2-7
「うううううう、うちの、うちの生徒が!うちの女生徒が!!大変お世話になってます!」
「……はい?」
「渡教師どうどう。落ち着いて下さい大丈夫ですから」
引ったくり犯と一緒になって連行されて来た〈飛輪警察団本部〉。
「この部屋で待っていてくださいね」と通された部屋で、蛍火と一緒に大人しく椅子に座り、尋問されるのを待っていると、聞き覚えのある声が扉の向こう側から聞こえて来た。
どうやら花桃はちゃんと渡教師に繋ぎをつけてくれたようだ。ホッ。
「良かったな夜宵。救世主だぞ!」
「救世主かなぁ?ただの身元引受人なんじゃぁ……一応学生だし」
「ああ、でも絶対これ怒られるよね!」っと、わたしは頭を抱える。
「こんな所に居るより、学園に帰って怒られた方がマシじゃないか?」
「……そうだよね。まさか警察団に連行されるなんて思ってなかったもんなー」
連行された時の事は、衝撃がデカ過ぎて正直あまり良く覚えてない。悪は成敗して何が悪い?がモットーの蛍火は最初っから当てにならなかったし、わたしが上手く弁明も出来なかったから、こうしてわたし達は警察団本部に連行されてしまったのだ。
でも、わたした達は流石に犯人扱いと言うわけでは無く、一応事情を聞くって言う目的で連れて来られている筈なのだが…でもね、通された部屋が『取調室』なんだものビビるでしょう!?
ちゃんと机を挟んで、二つ椅子を並べて置いてくれたけど、卓上ライトが一つだけ置かれた机を挟んで、わたし達の向かい側に座っているのは、ガタイの良い強面の警察団員さんだ。腕を組みずっと怖い顔でこちらを見下ろしている。これはもう監視だと思う。そんなに怖い顔しなくても、わたしは悪いことしてないもん、逃げたりしないし。
それにこの強面団員さん、蛍火が臆す事なく話しかけてもいっさい喋らないんだ。これって事情聴取じゃなかった?ってこっちが思うくらい話しかけてこない。だもの監視だと思うでしょう?
まあ、この強面団員さんはわたし達を監視しているだけで、わたしが蛍火とピーチクパーチク姦しく会話をしていても怒らないし注意もしないから、前方からの圧はかかっているものの、別にこの取調室の居心地は悪くなかった。
コンコン。ガチャ。
強面団員さんの背後に一つしか無い出入口のドアがノックされたと思ったら、直ぐに外側から開かれ、まだ年の若そうな小豆色をした長い髪の団員さんが、開かれたドアからヒョッコリと顔を覗かせた。
「失礼しまーす。一颯さん、そこの飛輪学生二人、保護責任者がお迎えに来たそうなんで釈放ですって。事情聴取は副団長がするから、二人を職員食堂まで連れて来て下さいとの事です」
「了解した」
「「しゃべった!!」」
釈放って言葉も気になったが、蛍火が話しかけてもうんともすんとも言わなかった人が口を開いたことに驚いた。
つまり意図的に無視してたって事か!?わたし達と会話してちゃ駄目とか言われてたのかな?事情聴取は副団長が取るって言うし?
わたしと蛍火が声をあげて驚いたのを見て、扉の向こうから覗いていた小豆色の髪の団員さんが「ん?」と不思議そうに首を傾げながら取調室の中へと入って来ると、強面団員さんの肩に手を置き、意味ありげにニヤリと笑う。
「一颯さん、相手が可愛い女の子だからって、照れて聴取に手を抜いちゃー駄目じゃないですかー」
「……そんな事はしてない」
するもしないも、その人一言も話してないからね!ここで扉の番人と化してただけだよ?
「女性が苦手なのは分かりますけどー、克服して行かなきゃ駄目っしょー!ただでさえ遅れている婚期がもっと遠のきますよー?」
「……余計な世話だ」
小豆色の髪の団員さんの軽口に、不快そうに眉毛を寄せた強面の団員さんはそう言って、肩に置かれた手を払い落とすと、座っていた椅子から立ち上がり、わたし達に向かって重々しく「着いて来い」と一言それだけ言うと、開きっぱなしになっているドアから取調室を出て行った。
「さっ!君たちも早く行った!行った!」
「え?は、はい!」
「うむ!」
何故だか、今度は取調室に置いて行かれた方の小豆色の髪の団員さんに急かされる形で、わたしと蛍火は取調室を出て、廊下の向こう側に見えた強面の団員さんの大きな背中を慌てて追いかけて行く事となったのだった。
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