3-1
「おかえり」
別にやましい事は無い。無いのだが…音を立てない様、静かにこっそりとわたしはショコラ寮へと帰って来た。
玄関扉を開けて寮の中に入ると、そこには仏頂面した朝輝が仁王立ちで待ち構えていた。
「え?ただいま〜って、あ、朝輝!?何でこんな所にいるのっ」
「遅かったな」
え、何でそんな仏頂面なの!?わたし何かしたっけ?
「暗くなる前には帰るって、お前は言っていたよな?」
「あ〜あ?そんな事言ったっけ?」
うん…言った。確かに覚えている。だがここはすっとぼけておこう。
睨まれても仕方無い。だって遅くなった理由について朝輝には言えないし。
この件はここだけの話!っとしっかり雅様に釘も刺されたし。
警察団から(と言うか雅様から)の慈善活動延長戦を引き受け、依頼の詳細を詰め終わり、わたし達が警察団本部から解放させて貰えた時には、もう朝輝と約束していた「暗くなる前」と言う時間は大幅に越していた。
もう、警察団本部を出た時点で既に辺りは薄暗かったのだ。
渡教師と言う大人の引率もあり、学生だけで飛輪の街中を歩くと言う事態は避けられたものの、飛輪の街中から郊外にある王立飛輪学園へと辿り着いた時には、学園の門限ギリギリの時間だった。
渡教師とは正門を潜って直ぐに分かれた。
「お説教は後日!」と言う恐ろしい言葉を残して本校舎へと去って行った渡教師には、今日中に慈善活動についての報告書を書き上げ提出すると言う、つまりまだ仕事が残っている訳で残業決定!何て上に報告すれば良いものか?と、帰る道中ずっと頭を悩ませていた。
そして、蛍火と花桃とは、明日また三人で集まって作戦会議をしようと言う約束をし、それぞれの寮へと向かう別れ道で分かれた。
蛍火はプディング寮、花桃はキャンディ寮なんだって。
きっと学園寮の名前を付けた人は、お菓子に飢えていたんだろう。二人の寮の名前を聞いた瞬間、わたしのお腹が空腹を訴えグゥーっと鳴った。
そう言えば、お昼を屋台で済ませた後から何も食べてない……。
学園の敷地内に入ってしまえば、各寮の門限は無いに等しいのだが、下級生が夜間に用も無く敷地内を彷徨いている事は、あまり良しとはされていないので、わたしは誰かに見咎められて注意される前にと、ショコラ寮まで走って帰って来たのだ。正直正門からショコラ寮までは結構遠かったので、とっても疲れている。お腹も減っているんだけど、とにかく今は早く部屋に帰りベットで休みたい。寝たい。
不機嫌そうな朝輝と話をするのも面倒で、わたしは早々に彼の横を通り抜け、女子部屋へと続く階段を上がろうとした。
すると、朝輝が階段へと足を向けた、わたしの腕をパシッと掴んで言ったのだ。
「おいっ!晩ご飯はどうするんだよっ!折角食べないで待ってたのに」
「……食べないで待ってたって、わたしの分あるの?」
もう夕食が出る食堂の使用時間は過ぎているし、わたしは今日晩ご飯の取り置きの申請を出して居なかったので、空腹だけど寮の晩ご飯は諦めていたのだ。
もしかしたら由記先輩が何かお菓子でも恵んでくれないかな〜って、少し期待して早々に部屋に引っ込もうと思っていたのだが……もしも晩ご飯が残っているなら話は別だ。
「そりゃあ〜あるで?」
丁度食堂のある方からやって来た、同じクラスの七生が階段前で揉めているわたし達の横を通り抜けながら
「あさひんはなぁ?やーぼうの分の晩ご飯の取り置きを頼んで、「夜宵と一緒に食べたい」からって自分まで晩ご飯食べずに、こんな遅〜い時間まで食堂で!待ってたんやで?」
「やーぼうはもっとあさひんに感謝した方がええわな」と言うと、橙色の綺麗な瞳で冷たくわたしを睨み付け、肩より少し長いストロベリーブロンドの柔らかそうな髪を靡かせながら、階段をダンッダンッと大きな音をたてながら上がって行った。
「……何あれ!?わたし七生に何かした?」
あまりの事に呆然として、七生が階段を上がっていく様を見届けてしまったけど、明らかにアレはわたしに腹を立ててたよねっと!振り返るとそこには珍しく苦々しい表情を浮かべた朝輝が居たのだ。
「ごめん。アイツに何かしたのは俺だから」
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