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現在の夜宵の装備。
王立飛輪学園の制服レベル5。
右手にゴミ拾い用トング(無料レンタル)レベル1。
左手にゴミ袋大厚手(支給品)レベル2。
右腕に『飛輪清掃ボランティア』の腕章レベル5。
攻撃力と防御力は全く無いもの、知名度と環境問題だけには秀でている様な装備だ。
むしろゴミを拾う事に特化した、環境を良くする為の装備だよね?
「それではボランティアの皆さん、本日は宜しくお願いします!」
多分『飛輪清掃ボランティア』のリーダーと思わしき金色の腕章を付けた、七三分けの冴えない容姿の男性の掛け声で、清掃ボランティア活動は開始された。
わたしと同じ、黄緑色の腕章を付けたボランティア仲間達がそれぞれ街中へと散って行く。
飛輪清掃ボランティア活動自体は、飛輪に暮らす人々には馴染まれている、年齢に関係無く老若男女参加は自由の清掃活動で、自分達の暮らす街綺麗に保とう!という活動方針の元、飛輪の街中に落ちているゴミ拾いを拾って歩くと言う、健康にも良い(かも?)ボランティア活動らしい。
本来は季節毎に二回恒例の清掃活動で、雨の日の午後の時間に開催されているのだか、今回の様な例外もあって突発的なイベントやお祭り様な、街中が汚れてしまう予想が出来た場合のみ、清掃ボランティア活動もそのイベント終了後に本部が立ち上がるんだとか。
その事が分かっている為、慣れた清掃ボランティアは、本部に細かい指示を受ける事無く、サッと自分の持ち場へと散って行く。
本部テントの立つこの公園にまだモタモタと残っているのはわたし達と同じ、本部の指示を仰がなきゃ何も出来ない、今日が清掃ボランティア活動デビューの新人だけだった。
「よーし!君たちは三人一緒に、パレードコースのゴミ拾いだ。飛輪学園の制服を着ているって事を忘れてずにしっかりやるんだよ?」
わたし達とは何故か違う赤い腕章を腕に付けた渡教師が、トングを片手にわたし達に指示を出す。普段定期的に開催されてる清掃活動では、ゴミ拾いする場所は指定されておらず、清掃ボランティアの腕章を付けていれば、禁止区以外の飛輪の街中なら何処でも自由にゴミを拾いに行って良いらしい。腕章効果スゴッ。
今日はパレードがあった西区を、集中的にゴミ拾いをするよう『清掃ボランティア』本部の方からお願いされているので、渡教師もパレードコースを集中的にゴミ拾いしてくる様にとわたし達に指示を出す。
まさか「午前中は自由にして良いよ?もし、時間があれなら三人でパレードでも見て来たら?派手な輝術も使われるらしいし出店も出てるってー…これはもう帰国パレードという名のお祭りだよね?」と話ていたのは、わたし達がパレードを観に行く前提の話だったのか。そうか…そうだよねー。わたし達がパレードを観ていたら、ゴミ拾いする場所まで、わざわざ渡教師が引率する必要が無くなるし。
そう、制服姿って言うのは兎に角目立つ。
着ているだけで飛輪学園の生徒だと言う身分証明書にもなるが、逆に、街中でこれを着ている限り、善い行いをしても悪い行いをしても飛輪学園へと連絡が行くのだ。学園の評価にも繋がってしまう。
だからこそ渡教師は、制服を着ているって事を忘れるな。とわたし達に釘を刺したのだろう。
なんたってわたし達は補習組。少しでも学園の評価に響くような行動は控えなければならないのだ。
「渡教師は一緒に行動なさらないのですか?慈善活動の監視役ではなかったのですか?」
そう可愛く首を傾げながら、花桃は渡教師に聞いた。
確かに、渡教師は手間省き過ぎじゃないの?とか、わたしもちょっと思ったけど、花桃それは違うよ。わたし達は渡教師に監視されなくても、制服を着ている限りこの飛輪の人達にしっかり監視されているんだよ。
だから決してゴミ拾いをサボれない。まあ、わたしはサボらないけれど。夏休み掛かってるし。
「僕も初めはそのつもりだったんですが、ちょっと別件で済ませなければならない用が出来てしまったので、その用を済ませてから合流します。それまでにそのゴミ袋の中身いっぱいにしといてくれると嬉しいです」
そう言いながら渡教師は、自分が持っている分のゴミ袋も蛍火に渡して、自分はトングをカチカチと鳴らしながら西区とは反対側、公園を出て東区の方へと歩いて行った。
「……これは、我のノルマはゴミ袋二枚分という事か?」
自分の手の中に一枚増えたゴミ袋を睨みながら、蛍火がぼそっと呟いた。
「自分のノルマをわたくし達の慈善活動用のノルマへと換算させていくなんて、意外と渡教師もやり手ですわね」
「ま、まあ、頑張ろうよ!三人一緒にやれば意外とあっという間にゴミ袋なんていっぱいになっちゃうもんだよ?」
と、わたしは二人を励ましつつ背中を押して、西区のパレードコースへとゴミ拾いに向かった。
お読み下さり有難うございました。