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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
134/369

NN.使者

ソドおじさんが、領都マリムに帰還した。

ノルドル王国を打ち倒しての帰還だ。


アトラス領の騎士達に死傷者は居なかったそうだ。


この事は良かったけど、敵の騎士は沢山死傷したんだろう。

戦争なんかしなければ良いのに。

ニケの提案で、空気銃を作ったから、死者は最低限に抑えられたと信じるしかないな。


きんが欲しくて、大軍を動かして、戦争になって、国が破れてしまうって、バカ気ていると思うんだけどな。


なにはともあれ、戦争は終ったみたいだ。やれやれだな。


脅威になっていた国そのものが無くなってしまったので、国境の騎士達も撤収している。

王都に居るアトラス領の騎士さんたちは、残務仕事が片付き次第、帰ってくるようだ。

父さんが、皆が戻ったら、祝勝会をすると言っている。


砦に収容していた500人ほどの敵の捕虜は、全員、輸送船で王都に移送した。


今、北方のノアール川周辺には、砂金を取りに来る、旧ノルドル王国の住人を追い払うための騎士が残っているだけだ。


舅にあたる宰相閣下がしきりに父さんのところに、無線であれこれ言ってくるらしい。

父さんは、そろそろ、無線機は、撤収したいと言っていたけど、無理じゃないかな。王都にはそのまま置いたままになると思う。

ご愁傷様としか言いようがない。


騎士の大半が帰還したので、そろそろ祝勝会をしようかと相談していた矢先。

王都から、国王陛下の使者がやってくると無線連絡があった。


使者の人を迎える為に、小型船が、マリムから王都に向った。


もうすぐ、マリムに着くと無線で連絡があった。この船は、途中、旧オルシ伯爵領のオルシに寄っている。

理由は分らないけれど、旧オルシ伯爵領と旧リシオ男爵領を管理していた代官の人達も同行してきた。


グルムおじさんが、使者の一行を馬車で港まで迎えに行った。

馬車は3台だった。


領主館の大広間で、アトラス家、グラナラ家、セメル家勢揃いで、お出迎えだ。


これからの口上は、国王陛下のお言葉ということで、皆、片膝を突いて傅いたまま聞く。


「国王陛下からのお言葉である。


一、アトラス家を侯爵家とする。


二、グラナラ家を子爵家とする。


アトラス家には、現在のアトラス家の領地に加え、旧ノルドル王国およびガラリア王国のアトラス山脈西部の土地を貸与する。


グラナラ家には、旧オルシ伯爵領を貸与する。


これらの内容は、使者が口上を述べた時点で発効される。


なお、陞爵の祝典は、組み換え領地が多いことから、来年1月20日に執り行う。両家は必ず参加するように。


特に、アトラス家のアイル殿、グラナラ家のニケ殿の参加も要請する。


以上です。」


口上が終ったときには、誰からも声が出ない。


父さんとソドおじさん、グルムおじさんは、口を開け、目がこれでもかという程に開いていた。

父さんは、母さんに、肘で突かれ、ソドおじさんも、ユリアおばさんに、肘で突かれて、それぞれ我に返ったみたいだ。


「有り難く、拝命いたします。」


「有りぎゃたく、はいみょういたしましゅ。」

ソドおじさんは盛大に噛んだ。


それを聞いて、使者の人達は苦笑いをしていた。

参列していた人たちも、皆、笑いを堪えて肩が震えていた。

ソドおじさんの顔は真っ赤になっている。


その所為で、皆、落ち着いたみたいだ。


それから、使者の人たちは、陞爵の理由を説明をしてくれた。


通例なら、二階級の陞爵をするという事などは無い。


ただ、今回は隣国のノルドル王国を、アトラス領軍と王国軍だけで、征服してしまった。

さらに、アトラス領で鉄 、ガラス、紙を生産するようになった事や、戦争の時に利用した装甲車や空気銃も評価されての事だ。

前代未聞の大成果を上げていながら、子爵を伯爵にしただけでは、全然足りないというのが理由の様だ。


グラナラ家が領地貴族になったのは、ニケとセドが魔法使いとして生まれたことが大きい。

そして、グラナラ家が子爵になったのは、ソドおじさんが、討伐軍を指揮していたこと、敵の近衛騎士団長を討伐したことや、鉄やガラスや紙の製造にニケが深く関わっていることがあるらしい。

こちらも、この成果で、男爵という訳にはいかなかったのだ。


ニケやセドが成人になるまでは、アトラス家とグラナラ家で旧オルシ伯爵領は共同管理という事にして良いらしい。

その後も両家で、どのように領地管理するのか決めて良いと言っていた。


しかし、何故、国王陛下が、そこまで詳しくアトラス領の内状を知っているのかについては謎だ。

無線で、あれこれ話してるんだろうか?


