ティンパニ
嫌いだったティンパニ。
音がズレる鍵盤。
お前の音だと知らしめられても、
合わせる事が出来なかった鍵盤。
鍵盤から逃げ出した僕。
与えられたティンパニ。
逃げ出した先のティンパニ。
一人で敲いたティンパニ。
マメが潰れるまで握ったマレット。
憧れの鍵盤、侮蔑なティンパニ。
弾けるものなら弾きたかったさ。
いつの間にか、
鍵盤に触れても指が動かなかった。
キーボードだって、レジっだって。
あの時、僕が逃げ出したから。
嫌いだったティンパニ。
嫌いだった僕。
でも、
君を鎮めるために触れるのは好きだった。
掌に、
響く君は心地よかった。
僕に、
君は優しかった。
嫌いだった四才の僕は、
自分よりも大きな物を響かせていた。
嫌いだったティンパニ、
君のおかげで僕は僕を好きになれたよ。
小さな掌を受け止めて、
君は僕を否定しなかった。
嫌いだったティンパニ、
いつか鍵盤も僕を受け入れてくれるかな。