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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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6.再会

オレが居る部屋に、騎士団長のソド・グラナラの娘がやってきた。ニーケー・グラナラという名前で、ニケと呼んでいるそうだ。ソド・グラナラ騎士団長とユリア・グラナラ夫人に手を引かれてきた。


ニケもオレと同じで歩ける。


オレは、自分の名前のアイテール・アトラスを伝え、普段アイルと呼ばれていると伝える。


そんな挨拶を終えると、ニケの両親は、別の部屋にいるオレの両親の元に移動してしまった。


ニケは、幼いながらも、可愛らしい娘だ。

オレは見掛けは、幼ないけれども、中身はアラフォーのオジサンだから、何とも思わないよ。ロリコンでもないし。

まあ、可愛くない子より、可愛い子のほうがいいとは思うけれど。こんなこと思うのはオジサンだからなのだろうか。


会って思ったのは、よくおしゃべりをする子だということ。

何を話して良いのか判らないオレとしてはとても助かった。


この国のこととか、この領地のこととか、この歳の幼児とは思えない物知りだ。

お世話をしてくれる女性のことを侍女さんというのは、この子から教えてもらった。

侍女さんには、その人、その人の事情で、いろいろな人が居るらしい。


貴族のこととか、騎士のこととかも詳しかった。

うーんスゴいね。


アトラス家が、300年ほど前にあった戦争の英雄の子孫で、グラナラ家はその当時からの協力者の家系。そんな事は全く知らなかった。


まあ、夢の中の出来事として、ストーリーは必要なのだろう。でも、こんなに詳しいストーリーを出会った女の子から聞くというのは、どういう設定なのだろう。


しばらく、ベッドに腰を下して、いろいろ教えてもらっていた。しばらくして、侍女さんが、食べ物を持ってやってきた。


中央にあるテーブルに並べている。

なるほど、テーブルはそういう用途でここにあったのか。

使っているの始めて見たよ。

普段はベッドで食事をしていたからね。


オレは、離乳食から、普通の食事に切り替わり始めている。どうやらニケもそうらしい。


今回持ってきてくれたのは大麦の粉を団子にしたものをオリーブオイルで揚げた、あげパンみたいなものだ。

それと二人分のジュースが木のコップに入っている。

これは、結構好きな食べ物だった。

可愛いお客さんが居たので、少しだけいい格好をしようとしたのかもしれない。

ベッドから勢い良く降りたら、バランスを崩して、膝を床にぶつけてしまった。


『いたたたたた。あっ膝から血が出てきた。』


思わず、日本語が出てしまったみたいだ。


その瞬間、オレの後ろから、『恭平!』と聞き覚えのある単語が聞こえた。

後ろを振り返ると、ニケが驚いた顔をしていた。


『えっ、杏樹か?』


そう言った瞬間、ニケの目からブァと音がしそうな感じで涙が溢れていた。


『恭平、ここに居た。恭平、ここに居た。』


泣き声で、意味不明の言葉を連呼している。

まわりに居た侍女さん達が、オロオロしているのが見える。

日本語だものね。二人が何を言っているのか分からないだろう。


泣きやまないニケのもとに寄って、抱き締めて、背中を擦ってやる。

しばらくすると、落ち着いてきたのか、シャックリしながら、


『恭平が居た。よかった。』


と言う。


『本当に杏樹なのか?』


と聞くと、だだひたすら頷いている。


そんな状況にありながら、オレはかなり戸惑っていた。

これは、どういうシチュエーションなんだ。


ここは、オレの夢の中の世界ではないのか。


大分落ち着いてきたのか、杏樹は、ポツポツと話し始める。


『私、転生して。』


『地球の記憶を持ったまま一人ぼっちで。』


『恭平がどこに居るのかも分らなくて。』


『このまま一人で、この世界で生きていくんだと思っていたんだよ。』


転生って、最初に棄却した例の話だよな。

有り得ないって。


『いや、オレ自身は、どこかで、意識不明で治療中で、閉じ込め症候群になっていて、夢の世界で生きていると思っているんだけど』


その瞬間。パンという音とともに左の頬に痛みが走った。


『なに、それ。それじゃ私は、あなたの夢の中に出てくる幻みたいなものだって言うの』


『いや、だって、あまりに信じられない事がありすぎて、夢だと思うしかないじゃないか。』


と、その瞬間。また、パンという音がして、今度は右の頬に痛みが走った。


『痛くない?痛いでしょ。私の手も痛いから。だから夢のはずは無いよ。』


いやいやいや、それって、夢だから痛くないとかそういうことではなく……。

とは言え、夢を見ているという可能性は、オレの中でもかなり萎んできている。

杏樹のあまりに予想外の行動は、オレの創作物ではないな。


オレは両頬をさすりながら回りを見る。

