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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
110/368

8N.ロムアルド・ノルドル

余は、ノルドル王国の国王ロムアルド・ノルドルである。


今は、王宮の謁見の間で、マルケス伯爵を待っている。

通例なら、余が謁見の間で待つなどという事はないのだが、マルケス伯爵には、事前に、謁見の間に来るように命じている。

マルケス伯爵には、隣国ガラリア王国と外交問題になりかねない件について、調査させていた。

今は、その結果を待っているところだ。


昨年、我がノルドル王国でも念願の金が採れるようになった。

これまで、鉱山から銅は手に入ったのだが、金や銀は殆ど手に入らなかった。

他国の金や銀を買って、通貨を鋳造して対面を保っていた。


その所為で、我が国の通貨の他国と比べて価値が低い。

通貨の金や銀の比率を低くせざるを得なかったのだ。


砂金を発見したという報告に、王宮は沸き立った。


ただ、問題なのは、その場所だ。


砂金が発見されたのは、アトラス山脈の北東流れるノアール川だった。

我が国からは、アトラス山脈を北から廻らなければ辿り着けない、辺境中の辺境とも言うべき場所だ。


そして、こともあろうか、その川は、隣国ガラリア王国との国境線になっている川だ。


「しかし、遅いのう。」


「先触れは来ておりますので、もうじきかと存じます。」


宰相のタマロ・アンフッソが直立したまま、余の左で応えた。

余の右隣りには、近衛騎士団長のリゾオ・コンタンゾも居る。


その時、謁見の間の扉が開いて、3人の男達が入ってきた。膝を突き礼を取った。


マルケス伯爵領の領宰相と騎士団長が同行してきたのだな。


「ロムアルド・ノルドル陛下。セルギウ・マルケス参上つかまつりました。」


「おお。待ち兼ねておった。ここでは話がしにくい。別室へ移動するぞ。」


三人を連れ、宰相と近衛騎士団長と共に執務室に移動した。


「それで、金の鉱脈は見付かったのか?」


余は、マルケスに問い掛けた。


「ノルドル王国側のノアール川の支流を隈無く調査致しましたが、見付けることは叶いませんでした。」


「すると、砂金の大本おおもとは、ガラリア王国側に有るのか……。」


「残念ながら、その様に推察するしかありません。」


なんとも残念な事だ。


東部大戦で、我が国はガラリア王国に負け、大きく領土を減らした。

その頃、アトラス山脈は、未開の地で、魔物が跋扈ばっこする、有っても無くても良いような土地であった。

特に、アトラス山脈の東側は、険しい山々に阻まれている上、平野もほとんどない未開の地だ。

終戦時の交渉で、アトラス山脈の東側は、北側の一部を残して、ガラリア王国のものとなってしまった。


これも、早々に裏切った、オルシ王国の所為なのだが……。


何とも残念な事だ。


「それで、ノアール川の対岸の様子はどうなっている?」


「ガラリア王国は、対岸の要所に砦を築いてこちらを牽制しております。」


「うーむ。今となっては、容易に川は渡れんのか……。」


もともと、あの地域は、定住する者も居ない。

夏の間だけ、漁師が漁をするために滞在するだけだったのだ。


北部領地にしか海が無い我が国では、新鮮な魚介類は貴重で、高値で取引される。

昨年の夏、漁師と商人の一団が、その国境の川で、砂金を偶然見付けた。


砂金を見付けた商人は、その砂金の元を見つけ出そうと川を遡り、対岸のガラリア王国に入り込んだところを、ガラリア王国の騎士に見咎みとがめられた。


なぜ、あの様な場所に、ガラリア王国の騎士が居たのかは判らない。

ひょっとすると、ガラリア王国でも、砂金の存在と金の鉱脈について知っているのかもしれない。


「ただ、不思議なことですが、ガラリア王国は、ノアール川で砂金の蒐集を全くしていません。」


「河原には可成の量の砂金があると聞いている。ガラリア王国側の河原には砂金が無いのか?」


「砂金の量は豊富です。ですから、ガラリア王国側の河原にも大量の砂金があると思われます。」


何故だ。砦など造っても、一文の足しにもならないだろう。

それよりも砂金を集めた方が良いのではないのか?


