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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
111/368

8W.睨み合い

執務室で、ソドから、今の国境地帯の状況報告を聞いている。

北の国境地帯からは、毎日、無線機という道具で報告が上ってくる。


アイルは凄いものを作ってくれたものだ。


これからの戦争は、大きく戦い方を変えていくのだろう。


「すると、毎日の様に、ノルドル王国の者が、川を渡って、越境してくるのか。」


「どうやら、斥候だろうと思っている。

こちらの兵力や、砦の様子、周辺の土地などを調べている様だ。」


「とりあえず、衝突には至っていないのだな。」


「騎士達には、追い返すだけにしておくように伝えてるからな。

ただ、先方も、こちらに攻め込んでくる様子は無い。

川の対岸は、騎士と思われる者は、ほとんど居ないと聞いている。

隠れている可能性はあるのだが、そこまでは判らない様だ。」


「一体、先方は何を狙っているんだ?」


「そのうち機を見て、攻め込んでくるのだろうと思う。」


「その機というのは?」


「アイルに、あの地の事を聞いたんだが……。

冬は、かなり寒くなるらしい。

その上、一日中、日が射さなくなると言っていた。

多分、その頃合いを狙って越境しようと準備しているんじゃないかと思う。

ちなみに、今は、一日中、日が沈まないらしい。

これは、無線で部下が言っていた。」


一日中、日が射さないとは、また、とんでも無い場所だな。

そして、今は一日中日が沈まないとは……。


これは、アイルが言っていたこの大地が丸いという事と関係があるのか?


「随分と不思議そうな顔をしているな。

オレも、アイルに説明を聞いただけだが、例の、この大地が丸いという事に依るらしい。

今は、『地軸』ってのが、ヘリオの方を向いていて、北の方は、夜が無いって言っていたな。

そして、冬になると、その『地軸』ってのが、ヘリオの反対を向くために、日が出ないんだそうだ。」


「そうなのか。アイルが言っていた事は、間違いじゃないってことか。

と言うより、アイルやニケが間違った事を言ったことは無いな。

信じ難いが、やはり大地は丸いんだな。

それで、どうするんだ。」


「アイルが、『ストーブ』というものを作ったんだが、知っているか?」


「ああ、それは聞いている。石炭かニケが作ったコークスを燃料にして、発電する道具だろう。

それがどうかしたのか?」


「『ストーブ』って何だと聞いたら、寒い場所で部屋の温度を上げるために使う道具だと言っていた。」


「なに?あれは、そういう意図で作っていたのか?」


「冬に国境地帯に居る騎士や文官がこごえないように作ったと言っていたな。」


「なるほど。それなら、冬に、国境地帯に騎士たちを配備していても何とかなるのか?」


「ああ。但し砦から出なければな。

そのストーブを使えば砦の中でこごえることは無いんだが、外はとんでもなく寒いらしい。

オレもアウドも、そんな寒いところの経験は無いじゃないか。

アイルに言わせると、前世の世界で、そういったところにも人が住んでいたらしい。

ただ、かなり特殊な服を着ていたんだとか。

そういった準備無しで、外に出ると、こごえて死んでしまうと言っていたな。

それに、日が射さない処で戦闘になるのは、マズい。

ノルドル王国の連中は慣れているかもしれないが、オレ達は、どうなるか……。」


「なんか、先刻から、アイルの話の受け売りになってないか?」


「そんな事を言っても、経験が無いんだから仕方が無かろう。」


「アイルを呼んだ方が良いかもしれないな。」


「そうだな、何かアイデアが有るだろう。」


「バルトロ。居るか?」


「はい。こちらに居ります。」


「アイルを呼んできてくれないか。」


「はい。畏まりました。ニケ様は、どういたしますか?」


「いや、ニケは良い。」とソドが言った。


「ニケは良いのか?」


「ああ。この話は戦の話だ。ニケにはあまり聞かせたくない。」


「最近、疑問に感じなくもないが、それでも、ニケは中身は大人の女性らしいぞ。」


「いや。いくさは、男がするものだ。」


「ふーむ。ただ、ニケが居た世界では、女性も戦ってたりするんじゃないか?」


「いや。ニケは良い。」


強情なヤツだな。まあ、分らなくもない。あんなに可愛いニケには知らせたくないのも。


しばらくして、アイルがやってきた。


「父さん。何か用ですか?

あっ、ソドおじさんも居たんですね。

すると、国境あたりの情勢の話ですか?」


相変わらず、察しが良いな。

それから、ソドがこれまでの会話を掻い摘んで説明した。


「すると、冬季に越境してくる可能性があるんですね。」


「その対応をしないとならないだろうと思っている。」


「ところで、ニケは、呼ばないのですか。」


「いや。ニケは良い。」また、ソドが言う。


アイルが苦笑いをしている。

やはり、ソドは過保護なのだ。


「神の国では、女性も戦うのか?」


アイルは、意外そうな表情に変わる。


「いえ。兵士は男性の方が圧倒的に多いですね。女性が居ない訳じゃないですけど。」


ん。では何故、苦笑いをしていたのだ。


「アイル。何か、隠していないか?」


「あれ?バレてます?

