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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
120/368

98.フランとセド

今日は、息子のセドを連れて、領主館に行く。

セドは、特に病にかかることもなく、無事に1年を過ごした。


今日は、領主館に行って、セドのお広めをする。


セドの右手を私が、左手を夫のソドが、手を継いで、我が家から領主館に向って歩く。

セドは部屋から出て、始めて外を歩くのが嬉しそうだ。ニコニコしながら、片言の言葉を話す。


「これかりゃ、フリャンちゃんと、あゆの?」


「おきゃし、ありゅきゃな?」


「ニケおねちゃん、いりゅきゃな?」


セドは、これでも、この歳では、随分と利発らしい。

生まれて1年経たない頃に、片言ながら、話が出来るようになった。


姉のニケと比べるのは、可愛そうなのだが、どうしても比べてしまう。


でも、比べる事自体、無理があるのだ……。

あのは、完全に規格外だったわね。


セドはニケと比べると、とっても手が掛る。

2ヶ月程前から、歩き始めたセドは、目を離すと何をしでかすか分からない。


気を抜くと、どこかに居なくなってしまう。

目を離すと、何かを口に入れている。


年配の侍女に聞くと、赤ちゃんは、こういうものだ、それも一時の事だ、あとで思えば幸せな時だったと思うはずだ、とさとされるのだが……。


一人目に手が掛らなかった分、今は大変だ。


そう言えば、あの娘と、この時分に、恋バナで盛り上がっていた。

あの時は、不思議とは思わなかったけれども、こんな幼い子と恋バナで盛り上るのは、随分と変だったわね。


セドのゆっくりとした歩調に合わせて、随分と時間を掛けて、領主館に着いた。

領主館の侍女の案内で、フランちゃんの部屋に案内される。


フランちゃんの部屋に、セドを連れて行くと、既に、アイルくんとニケが居た。カイロスさんの姿もある。


「あっ、ニケおねちゃんだ。」


セドが嬉しそうに叫ぶ。


「セド。まずは挨拶をしないとなりませんよ。」


そう、たしなめると、セドは、たどたどしく、挨拶をする。


「はじめましゅて。セド・グラナダでしゅ。」


このところ、セドには、挨拶の仕方を教えていた。まだ舌足らすだけれでも上手に挨拶ができた。


「セド。良く出来たわね。えらいわ。」


褒めてあげると、私を見上げてニッコリ笑って、嬉しそうにしている。


侍女さん達に案内されて、セドは、ニケとフランちゃんの間の席に着く。フランちゃんの反対の隣は、アイルくんが席に着いている。


テーブルの空いている席に私も座らせてもらう。ソドは、アウドのところへ行った。


ニケの時に、ソドと私は二人共、アウドとフローラのところへ行っていたときに事件が起った。

ニケが大魔法を使ったのだ。

その後は、アイルくんの魔法で、部屋から水流で、外に流されてしまったわね。


今回は、私が監視することになった。


セドは、ニケと違って、この歳で魔法が使えることは無いだろう。


そもそも、私の家系は、魔法使いとはほとんど無縁の家系だ。

過去から今に至るまで、私の家系で魔法を使えたのは、サンドル家から分家したアトラス家だけだ。

ガラリア王国に移住して後、サンドル家とグラナラ家で魔法使いはニケ以外には現われなかった。


なんだか甘い香りが鼻をくすぐる。

テーブルの上を見ると、フワフワした見た目のお菓子が置いてある。


「じゃあ、セドくんが来たから、お菓子を食べましょう。」


ニケが、フランちゃんと、セドにお菓子を勧める。


私も一口、食べてみたいわね。

きっと、ニケが、二人のために準備したんでしょうけど……。


「あっ。お母さんもどうぞ。二人はまだ小さいので、柔らかなお菓子にしたんですよ。

ぜひ。食べてみてください。まだまだ、沢山ありますから。」


5人で座って、白いフワフワしたお菓子を一緒に食べる。


口に入れたとたん、甘い香りが口から鼻に抜けていく。噛むと確かに柔らかい。口の中で溶けていくみたいだ。

噛み締めていると、だんだん溶けて無くなっていく。

後には、甘い味が口の中に広がっている。


始めて食べたお菓子だけど、美味しいわね。


「お母さん。どうでした。甘いでしょ。これは『マシュマロ』というお菓子なんですよ。」


「ニケねちゃん。あまくて、おいしゅい。」

「おいしーいぃ。」


幼い二人も、お菓子を気に入ったみたいだ。


ニコニコしながら、一緒に食べている。四人が並んで座っていると、本当に可愛らしい。


アイルくんも、ニケもまだまだ可愛い盛りだ。


お菓子に十分満足したのか、二人ともキャーキャー言いながら、互いに抱き付いたり離れたりして遊んでいる。


「じゃあ。お姉ちゃんが、面白いもの見せてあげるね。」


そう言って、ニケは、椅子を降りて、テーブルの前に立った。


足で、リズムを取りながら、腰やお尻を振り振り踊り出した。


『♪マージック、

♪マージック、

♪イッツ、ア、マージック、