グスッグスッという音が聞こえたのでそちらを見ると、グルムおじさんが泣いていた。


「……これで……アトラス家は……名実共に……ガラリア王国東部の盟主に……」


グルムおじさんは、泣いてしまうほど嬉しかったみたいだ。


早々に、使者の人達は、宿泊に準備していた部屋に移動した。

この後、使者の人達は、夕食までの時間、マリムの街へ繰り出すみたいだ。

ここに来るまでに、マリムの噂を色々と聞いていたらしい。

楽しみにしていたと言っていた。

他の場所で、どんな噂が立っているのか興味があったので、夕食の時にでも聞いてみようかな。


旧オルシ伯爵領と旧リシオ男爵領の代官の人達が同行してきたのは、引き継ぎの為だった。

ただ、直ぐに引き渡すので管理しろという訳ではない。

来年には、この代官を務めていた人達は王都に戻る。そのため、それまでには引き継ぎ作業をしなければならない。


午後の大半の時間は、現在の旧オルシ伯爵領の状況や、旧リシオ男爵領の状況を聞くことに費された。


この二つの領地は、オレとニケの誘拐を計画した領主のところだ。

その貴族家が取り潰されて、国王直轄地になっていた。


父さん達が聞いておけば良いんだろうと思っていたら、オレもニケも付き合わさせれられた。


跡継ぎなのだから居ろと言われたけれど、年齢的に変だろ。

代官の人達も、オレやニケを見て、同席させる必要が無いと言っていたみたいなんだけど……。


父さんやソドおじさん、グルムおじさん、母さん、ユリアおばさん、ナタリアおばさん、沢山の文官さん達と、二つの領地の現状を聞いた。


話を聞いてみると、内容があまりに深刻だった。


特に、旧リシオ男爵の領地は、壊滅的だった。農地では、離農した人が多過ぎて、収穫はほとんど望めない。

唯一の街であるリシオは、住人が居なくなっていて、ゴーストタウン状態だ。

もともと、マリムと西の領地を継ぐ街道があるぐらいしか特徴が無い場所だった。

そして、今は、その街道も唯一の街道という訳では無くなっている。

これは、どうやらオレが、コンビナートの場所に橋を通したことが影響している。

マリムからの荷物には、ガラスや陶器など高価で壊れやすいものが多い。

南のオルシ領を通る道の方が整備されているため、商人たちは、その経路を選択する。

ここまで廃れてしまった領地を通る商人は居ない。盗賊に襲われるかもしれないからだ。

完全に、廃領地状態だ。


そういう意味では、旧オルシ伯爵の領地はまだマシかもしれない。

こちらの領地は海に面している。

領地の半数近い農民が離農していて、領都オルシの商店の大半は閉店しているのは、リシオ領と同様だ。

今となっては、唯一の産業と言えそうな漁業は盛んなため、辛うじて街の体裁は保っている。

ただ、オルシの街は、マリムから王都へ向う海路の中継点になり得る場所だ。

最近では、廃業した商店店舗の空いた場所を倉庫代わりにして、マリムから積み出された荷物の一時保管場所として使っている商店もあるらしい。


代官の人たちが赴任した段階で、相当に酷い状況になっていたそうだ。

どうやら、オレ達を誘拐しようとした頃には、没落の一途を辿っていたんだろう。


代官の人達が赴任してから、税の減免を実施しても、一度、住人が見捨ててしまった土地に、移住して来る者は居なかった。

この領地に住むぐらいだったら、隣のアトラス領に住みたいというのが普通の感覚らしい。


そう言えば、3年ほど前、父さんがアトラス領の領民がなかなか増えてくれないと言って嘆いていたな。


この陞爵によって、文官の人達は、さらに忙しくなるんだろう。

大丈夫なんだろうか?唯でさえ人手が足りていないのに、大変だね。


その日の内に、アトラス家が侯爵に、グラナラ家が子爵に陞爵したことが領内に告示された。

そして、アトラス領軍が、ノルドル王国を討ち滅ぼした祝勝会を合わせて実施することも。


その日の夜は、王都から来訪した使者の人たちや代官さん達の歓迎の食事会を催した。

ニケプロデュースで、これまで出されていた食事で好評だったメニューをお客さん達に振る舞った。

領都館で出された食事は絶品だと大好評。カトラリーを使っての食事は初めてだと言っていた。

熱々のステーキやスープスパゲッティは手掴みでは食べられないよ。

街を廻った人たちは、食器を売っている店先でカトラリーは見掛けたけれど、何に使う道具なのか判らなかったらしい。

ぜひ、お土産に買って帰りたいと言っていた。


街に繰り出した人たちは、とても綺麗な町並みや、乗合馬車が往来を行き来するのを見て感動したと言っていた。


そして、マリム神殿を訪問したり、海浜公園の屋台で昼食を摂ったり、珍しいガラスや陶器を見て廻ったり、カラフルな染物の布を見たり、大浴場で湯に浸かって、大浴場にあるウォーターシュートを楽しんだりして、マリムの街を満喫したそうだ。


どうやら、マリム神殿は、他所ではマリム大聖堂と呼ばれているらしい。

同席していた司教さんは、「マリム大聖堂」という呼称に照れていたけど、満更でも無さそうだった。


宴の最後に、使者の人達から、王都の文官達がアトラス領の訪問を希望していると伝えられた。

王都の文官達が、アトラス領の産物について知りたがっていると言っていた。

後日、対応の可否を伝えることになった。


その翌日から3日間、陞爵・戦勝記念催しを行なうことになった。

飲食店や小売商売をしている商店を除いた商店と工房はそれに合わせて休日にしたところが多かった。


一気に、領都は御祭状況になった。


特別に領主館を開放して、以前実施した様に、クリスタルパレスの周辺での飲食の提供を行なった。


3日目に、戦争に参加した騎士さん達や、アトラス家とグラナラ家の面々でパレードを行なった。

オレ達は、天蓋を外した馬車に乗って、パレードに参加した。領主館を出発して街の大通りを巡った。


ニケは、街の人達の人気者だった。「ニケちゃーん」という声があちこちから聞こえてくる。

ニケは馬車の上で、フランやセドと一緒になって踊っている。

ニコニコしながら手を振っていた。


ニケも、子爵令嬢になったんだけど、これで良いんだろうか?

変更された、ガラリア王国とアトラス領の地図を「惑星ガイアのものがたり【資料】」のep7に載せました。

URL : https://ncode.syosetu.com/n0759jn/7/

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