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毎度短くて済みません。
「そして、そんな強盗事件のあった宝石店へと、我らは足を運んで来た訳なのだが?……何故宝石店なのだ?」
「私達の捜している彼女が大切に持っていた物が、加工前の輝鉱石だったからですわ」
加工前の輝鉱石を輝石へと加工するのが輝術師の仕事一つなら、輝鉱石を宝石へと加工出来るのは、輝鉱石加工の資格を得た宝石士の仕事なのだ。
わたし調べによると、宝石強盗に入られた店のメインは宝石やアクセサリーの販売だが、他に輝鉱石の買い取りや加工した輝鉱石の販売も行っていた。強盗に入られたのは開店直後、お帰りなさいパレードも終盤、パレードが一番盛り上がる時間帯だったらしい。
犯人は顔を狐の面で隠した中肉中背の男二人組、輝石を使った武器を所持していて、一人がその武器で宝石店店主を脅している間に、もう一人が店内にあるショーケースのを破壊し、中に展示されていた宝石やアクセサリーを奪って逃走した。
逃げた犯人達はパレードの人混みに紛れ逃走中。その行方を警察団が追っているらしい。
それに、奪われた宝石の中には加工前の輝鉱石もあったとか。また、その輝鉱石と言うのが輝術師の業界ではかの有名な『深海の青』と呼ばれる、深海にある鉱山から発掘された純度の高い輝鉱石だと言う。
今朝の朝刊にその記事が載ってから、学園のあちこちで『深海の青が盗まれたらしい』と言う話を耳にした。春に深海の青が、海底鉱山から採掘された時は新聞の一面を飾っていた程、暁桜国国内では知られた輝鉱石で、飛輪でオークションに懸けられた時、誰が深海の青を落札するのかで大いに盛り上がり話題をさらっていた。
蓋を開けてみれば飛輪の商業地区に店を構える中級宝石店が、店の全財産を叩いたような金額で落札したらしい。そんな宝石店の必死さがまた話題となり、落札後深海の青は特殊なショーケース中に入れられ、宝石店の店内の一角に客寄せ目的として飾られ、その効果は絶大だと言う話をわたしは朝輝から、と日常のとある雑談として聞いたことがあったのだ。
そして、わたしは珍しくその事を覚えていた。
「一般人がそうそう天然の輝鉱石なんて持っている訳無いんだね。なら何故彼女は輝鉱石を持っていたのか?そう考えた時わたしは一つの結論に辿り着いたんだ!」
「ここから盗まれた輝鉱石だったと言う事だな?」
「……その通りっす」
「ならばこれは現場百篇と言う事なのだな?」
「私は、百回も通うなんて御免です。用があるなら本日中に済ませますわよ」
わたしだって嫌だよ。
現場百篇については皆の意見が同じだったようで、わたし達はコクリと頷き合う。
「じゃあ、先ずは情報収集からだね。バラバラに分かれてこの辺の人に、強盗事件の事と宝石店の事を聞いてみよう」
そう言うと、花桃と蛍火がとても不思議そうな顔でわたしを見てくる。
「何故だ夜宵?直接宝石店に行って話を聞けば済む話じゃないのか?」
「そうですわ。わざわざこの辺の人をとっ捕まえてお話を聞くよりその方が簡単でしょう?」
まあ、そう思うよね?
わたしもさ、今日この宝石店にやって来るまでは、それで彼女が捜し出せれば一番楽だろうなって思ってたんだけど……。
ちらりと商業地区の一角に店を構える宝石店に目を向けて、自分が感じる違和感にため息を吐きながら
「だって、どう考えてもこの宝石店怪しいでしょう?」
と、わたしは二人にそう答えたのだ。
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