♪イッツ、ア、マージック、

♪イッツ、ア、ショータイム、

♪ハイ、♪アイ、♪アイ、♪アーイ、♪アーイ、

♪イッツ、ア、ショータイム』


とっても軽快な節で歌いながら踊りだした。

何を歌っているのか全然分らないけど、とても楽しい曲だ。


よく見ると、踊っているだけじゃなくて、魔法で出した、拳大の水球で、お手玉をしている。

たくさんの水球が、あちらこちらに移動しては、手元に戻ってくる。


なんて、器用なことを。


このは、魔法がただ使えるだけじゃなくて、魔法の制御も、魔法の内容も、大陸随一だと噂されている。

先日も、アイルくんと二人で、二人を攫おうとした盗賊の頭領を身動きできないようにして、掴まえるのに協力したと聞いた。


踊っているニケを見て、フランちゃんと、セドもじっとしていられなくなったのか、ニケにくっ付いて、一緒に踊り出した。


そして、三人でぐるぐる回り出す。

なんか、とっても楽しそうだ。

節に合わせて、キャーキャー言っている。


踊っている内に、フランちゃんの手元に水球が浮んで、ニケを真似て、動かしていた。


やっぱりアトラス家の子供は、魔法が使えるのね。


でも……こんなに小さい時に、魔法って使えたのかしら?

ニケやアイルくんは基準にならないのよね……。


「えっ。あれは……。」


なんということなの。ソドの手元にも水球が浮んでいた。


ニケも踊りながら、吃驚している。


「えっ。えっ。えぇー!」


思わず叫んでしまった。


その声に応答したのか、いっしょに連れて来た侍女が知らせたのか、ソドとアウド、フローラが部屋にやってきた。


ニケの歌に合わせて、二人は、キャーキャー言いながら歌い踊り続けてる。


「なんだ。どうしたんだ?」


「ソド。セドの手元。見て。」


「えっ。あれは?」


やってきた、三人ともに驚いている。


「どういう事なんだ……。」アウドが呟いた。フローラは、声が無い。


三人が訪れたのに気付いたニケが、歌うのを止めた。

三人の水球は、一瞬で消えた。


「あ、トウしゃんとカアしゃん」

「おトウしゃん。」


二人は、やってきた、アウド、フローラ、ソドの元に駆け寄って飛び跳ねている。


困惑しているのは、大人達だけだ。


「ニケ。何が有ったのか、説明してくれないか?」

とアウドが聞く。


「えっ。フランちゃんとセドくんの為に、踊ってただけですよ。」


「いや、踊ってただけじゃなかろう。」


「うーん。踊ってただけですけど……。

あっ。魔法で水球を出したら、二人が気に入るかもしれないと思って、水球を出した……かな?」


「本当に、それだけなのか?」


「ねえ、お母さん。それだけですよね?」

ニケが当惑顔で、私に聞いてきた。


「そうね。最初は、ニケが水球を出しながら、二人に踊ってみせていただけね。

そうしたら、喜んだ二人が、ニケに付いて踊り出して、

フランちゃんが、ニケの真似をして、水球を出しながら踊って、

そのうち、セドも水球を出すようになって……。

でも、これって、変よね。」


「えっ。変なんですか?どこらへんが?」


それから、アウドは、ニケに説明を始めた。


幼ない子供が魔法を使える事は無いこと。

アイルくんとニケは、完全に例外中の例外だということ。


「でも、二人とも、自分だけで、魔法を使ってましたよ。」


「だから、変だと言っているんだ。」


「えーっ。だって、使えてるじゃないですか。

フランちゃん。セドくん。また、お水を出してみてもらえるかな?」


そうニケが言って、水球を出す。フランちゃんと、セドは、ニケを真似て、顔の前に小さな水球を出してみせた。


「……。」


今回は、アウドも言葉が出ないみたいだ。

そうね。こんな幼ない子供が魔法を使うのは、アイルくんとニケ以外では見たことは無いかもしれない。


「ふふふ。二人とも上手よ。偉いわね。フランちゃんと、セドくん、やっぱり、天才!」


ニケは、二人の頭を撫でている。


二人は、嬉しそうにニコニコしている。


ニケ達が絡んで……普通は……無いのね。


「うぉおお!」


突然、ソドが叫んだ。驚いてソドの顔を見ると、笑っているのか、困っているのか判らない表情をしている。


あの表情。私が、プロポーズを受けたときに見たわね。喜んでいるんだわ。


周りを見ると、みな吃驚して、ソドの方を見ている。


「オレの娘と息子は、二人とも魔法使いだ!」


あらあら、セドは、吃驚したのね。泣き出しそうな顔をしている。

セドを抱き上げる。

セドは泣かなかったけれど、困惑顔だ。

ソドが、セドを抱いている私達に抱き付いてきた。


ソドは……泣いてるわね。泣き笑いかしら。


でも、これで、ウチの家系に、再び魔法使いが生まれた。

二人続けてというのは、全く予想してなかったわ。


ニケが魔法を使えると、王都に居る両親に伝えたとき、それは、それは、とても喜んでいた。


セドの事も伝えないと。


お義母さん達も、きっと喜ぶわね。

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