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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
119/368

97.砦

アウドおじさんが領都に戻ってきた。

予定より大分早い。頑張ったんだろうな。


ミネアの発電所も動き始めたと、ミネアの代官をしているグロスさんからの連絡も有った。

もう、何度も、石炭運搬船は行き来していて、ミネアの人口もd3,000人(=5,184人)を越えた。


コークスの生産も順調で、大量のコークスが確保できつつある。


アウドおじさんも帰ってきたし、海浜公園も、セアンさん監修で、良い感じになってきている。

ようやく大浴場の開業だな。

領都民の憩いの場所になれば良いな。


お披露目の式典を海浜公園で実施した。

颱風の被害に会った人達は皆招待された。

二度と嵐で、住民の生活に被害が出ないようにするため、住宅地は、公園と大浴場に変えたこと。

公園と大浴場は、増え続ける子供たちの為に作ったこと。

そんな挨拶とともに、大浴場は開業した。


海浜公園も、一部工事中のところが有るけれど、領都の人たちに開放された。

早速、屋台が公園のあちこちで営業していた。


そんなノホホン状況とは別に、ノアール川の近くに、港を作る事が決まった。

大量のコークスとアイルが作っていた装置類、リリスさんのところで作っていた防寒装備、ゴムの靴、大量の食料などを積んで、石炭運搬船が北に向う。


私の同行については、お父さんの強硬な反対があった。

よしよし。頑張れお父さん。


ところが、アウドおじさんとアイルが同行させると言って、お父さんと言い合いになった。

素材不足のために、私が必要になる可能性があることと、その場合には石炭運搬船が再度往復しなければならなくなること。

何度も往復して、敵対しているノルドル王国に気取られる可能性を、成る可く低くしておいた方が良いことなどが主な理由だった。


結局、お父さんは、2対1で敗れてしまったよ。とほほ。


国境近くの場所までは、2昼夜掛った。

海図の整備は随分と進んだため、それほど沖合を航行しなかった。

船から、陸地の様子が良く見えて、なかなか楽しい。


北に行くに従って、入り組んだ地形が多くなってきた。

日本の陸中海岸か、北欧のフィヨルドみたいな地形だ。

フィヨルドだとすると、この惑星にも、氷河時代みたいな時期が有ったんだろうか?