「陛下。よろしいでしょうか。」


宰相が口を開いたので、それを許した。


「ガラリア王国では、砂金の元になる金の鉱脈の在処を掴んでいるのではないかと愚考します。砂金を採るより、そちらの方が効率的に金を得ることができるのかと。」


「そなたであったな。豊富な砂金がある場所の上流に、大きな金鉱脈があると言っておったのは。

すると、その金鉱脈を守るための砦という事なのか?」


「その可能性が高いかと愚考致します。」


「返す返すも残念な事だ。元はと言えば、あの地は、我が王国の土地であったのに……。」


「陛下。その件に関して、考えがございます。」


マルケス伯爵に従ってきたこの者は、マルケス領の騎士団長だったな。


「そなたは?」


「申し訳ございません。名告なのりをしておりませんでした。私、マルケス領にて、騎士団長を拝命しているバルバ・ゴーリであります。」


「して、そなたの考えとは何かな?」


「はい。対岸に居る騎士たちをつぶさに見ましたところ、ガラリア王国騎士団は居りませんでした。

どうやら、対岸の領主の騎士団と思われます。

砦と言っても、簡素なもの。

兵も、3ヶ所の砦を合わせてもd300人(=432人)ほどかと思われます。」


「すると、寡兵にて、砦を守っているということか?」


「はい。そもそも、ガラリア王国の王都は、はるか南西にあります。

あの地は、ガラリア王国の領土とは言っても、アトラス山脈に阻まれた北東の端になります。

あの地にガラリア王国の軍を送るには、我が王国を迂回しなければなりません。

そのために、アトラス山脈の南から大陸の東端を北上することになるでしょう。

もし、仮に、我が領軍で、川を渡り、かの地を占有したとして、援軍が来るまでには何ヶ月も掛ることでしょう。

それに、あの地は、冬は日の射さない極寒の地です。

対岸の領主は、アトラス家という遥か南に領都を持つ領主です。

南の兵は、寒さにはすこぶる弱いだろうと推測できます。

冬が到来して、我が領の騎士が攻め込み、ノアール川流域を占有しても、領主同士の諍いとして処理できるのではないかと思われます。

そして、砦を守っている騎士たちを拘束すれば、何が起こったのかを知るのもさらに遅れるでしょう。」


「なるほど。すると、ノアール川流域を完全に占有しても、領主同士の諍いとして対応できるということか?」


「ご賢察にございます。」


「宰相、この案はどう思う?」


「南の人々には、あの国境あたりの冬の寒さは、耐えられないものになるでしょう。

冬には、砦を放棄して撤退するかもしれません。

そうなれば、易々と砦を奪えば良いだけかと。

その後、容易には、取り返すことは出来無いでしょう。

もし、冬の間も、敵兵が砦に居るようならば、冬を越えて、日が差すようになったあたりで、寒さで弱った寡兵に、大軍を当てれば、万が一にも負けることはありません。

肝心なのは、敵の兵を逃さないことです。

さすれば、かの地を奪われたことが発覚するのは、来年の夏近くになります。

それまでには、諍いの理由は如何様にも付けられると存じます。」


「宰相の考えでは、来年、ガラリア王国の兵が寒さに疲弊したところを攻め込むということだな。

マルケスは、どう考える?」


「宰相殿のおっしゃる通りかと。

冬になったところで攻め込むことを考えていましたが、越冬した敵兵は、攻めるのに容易いという案は同意できます。

まずは、越冬する敵兵が居るかどうかを確認してみることが良いと考えます。」


「そうか。では、来年になったら、攻め込むとして、準備を頼む。」


「はっ。王国のため、抜かりなく準備を進めます。」


「ところで、宰相。神殿があれこれ言ってきた様だが?」


「はい。ガラリア王国からの訴えとして、神殿を介して、我が王国民が度々越境していると注意を受けました。」


「こちらからは、どの様に応えたのだ?」


「越境しているのは、アトラス領の者で、迷惑を受けているのはノルドル王国の方であると返答しております。

ただ、神殿としては、司教からの直接の訴えであるとして、なかなか納得はしていない模様です。」


「なぜ、司教が関与しているのだ?」


「それが……。あの国境の対岸のアトラス領の神殿長は、ヘントン・ダムラック司教であるとか。

あの様な辺境の地の神殿に、何故なにゆえ司教が在籍しているのか……。

まったくもって、容易には信じ難いことです。」


余が知っているところでは、司教はこの世界に24人しか居ない。

我が王国には、一人だけだ。

ガラリア王国には、二人居ると聞いてはいるが……。


「なぜ、そのような辺境の領地に、司教が居るのだ?

我が王国には、一人しか居ないというのに。」


「それが、神殿に問い合わせたところ、大司教の思し召しとしか……。」


ここで、どうして、大司教などという大物が出てくるのだ?


「それは、また面妖でやっかいな事だな。

宰相。この件はどうするのだ。」


「神殿は、まつりごとには不干渉となっておりますれば、諍いが両王国間にて、解決すれば、問題は無いかと考えます。」


「なるほど。そうなると、ますます、来年の侵攻が重要になってくるのだな。

マルケス。王国軍も加勢することにするので、そのつもりで、準備を頼む。」


「それは、有り難きことに御座います。」


「ところで、砂金の蒐集に、問題は無いのか?」


「はい。川を渡らないかぎり、こちらが砂金を蒐集していても、ガラリア王国側からは、何も干渉してきません。この夏の間に、大量の金を得ることができる模様です。」


「来年になれば、其方は、金の鉱山を持つ領主になるのだ。せいぜい励めよ。」


「はっ。陛下のご期待を必ずや実現させて見せましょう。」


そう言って、3人は、余の前から去っていった。


しかし、大司教とは。想像すら出来ない者までが出てきた。一体、何が起っているのだ。

ガラリア王国、ノルドル王国の地図を、「惑星ガイアのものがたり【資料】」のep2に載せました。

URL : https://ncode.syosetu.com/n0759jn/2/

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