別な意味で、ニケは呼ばない方が良いかもしれないですね。

詳しくは言いませんが、ニケの知識を使って戦争をすると、大変なことになりますから。特に、相手が。」


「なに。どういう事だ?」ソドが大声を出す。


「あまり詳しくは言えないんですよ。

ニケの知識分野で、ボクはその方面の知識は無いですから。

そうそう。このまえ司教様が来たときの説明を覚えていますか?

ボクが、前の世界では剣で戦ったりしないって話をしましたよね。

それは、剣では太刀打ち出来ないような武器が生れてしまったからなんですよね。

ボクは、それに必要なモノを作ることはできませんが、ニケだと作れるんじゃないかな。

ただ、作ろうとはしないと思います。

あまりにも危険なんで。

でも、アトラス領が危機に瀕したりすると、どうなるか分りませんけど。」


ソドの顔色が白くなっている。

まあ、良いか。ニケの件は、最後の切り札が有ると思っていれば良いということだ。


「それより、冬季への対応を相談したいのだ。」


オレ達が、とても寒いという状態が分らないこと。その場合にどう対処したら良いのか。そういったことを順に聞いていった。

それは、想像を遥かに越えていた。


「すると、不用意に外に居ると、体がこおるというのか。」


「ええ。そうです。きちんと寒さを防ぐ準備をしないと、あっというまに、『凍傷』、体がこおるということになります。

そうなると、こおったところは、腐って使い物にならなくなります。

火傷を負った状態に近いですね。」


「しかし、それは、ノルドル王国の兵達も同じではないのか?」


「多分、そういった場所で戦うことができる装備を持っているんだと思いますよ。」


「どういった、対応をすれば良いのか全く分らないのだが、どうしたら良いのだ?」


「まずは、寒さを防ぐための衣装が絶対に必要ですね。

えーと。剣で戦うんですよね。

そうだとすると、兵士の体に合わせた『手袋』とか『防寒靴』を準備しないとならないですね。

至急、体の大きさを計って、準備するしかないのかな……。」


「そのテブクロとかボウカングツとかが有れば、良いのか?」


「凍傷になりやすいのは、足とか手なんですよ。あと、顔も覆ったほうが良いかな。」


「その装備は、準備できそうなのか?」


「最近は、羊を沢山飼うようになってますよね。羊の毛があれば対応できると思います。

それと、砦を暖かくするためには、石炭が必要ですね。できれば、領都で作っているコークスが良いと思うので、大量に生産しておいた方が良いでしょう。」


あとは、何を聞いておけば良いか……。

そうだ、日が射さないと言っていたな。


「それから、冬は日が出ないと聞いたが、一日中夜なのか?」


「そうです。今は、一日中日が出てるんですよね。」


「ソドの話では、そう聞いている。」


「今は夏なので、一日中日が沈まないんです。冬は逆に一日中日が昇らないんです。」


「では、真っ暗なのだな。真っ暗ならば、敵も攻めては来ないんじゃないか?」


「あっ。昼の時間時間帯は、僅かに明るいはずです。

そうですね。日が沈んで、3,4刻ぐらいって、まだ少し明るいでしょ。

そんな感じになると思います。」


「すると、真冬の昼の時間ぐらいには攻めてくる事も有るのか。」


「そもそも、夜って、戦争はしないものなんですか?

松明を点けるとかして、攻め込んだりはしないのですか?」


「そう言われれば、そうだな。ソドどう思う?」


「暗いと同士打ちをする可能性も出るので、普通は戦はしないものなのだが……。

砦を攻めるのであれば、大人数で砦を囲んで、夜に奇襲を掛けるという事もあるかもしれないな。」


「暗闇で戦うことも考慮しないとならないのか。厄介だな。」


「あっ。それなら良いものがありますよ。

ニケの顕微鏡を作ったときに、もの凄く明るくなる光源を作ったんですよ。

それを幾つか灯せば、周辺はとても明るくなりますね。」


「それは、街灯のようなものなのか?」


「いえ、それより何クアト(=d100=144)倍も明るいですよ。電気で光るので、街灯のようなものではあるんですけどね。

纏めて光らせれば、砦周辺を明るくすることも出来ます。

レンズと鏡を組み合わせれば、遠く離れた場所を部分的に照らすことも出来ますね。

川の対岸に敵が居るかどうかを監視するために、それを使っても良いかもしれないですね。」


「そんな事もできるのか!」とソドが叫んだ。


「ええ。夜の敵の動向を確認するのに最適です。」


「ソド。それは、今度確認してみたらどうだ。使えそうなら、国境に送っても良いだろう。」


「そうだな。アイル。今度それを見せてくれ。」


「わかりました。」


国境地帯の防衛の為にも、コークスを確保する事が急務だ。

我々は、一刻も早く、瀝青炭を領都の工場に運べる体制を作らなければならない。

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