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「……多分?」と、可愛く首を傾げて疑問符を浮かべる朝輝と一緒に、食堂にて晩御飯を食べる。
出来立てホカホカと言わんばかりに温かい美味しい料理の数々は、疲れたわたしの五臓六腑に染み渡って行く気がする。夕飯の時間から大分時間が経っているのに、取り置きした料理が温かいのはこのトレイのお陰らしい、保温保冷が出来るらしい。見た目はただの木製トレイ、表はカッコいい木目調流石、裏には何か文様が刻まれているから意外とお洒落!でも機能は優秀なトレイの文様を、何故か朝輝は嬉々として紙に写し取っていたっけ?
わたしは流石王都の王立飛輪学園、使っているもののお洒落だなぁ~っと関心しただけなんだけどね。まあ、朝輝はお洒落なもの好きだから。このトレイの裏に描かれている様な文様をいっぱい紙に描いてストックしてるしね。
「んでぇ~朝輝は七生に何心無い言葉いったのよ?」
「心無い言葉なんて、別に…ただ、お前は『友達』じゃないって言っただけじゃないか」
「うわぁ~毎朝朝輝に直接新聞を届けてくれる、親切な同級生にそんな事言ったの!?友達のわたしはドン引きだわ~」
「お前はまたそう言う風に、嫌な言い方するなよ!俺の一族が少し変わっているのは知っているだろう?」
「まあね~。わたしも『友達』が古代語で『真友』を指す言葉に変わるって~のは、村で暮らすまで知らなかったもん」
わたし達の出身地である村は、暁桜国では辺境と呼ばれている陸ノ島の中でも一番北の地にあった。
暁桜国の中でも陸ノ島は、古代の遺跡が多く残っている為未開発の地が多く、ぶっちゃけ田舎。そしてその島に住む人達も閉鎖的で、島外から来る人をあまり歓迎してはいなかった。
そんな閉鎖的な陸ノ島に、考古学者であったわたしの両親は一家で乗り込み、唯一暮らす事を許された北の村で生活を始め、陸ノ島では未だ数多くの古代語が日常的に使われ、そして古代種信仰が遺されている事を知り狂喜乱舞。
一緒に連れて来た子供達は村へと残して、本人達は現在も陸ノ島中の遺跡を飛び回っている。
そんな、自分勝手な親に放置された子供の一人であるわたしが、この歳まで真っ当に生きてこれたのは、一重に10歳の離れた賢い兄と、優しい村の人達のお陰であった。
「油断していたんだ」
「まあ〜ここの人達って友達だって簡単に言うから、わたしもたまにドキッとするよ」
陸ノ島で『友達』になる為には、霊峰に一緒に登らねばならないんだよっ?ただ友達になるだけでそんな儀式があるとか七生は知らなかっただろうしね。
それだけ、陸ノ島出身者の中での『友達』と言う言葉の意味は大きいのだ。
わたしも陸ノ島に渡った当初は、元住んでいた場所との違いに家族共々頭を抱えた思い出がある。
まあ、それさえも両親は興味深げに楽しんでいたけど……わたしの場合、一目惚れした朝輝嬢に『友達』から宜しくお願いします!!と告白して、霊峰に登山に行くと言う憂き目にあったから、今でもちょっと『友達』って言葉にドキドキする。もしかしてこれがトラウマってやつか?
「七生は気の良い奴だから、事情を話せば絶対に許してくれるって」
「……そうだろうか?」
「そうだよ!その上で、朝輝が七生と本当の友達になりたいって思うなら、七生と一緒に壱ノ島にもあるだろう霊峰登ればいいじゃん。霊峰って確か各島に一つあるんだよね?」
「そうだ。七輝神様のお力でお作りになった霊峰が各島に一峰あるからな。七霊峰を巡礼する意味で、俺も壱ノ島にある霊峰の登山にはチャレンジしてみたいと思うが……夜宵はどうだ?」
「……わたしは、小さい頃に登った雪山がトラウマになっているからパスで!!」
そんな期待を浮かべた瞳で見て来ても無理な物は無理。もう二度と朝輝と登山はしない。
そう、七霊峰登山で一番厳しいと言われている陸ノ島の霊峰は、頂上付近には一年中雪が残っていると言われる山なのである。まあねぇ~登山した時期も初春で悪かった訳で、雪も残ってたしとっっっても大変だった。朝輝が一緒じゃなきゃわたし死んでたね!っと思うくらいには。
「……それは、少し残念だな。壱ノ島の霊峰は名峰らしいぞ?」
「七生が一緒に登ってくれると良いね!」
朝輝にも友達が増えて一石二鳥じゃない?と、まだ名残惜しそうにこっちを見てくる朝輝の霊峰登山の話を強制的に打ち切った。
まあね。無いと思うけど万が一朝輝の誘いを七生が断ったら、仕方無いけどその名峰登山に、わたしが付き合うことになるんだろうな。わたし朝輝の『真友』だしねぇ~と考えながら、わたしはお箸を置き晩御飯の締めのお茶を飲み干した。
お読み下さり有難うございました。




