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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
109/369

89.大浴場

「海浜公園と大浴場を作りましょう。」


「ニケは、何を言っているんだ?

今は、被災した人たちへの住居を作るのが優先じゃないのか?」


とアウドおじさんが言う。


まあ、そうなんだけど……。

住居だけだったら、今も移民の人が沢山やってくるので、住居そのものの空きはあるはずだ。


この世界の人たちは、基本真面目だ。

真面目というか、生活に追われていて、余裕が無い。というより、無かった。

今は、職もあるし、小金持ちの人たちも居る。


マリムの街は、居住空間と、仕事場しかない。

もともと零細領地の領都だったんだから、あまり職業に係わらないものが有るはずもない。


領主館の中には、庭がある。けれども、街の中には、公園もない。


今は、まだ幼ない子供が大半だが、子供人口が爆発しつつある。

沢山の子供達が遊ぶ場所がない。


このまま、子供達が歩き回ったり、駆け回ったりする年齢になったら、街中は、そんな子供で溢れてしまう。


各ブロックに、給水塔のための空間があるけれど、そんなところで子供達が遊ぶようになったら、絶対に給水塔にじ登るだろう。

いろいろ問題が有りすぎだ。


とにかく、そんな子供達を収容できる空間が無い。


そして、今回被災した場所を、被災前の状態に再建して住居を建てると、また被災するかもしれない。


「海浜公園と大浴場を作るのは、メリットがあります。

一つは、衛生概念の普及です。

二つ目は、石炭の利用です。

そして、子供を持っている家族の遊び場です。」


日本には、温泉リゾートなるものが有った。温泉じゃなくても大浴場でそんな施設もあった。

そんなものが出来たら、家族連れで賑うんじゃないかな。

公園には、屋台が沢山出ていれば、お風呂に入って、屋台でご飯を食べてなんてことも出来る。


電灯があるから、夜も、子供達が寝る時間まで公園で遊べば良いし。


執務室に居た人達は、なんか納得していないみたいなので説明をする。


まず、今回被災した地域は、また被災地になる可能性があるということを伝えた。


そして、衛生概念について説明をした。


上下水道を整備したことで、赤ん坊の死亡率が劇的に下がった。

乳幼児の生存率を上げているのは、衛生環境の劇的な変化だと説明する。

これは、何度も説明したら、理解してもらえている。

そして、領主館や貴族の家ではあたりまえだけど、領民には入浴の習慣は、まだ無い。

大体は、水で体を拭くだけだ。

最近はシャワーを使う人も居るみたいだけど、流石にお湯は出ない。

冬の寒い時期には、体を拭くことも戸惑うかもしれない。

常に体を清潔に保つことは、特に、乳幼児と接する機会が多い、若い父母には必要な事だ。

それによって、乳幼児が感染症で苦しむ機会が減る。


そして、石炭だ。


燃やすと、煙と有毒ガスが出る瀝青炭から、比較的無害なコークスを作る工場を建設した。ただ、常にある程度は生産していかないと、効率が極めて悪い。

工場を止めると、再開の為に、時間も掛れば無駄な消費も増える。


コストを考えると、電力は、もともと只みたいなものだ。


ただ、工場を運営するには、原料の搬入や工場の運転には人手が掛るので、コスト対応は大切だ。


そのために、ベースとして大浴場の燃料という消費場所があるのは有り難い。


一方で、コークスの利用を無条件で広めると、木炭と競合してしまう。


今は、木炭の生産が、領地のセイフティネットの一翼を担っている。

そういう意味で、コークスの利用分野には制限を掛けたい。


色々説明したのだが、遊び場の意義が一番理解されない。


今の人口の比率を同席している領民台帳の担当者に聞いた。

2歳までの幼児は、領都の人口の1/4と言っていた。

このまま増加してくと、2年後には、1/3が5歳以下の子供が占めることになるという報告が上った。


これには、アウドおじさん達、上役三人も驚いていた。

そう。このままだと、領都は、子供たちで溢れ返ってしまう。


子供達が安全に遊べる空間が必要だ。


