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次が長くなるので、後で少し訂正します!
⑨
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「覚えていますか?ってどう言う意味?」
「そのままの意味です。わたくしは何故か被害者女性の顔を思い出せないのです」
花桃の言葉の意味が理解出来ない。
だって、花桃が一番引ったくりの被害者の側に居たじゃないか。
わたしと蛍火は引ったくり犯の方にかまけていたから、遠目でしか彼女の姿は見ていない。
それでもチラリと見た顔を覚えていないって訳じぁ……?
「え…蛍火ならともかく、花桃が一番彼女の側に居たのに覚えていないとか」
「なぬ。聞き捨てならぬな。我は人の顔などそうそう忘れたりせぬぞ!」
「直ぐに警察団の人達も到着してたし、彼女は無事に警察団に保護されたんでしょ?」
「……その通りです。その通りのはずだったのですが、不思議なことに、わたくし彼女の顔だけ全く覚えていないのです」
髪型や服装は覚えているのにですよ?と頬に手を当て、眉間に皺を寄せ必死に彼女の顔を思い出そうと努力している花桃の姿に、嘘を付いている様子はない。
「それは『不思議』と言うか『可笑しくない』?」
「それが『可笑しくない』から、貴女方にも話を聞くことになり、この場に呼んだ訳です」
ビクッ。突然雅様に話し掛けられて、思わずあからさまに肩が震えてしまった。まさか話し掛けられるなんて!
……折角、同じ食卓に座っている幸運に気付かない振りをしていたのに。
顔を隠した変質者(自分の事)にも、気さくに話し掛けてくださるなんてなんて心が広い。
ならここは、わたしが開き直ろう!変質者として!!
雅様の顔を見れば頭が真っ白になってしまうので、この両手は外せないけど、わたしは人見知りだと思わせるんだ。
恥ずかしくて上手く喋れないのは青春を謳歌している学生の特権(多分)!
間違ってでも顔を合わせないように気を付けて、下を向いて話せば何とか自分を保てると、思う?
「実は、被害者女性の顔を覚えていないのは、花桃令嬢から被害者を引き受けた、うちの団員達も一緒なのです。団員の方は花桃令嬢よりも酷くて、その場で彼女に簡単な事情聴取も行った筈なのに、その内容すらも覚えていないらしいのです。そこで、花桃令嬢と共に居てひったくり犯を捕まえたお二人も被害者女性の顔を目撃したはずだと伺いましたので、被害者女性について覚えている事があれば教えて欲しいとお呼び致しました」
成程。それは確かに『可笑しくない』事だ。
花桃だけじゃなく警察団員さんも、被害者の顔を覚えていないなんて、流石に忘れっぽいなーじゃ済まされないレベルだろう。そもそも花桃は物覚えが悪いように見えないし。
そう言えば、被害者の女性は引ったくり犯に鞄を取られていた筈だ。蛍火が引ったくり犯をぶっ飛ばした時一緒に、鞄も一緒にどっかに飛んで行ったように見えたけど、あれどうなったんだろう?
簡単な事情聴取をしたなら、被害届とかも出している筈。じゃなきゃ引ったくり犯も犯人として捕まえられてない……筈?あれ?
「遅ればせながら改めまして。この事件を担当させて頂く運びとなりました。飛輪警察団副団長の雅です」
「とってもご存じです!」
「……夜宵、言葉が変ですわよ?」
「そうか?夜宵は大体言っている事が可笑しいぞ?
「それもそうですわね」
「え、わたしっていつの間にその認識に……」
「……オイ、お前らここは学園じゃないんだぞ!」
「王立飛輪学園の皆さんは。教師も学生もとても仲が宜しいんですね」
コメカミに青筋を浮かべている、怒り出す一歩手前の渡教師の姿を見て、和かにそう言える雅様は大物だ。
にこりと微笑む雅様の笑顔には、鎮静効果でもあるのか、渡教師の青筋も綺麗さっぱり消えていた。流石。
コホン。
「そもそも、あの〜事件って、おかしいですよね?引ったくり犯は捕まったのに?被害者女性も警察団の方で保護したんでしょう?」
どう考えてもおかしくない?とわたしが顔を隠しながら問えば、何故だか雅様は笑みを深めてクスッと笑う。
ん?
「事件に関してはおかしくないですよ?現在行方不明の被害者女性の証言が取れなければ、この件は、王立飛輪学園の傷害事件として、警察団で扱われる事件になる予定なので」
「マジか」
一瞬で肝が冷えた。
お読み下さり有難うございました。




