガンだったのだそうです。ロウガンというのは、聞き覚えのない言葉です。老齢になると、かなりの人が掛る病気だそうです。

症状は、手元の字が読みにくくなったり、目が霞むらしいです。


メガネの様な道具にレンズを嵌めては、別な金属の板でどこまで見えるのかを確認していきます。


「この板は、30種類あるんですよ。同じ板を使うと覚えてしまう人が時々居るんです。そうすると正確に目の具合を判断できなくなるんで。アイル様がそれを防ぐって言ってました。」


なるほど。流石アイルさんですね。


一頻りレンズを交換して管理官の目に合ったものが決まったようです。


メガネのレンズが決まると、今度はフレームを選びます。

メガネのレンズを取り付けるものの事をフレームと言うのだそうです。

これも聞き覚えのない言葉ですね。


この店舗は、メガネを専門に扱っているだけあって、色々な形のフレームがあります。


「フレームによって、お顔の印象がかなり変わります。ご自分で気に入ったものを選んでください。」とバルノさんが管理官に話しています。


それから、管理官は、フレームを選んでは、鏡の前で百面相をしていました。


「ジーナ。これが良いと思うんだけど、どう見える?」


うーん。どうでしょう?


管理官は眉も太くて厳つい容貌なので、太めのフレームの方が似合っていそうです。

管理官が選んだフレームは、細めで繊細な感じです。


厳つい顔付きを隠そうとしているんでしょうか?全然隠せてないです。


それよりは……あっ、これ亀甲のフレームですね。

色合いが、黄色がかっていて、太めのフレームです。


「管理官。こちらの方が似合っていると思いますよ。」


フレームの色の所為で、少しだけ柔和な感じに見えます。


「そうかな……。うーん。まあ、悪く無いかな……。」


それから管理官は、別なフレームと見比べて、結局その亀甲のフレームを選びました。


「若いジーナに似合っていると言われたからな。これで、若い女の子からの印象も良くなるんじゃないかな。」


な、なんて事を言っているんでしょう。


「管理官。それ、皆の前で、言うの止めてくださいよ。

特に奥様の前でそれを言うと、不幸な将来しか思い浮かびませんからね。」


「そ、そうか?確かに……マズいな……それは……。」


フレーム選びが終ったところで、バルノさんに、これからの予定を聞かれました。レンズの加工をするのに時間が掛るそうです。


一応、このまま、他の商店や工房を訪ねるつもりだと伝えると、


「夕刻には仕上がってますから、夕刻にまたおいで下さい。ところでお支払いの方はどうされますか?」


金額は6と1/2ガリオン(=約13万円)でした。流石に管理官もその金額の手持ちは無かったようです。手形を発行したいと伝えていました。


「手形でしたら、一度商業ギルドで、確認を取っていただけますか。領地の人以外の方の手形は、商業ギルドが確認することになっています。

王都の文官の方なら何も問題はありません。ただの確認です。

ただ、そういう規則になってますので、申し訳ありませんがお願いいたします。」


王都であれば、手形は木簡なのですが、流石アトラス領です、手形も紙でした。

ボロスさんに、メガネの金額が記載された手形用紙を渡されて、管理官がサインをします。

これを商業ギルドで確認してもらう事になります。


王都の文官の方ですから手形の引渡しは商品と交換で良いと言われました。

通例なら、手形を商業ギルドで確認した後に、手形が持ち込まれてから加工するのだそうです。


手形は、夕刻にメガネを受け取りに戻った時に渡せば良い様です。


私達は商業ギルドの場所を聞いて店を出ました。

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