今回被災した、海に近い領域は、かなり広いので、これまで作ることが無かった公園を作る。その上で、街のあちこちにも公園を作ることを勧めた。

そして、幼ない子供達を見守る仕事をする人を増やさないと、至る所で、子供が事故を起しかねないことも伝えた。


多分、これまでの領都の歴史の中で、全く経験したことのない事象が発生する。


この事象自体は、喜ばしいことだ。あと5年か10年すると、若い働き手が、アトラス領の産業を支えてくれるようになる。


ただ、それまでの間、対応を上手にしていかないとならない。


概ね、私の意見は了承された。


ただ、領都の建築を担当している文官の人は頭を抱えていたけど。

公園を作るのなんて考えたことが無いんだろうね。

公園造りには、セアンさんが、顧問として適任だと推薦しておいたよ。


被災した人たちは、移住してくる人たちの為に建築してあった住居に移ってもらった。


大浴場は、巨大な浴場と、お湯で遊べる空間を作った。

思っていたとおり、設計が終ったら、2日で完成した。

日本の南東北にある、常磐なんたらセンターを真似た。


巨大なボイラーで水をコークスでお湯にする設備を作った。

これで、大浴場の開業に伴ない、海沿いのコンビナートは稼動することが決まった。


大浴場に水を供給して排水を処理するために、上下水施設も増設した。


お湯で遊べる空間のために、水着が必要になったので、リリスさんに、生産してもらうようにお願いした。

当面は、水着は貸し出しにした。


海浜公園は、セアンさんが引き受けてくれたので、出来上がりが楽しみだ。


大浴場を開業する前に、解決しておかなきゃならない事がある。それは、瀝青炭の運搬方法だ。


これは、颱風騒ぎが起きる前に、どうするかを話し合っていたんだけど、話し合い途中のままになっている。


鉱床は、アトラス領の北の方にある。

陸送で運搬するのは、時間も人手もバカにならない。


アイルは、巨大なタンカーを作る気、満々だ。


ほんの少し前まで、古代青銅器文明の世界だったんだけど……今さらだよなぁ。


ただ、船を造れば解決という訳にはいかない。

鉱山の開発や、積み出しの港も必要だ。


安全に船を運航するためには海図が必要だ。


まあ、これまでの経験から、港はあっという間に出来ちゃうんだろうけど……。


ただでさえ、いいかげんな陸上地図しかない世界に、海図なんかある訳がない。


特に、この世界では、大陸の南は、早い海流が東から西に向っているために、アイルが作ろうとしているような大型船は無い。


沿岸を帆掛け船が行き来しているだけ。あとは近海の漁船だけだ。


「それで、アイルが考えている船であれば、大量の騎士達を一度に運べるのか?」


とアウドおじさんが、アイルに聞いた。

そうだよね。北の国境で睨み合いしているのが、最重要課題だね。

石炭の運搬だけに使うものじゃない。


「ええ。それは可能です。ただ、アトラス領北部の海岸が凍り付いていなければの話ですが。」


「ふーむ。これまで、北部は碌に作物が育たない場所だったからな。ほったらかしだったのだ。そのために海岸がどうであるかの情報も無いと思うのだが……。グルム、古い記録があったりはしないか?」


「拝領したときに、領地を調べた記録があったと思いますが……冬季に探索はしていないと思います。」


「そうだな。冬には、北部は物凄く寒くなる。古い記録に期待するのは無理が有るな。」


「要所要所に騎士を派遣して、調べさせる他ないでしょう。」とお父さん。


「そう言えば、東の海の海流は北向きに流れているんでしたっけ。」


「そうだ。北向きに流れている。だから、国境へ船で行くのは比較的容易だ。

ただし、帰りは、海流に逆らうことになるので、少し大変だが。」


そうなのか。すると、地球のヨーロッパみたいに、緯度が高くても少しは温暖なのかもしれないな……。


まあ、調査してからだね。


まずは、調査のための人員と移送用に、多数の小型の船を造ることになった。

小型の船をあちこちに派遣して、海図を作りつつ、海岸の気象観測や、小型船に積めるだけだが、石炭の輸送もすることになった。

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