『ねぇ。アイル。この地形って、北欧のフィヨルドみたいなものなんだろうか?どう思う?』


『今、領地の測量の結果が集り始めているんだけど、少し北に行くと、かなり深い入江になっている場所が多いんだよ。

この惑星ガイアでも、氷河時代が有ったのかもしれないね。

石炭が有ることも含めて、地球と似ているところが結構あるんだよな。』


『じゃあ、ここは、地球の未来ってこともあるのかな?』


『いや、近くに、スーパーノバの跡が有ったり、地球から見える星が全く無かったり、惑星の構成が違うからその可能性は無いんじゃないかな。

何千億年も先の世界だって言うんだったら、可能性が無い訳じゃないだろうけど、あっ、そうなると、太陽も燃え尽きてるか。

あとは、平行宇宙っていうんだったら可能性が有るけど、そうなると、判る事は何も無くなっちゃうんだよね。

魔法もあるし、不思議な世界だよな。』


日中は、沢山乗り込んでいる騎士さん達やアウドおじさん、お父さん、アイル、カイロスさんと話しをして過した。


沢山乗り込んでいる騎士さん達は、今、砦を守っている騎士さんたちとの交代要員と言っていた。

アイルが作った道具類の使い方を学んでいて、それを砦に持ち込むのも任務なんだそうだ。


二日間、海上を移動して、どうやら目的地に着いたようだ。

例によって、沖合に停泊した。

陸地の北の方に、小高い丘があった。その丘の向こう側に、国境になっているノアール川が流れているんだそうだ。


この場所に港を作っても、ノアール川の対岸に居るノルドル王国の人達からは見えない。


気温は、大分低い。まだ夏が終っていないのに、肌寒い感じだ。


現地に来てみて、コークスを作るのを急いでいたのも分る。これから季節が進んで冬に向うとかなり寒くなるんだろう。


併走していた小型の船に乗り込んで、上陸する。騎士さんたちは、石炭運搬船で待機だ。

その場所には、沢山の騎士さんたちが待っていた。

無線で連絡をしたので、駐留していた騎士さん達が迎えに来ていた。


大急ぎで、埠頭を作って、浚渫しゅんせつをして、防波堤を設置した。

小型船が誘導して石炭運搬船が埠頭に接岸した。

小型船は、このまま、ここに停泊させておくらしい。


石炭運搬船が接岸したら、移動してきた騎士さん達と、待っていた騎士さん達が協力して、荷下ろしをしていた。

これから、丘の西側を回って、ノアール川沿いの砦に物資を届ける。

沢山の荷駄と一緒に近場の砦に移動した。


着いた砦は、ノアール川の一番下流にある砦だった。

砦は、私が思っていたより大きかった。

大体、100人の騎士さんたちが生活している。

3階建てで石を組み上げた建物で、建物の周囲をやはり石組みの塀で囲んである。

最上階の屋上は物見の場所になっていて、対岸の様子を見ることができた。

沢山の人たちが、河原で砂金を採っている。


砦に着いたところで、早速アイルは、一緒に移動してきた騎士さんたちを指揮して、小型発電装置を砦に取り付けていった。この砦には、9器設置した。

小型発電装置の温水配管を砦内の各部屋に配置していった。

保温材料が欲しいと言われた。

耐熱レンガを作る要領で、コークスの炭とそこらへんの岩から抽出したアルミナを混ぜて固めたブロックを作った。作った後で、炭素を除くことで多孔質レンガにした。


現場合わせが必要なところでは、素材を作る事も発生するんだね。


最近、付き合わされた中では、仕事が有るだけマシだな。


屋上の物見には、サーチライトを2台設置した。

この照明と望遠鏡があれば、夜間でも、対岸の動きを監視することができるだろう。


駐留していた騎士さん達に、最初にこの場所に来たときの話を聞いた。


とんでも無く寒かったと言っていた。それが、今年の3月ぐらいの事だった。


地面には、一面に氷を砕いた様なものが有ったと言っていた。


ん。砕いた氷って何だ?

時々それが、空から降ってきたとも言っていた。


あっ。雪か。


大陸の南の方に住んでいるので、雪は見たことが無いんだね。


それを聞いたアイルは、突然、柱を建てて、巨大な物を作り始めた。


『アイル。何を作ってるの?』


『野球場にあったじゃない。照明が。そんな感じのものを作ってるんだ。』


見ると、LEDと蛍光体で作った、顕微鏡に使っている強力ランプを多数、放物面鏡の前に配置している。その放物面鏡を多数、梁に固定していった。


『あれ、この構造だと紫外線が直接外に出ちゃうんじゃない?』


『それを狙っている。』


『えっ。そんなもの点けたら、目を痛めるよ。』


『これは、敵への目眩しの照明だから、良いんだ。こっちの騎士さん達には、偏光付きの紫外線吸収ゴーグルを着けてもらうよ。』


また、エグいものを……。


多分冬季には、この場所は、雪が積もってあたり一面雪景色なんだろう。しかも極夜で暗い。

突然、こんな明るいもので照らされたら、目が慣れるまで何も見えなくなる。

その上、紫外線を大量に浴びたら、直ぐに症状は出なくても、二日目、三日目となれば、目も開けていられなくなるかもしれない……。


今回は、強力な紫外線を直接浴せる。

失明する人が出るかもしれない。


そして、この世界の人たちは、目の色が薄い。


前世でも目の色が薄い人は、眩しさを強く感じるという話だった。


地球の西洋人に、サングラスを掛けている人が多かったのは、スタイリッシュというだけではなく、本当に必要なものなのだそうだ。


雪の表面は、紫外線も含めて光を良く反射する。


それが目に入るか入らないかで、戦い易さが大きく変わる。大量の反射光は、戦う時にはジャマにしかならないだろう。


反射光は、特定の偏光を持っている。

ウチの騎士さんたちが、偏光カットした紫外線吸収ゴーグルを着ければ、相手よりも遥かに良く見える筈だ。


まあ、殺傷兵器という訳ではないが、相手の騎士さん達に同情してしまいそうになる……。


アイルが、大量にその照明装置を作ったので、材料が足らなくなった。

放物面鏡は、アルミ。LEDはダイヤモンド。ドープエレメントは、ホウ素とリン。蛍光材料用の量子ドット素材の酸化亜鉛などだ。

LEDのミラー側には、量子ドット蛍光材料を使って可視光を発生させていて、開口方向は、紫外線がそのまま出るようにしてある。


まっ。越境して侵略しようとする方が悪いよね。


前世の野球場にあったような照明装置を10本ぐらい建てた。

これだけで、この砦周辺は、ヘリオが出ている時の何倍も明るくなるだろう。


この砦での作業が終了した後、少し上流にある砦に移動して、同じ作業をした。

そこは、さらに大きな砦で、250人ぐらいの騎士さんが居た。


倍の機材で暖房機器、サーチライト、照明装置を設置した。


最後に、一番上流にある砦だ。

そこはこじんまりとしていた。50名ほどの騎士さんが詰めていた。

ここの砦の役割は、相手を見張るというより、木々や谷に隠れて越境してくる間者を見付けることだ。

大体の小競り合いは、この砦周辺で発生していた。


お父さんの指導で、この砦の騎士さん達は、青銅の剣を使っていた。

実際に戦闘が発生するまで、こちらの手の内を見せないためだ。

そして、間者を見付けると、川の向こう側へ追い返していた。


野球場の照明の他、サーチライトを何台も設置した。


一通り、機材の設置が終ったので、石炭運搬船が停泊している埠頭に戻った。

石炭運搬船の積荷は、全部降ろされていたけれど、砦への運搬は継続していた。

積荷が、埠頭周辺に山になっている。


大半は、この冬を越えるための燃料のコークスだ。

雨を避けるために、埠頭の側に倉庫を作った。一旦、コークスは倉庫に格納されて、それから必要な砦に運搬されることになる。


これらの、保管、運搬は、この地に残る騎士さんの手で続けられる。


私達は、今回、帰還する騎士さん達といっしょに、マリムに戻った。

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