侍女さん達は、完全に固まってしまっているよ。


『だいたい、転生なんて有り得ないし、生れる前の記憶を持ったまま生まれ変わるなんてことも有り得ないよ。』


『そんなこと知らないわよ。実際そうなんだから、仕様が無いじゃない。』


段々、杏樹の言うことを否定するのがメンドウになってきている。


これは、認めた上で、合理的な判断をするしかないのか。


いや、合理的な判断をすることはできそうもないから、全面的に認めて杏樹が言う様に、仕様が無いと思うしかないのか。


『転生っていうけれども、じゃあ、この世界はいったい何処なんだ。』


『未来の地球じゃないの。

そんなに都合良く人類が生きられる惑星があるとは思えないから。

それに、どこをどう見ても、西欧人としか思えない人達の世界で、地球の植物が有って、動物が居るなんて、他の世界でそんな偶然なんて無いわ。

そして、もし、ここが地球なら、少なくとも私達が居た時代の前ではないわ。

ここは、ユーノっていう大陸のなかに、5つの大きな王国がある世界なの。

そして、鉄が発見される以前の青銅器文明まっただ中よ。

鉄は、ギリシャ文明が発展した頃には世界中に広がっていたから。

それより以前に、大陸を大きな5つの王国が支配していた歴史なんてないわ。

だから、地球が滅亡してしまって、現在文明復興中というのが妥当よ。

なにしろ、私達が居た世界は、いつ文明が滅びても奇しくなかったから。』


なんとも説得力がある話だ。

杏樹も、ここがどこなのかが気になって、そのための情報を集めていたのだろう。


『それじゃ、オレ達は、未来の地球に転生したということか。』



「あのぅ。何か込み入った状況のようですが、ここにあるお菓子を食べませんか?」


侍女さんの一人が声を掛けてきた。


「あっ。そうですね。折角だから頂きましょうか。ねっ、アイル。」


「そうだね、ニケ、いっしょに食べようか。」


侍女さん達にしてみれば、突然オレがコケて、ニケが大泣きをして、オレが慰めていたら、ニケがオレをひっぱたいて、あとは怒涛の日本語での言い合い。

全く訳が分らない状態だったろう。


これまでの不可解にしか見えない状況を誤魔化そうと、「これ、美味しいね。」とワザとらしく言ってみる。

ニケもそう思ったのか、引き攣り笑いをしながら、「美味しいね、美味しいね」と言いながら食べている。


食べ終えて、侍女さん達が、後片付けで居なくなった。杏樹にどうしても話しておきたいことを伝えようと思った。


『杏樹、本当にゴメン。あんな事になるとは全く思っていなかった。』


『恭平のことだから、マージンもちゃんと取っていたんでしょ。』


『そうなんだ、だから、何が起ったのか、今でも分らないよ。』


『まあ、起こちゃったことは仕方が無いよ。それに、若返ったんだから得じゃない。』


『いや、若返ったというか、幼なくなったというか。』


『ふふふっ。私、きっとグラマー美人になると思うんだよね。恭平もさらにハンサムになったみたいだし。』


『そうだね。ニケはとても可愛らしいよ。』


『惚れ直した?』


『えっ、オレ中身オジサンだよ。今のニケに惚れ直したりしたら、警察に掴まるよ。』


『でもでも、恭平、プロポーズしようとしてなかった。』


かなり驚いた。え、そんなことは言ってなかったと思う。なんかバレること言っただろうか。


『バレていた?そんな素振りはしてなかったと思うけれど。』


『バレバレだったよ。もし、恭平がプロポーズしてくれなかったら、私からプロポーズしていたし。』


これには、さらに驚かされた。えっ、両想いだったってことなのか。知らなかった。

そういえば、高校を出てからやけに杏樹がそばに居たような気がする。


『そうなんだ。あのまま試運転が上手くいっていたら、そっちも上手くいっていたのか。婚約指輪用意してたんだよね。残念だな。』


『えっ、そうなの。どんな指輪?』


『いや、普通にダイヤモンドの指輪だよ。あんまり、凝ったもの思い付かなかったから。』


『そうかぁ。見てみたかったなぁ。』


ふと、転生というのが現実のことなら、オレは死んでしまったんじゃないかと思い至った。


『転生してしまったということは、あの世界で死んじゃったってことだよね。もう両親や、妹に会うことは……出来無いんだな……。』


『そうね。私もとても悲しかったけれど。ま。仕様が無いじゃない。人はどうせ死ぬもんだし。この世界で、やりなおせばいいんだよ。』


『杏樹は、もう吹っ切れているんだね。オレは、今さっき転生だと知ったから、まだ、吹っ切れそうにないよ。』


『まあ、考えてもどうにもならないことを、考え続けてもいい事ないって。それに、恭平も私も、過去の知識があるんだから、この世界をより良くすることもできると思うんだよね。』


『そうかなぁ。この世界では、物理も化学も必要ないかもしれないよ。だって魔法があるから。』


『えっ!!今、何て言った?』

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