1話前編 崩壊の兆し
初めまして!神原綾人と申します!
今回が初投稿の作品になります。
自分は展開の読めない冒険や、とんでもない絶望からの大逆転が好きなので自分が読みたいなと思えるような冒険モノを書くことにしました!
投稿頻度は決めていませんが、文がまとまり次第なるべく早く投稿するつもりなのでよろしくお願いします!!
「この濃厚なトマトがガツンと効いてるスープ……! のどごしバッチリのモチモチ麺……! なあ、オッチャン! もしかして今日はレシピ変えたのか!?
いつもの5倍は美味しいぞ!!」
少年は一心不乱にラーメンを貪り食う。
「そうだろそうだろォ! 今日のは過去1の出来って言ってもいいくらいだぜ!!」
50歳はゆうに超えているであろう巨漢は満足げに腕を組みながら笑っている。
「でもなぁ、いつもより量が少ないんじゃないか? まったく、そんなことに気を回せないからいつまで経ってもこんなちっこい店なんだろ。」
「そうかそうか。じゃあ、今日こそはツケもまとめて30日分のお代、払ってくれるんだな?」
男は満面の笑みで少年の肩を叩いた。
「またそれかよ! 別にいいだろ? 毎日毎日味見に来てるってのに、そんなだから俺しか食べにこないんだよ。」
「お前の食い方が汚ねぇから客が寄り付かないんじゃねぇか! いっつもいっつも店内グチャグチャになるまで食い荒らしやがって、いっつも掃除してんのは俺なんだぞ! あっ、お客人いらっしゃ……
って、また逃げられたじゃねぇか!!」
「ごちそうさん! オッチャン、また来るぜ!!」
少年が店を出ようと扉に手をかけると後ろからガシッと肩を掴まれた。
「おい、ちょいと待てや。」
「ん? なんだよオッチャン、今日はもう腹一杯なんだ。新作なら明日に頼むぜ!」
「お代だ! お代!! 30日分キッチリと払いやがれ!!」
「ったく、仕方ねぇなぁ。一食が王銀貨5枚だから、30日分で……おっ、丁度35枚じゃん! ほらよ、オッチャン。また来るぜ!!」
「こんの……大馬鹿野郎がぁぁぁぁ!! どういう計算したらその答えにたどり着くんだ!!」
「何言ってんだ、オッチャン。どう考えても王銀貨35枚だろ。」
「いいや、王金貨10枚と王銀貨5枚だ。」
「はぁっ!? おい、オッチャンボッタくる気だろ! ダマそうったってそうはいかねぇぞ……!」
その時、店の扉が突然開いた。
「リューガ、またここに居たのか……みんなをどれだけ待たせれば気が済むんだ。」
「おおっ、カイリ!! なぁ、助けてくれよ、オッチャンが俺をボッタくろうとしてくんだよ。」
「おう?カイリじゃねぇか。丁度よかった、こいつのツケ全部払わせてくれねぇか?」
「リューガ、またかお前は……先月は近所のラーメン屋で食い荒らして大変なことになったってのに、また代金払ってなかったのか。」
「仕方ないだろ、忘れてたんだから。」
「まったく、店長さん。今日は僕が払うのでいくらか教えて貰っていいですか?」
「王金貨10枚と王銀貨5枚だ。」
「…………え?」
「王金貨10枚と王銀貨5枚だ。」
カイリはリューガに近寄り耳元で何やら話している。
「いやぁ、ありがたいぜ!これで来週からも仕入れができ」
「逃げろーー!!」
「お、おい!逃げんじゃねぇー!!」
「おっ、やっときたか。結構遅かったね。で、また逃げて来たんだ。今度はどのくらい食い荒らしたの?」
「今回はそんなに高くないぞ。王銀貨35枚。」
「で、カイリ。実際のところは?」
「王金貨10枚と王銀貨5枚だよ。」
「そりゃすごいなぁ……歴代1位じゃないか。」
「すごいだろ? でも、俺はまだまだやれたんだぜ?」
「何で誇らしげなんだよ! コハクもあんまりリューガが喜ぶような事言わないでくれよ。」
「ごめんごめん。とはいえ、これで後はミコトだけか。もうそろそろ着く頃だけど…」
コハクはボーっとした表情で空を見上げながら呟いた。
「遅れてごめんなさい! ちょっと用事があって、片付けてたら遅くなっちゃった!」
街の方から華奢な女の子が息を切らしてこちらへ向かって来る。
「全然、俺たちもさっき来たところだぜ。なぁなぁ聞いてくれよ! ラーメン屋のオッチャンがものすごくケチでさ、今回は王銀貨35枚分しか食べれなかったんだよ。」
「またお金を払わないで食べてたの?! そんなことしちゃダメっていつも言ってるのに…」
「ミコト、こいつには何を言っても聞きやしないよ。僕が何百回おんなじ事を言ったと思ってるんだ?」
疲れたような顔のカイリを見て、ミコトはため息を吐きながら、
「もう…仕方ないなぁ。後で私が払いに行って来るよ。」
「いいんだよ、食べてる途中に隣でガミガミ言ってくるオッチャンに払う金なんかねぇよ! むしろこっちか貰いたいくらいだ!」
「話も終わったようだしそろそろ行こうか。」
「そうだな。早くさっきの続きもしたいし、早く向かおうぜ!」
話を無理やり終わらされて少し不機嫌になるリューガを傍目に4人は歩き出した。
ここは街から遠く離れた丘の上
古ぼけた石柱が7つ立ち並び、その中央には他の石柱より少しだけ大きな石柱がまるで『王』かのように雄々しく存在している。
「父さん、母さん、今日食べたラーメンがさ、すげーおいしかったんだぜ。オッチャンの嫌味がなかったらもっとおいしいのにな。あのオッチャン毎日毎日メシ食べてるってのに隣でガミガミ言ってくるんだぜ。せっかくおいしいのに勿体無いよな。」
石柱に語りかけるリューガを傍目に3人は少し離れた場所で立ち尽くしている。
「もう、1年も経つんだな。リューガも当時に比べればかなり落ち着いたよな。」
「街のみんなもリューガのことを気にかけてくれるからだね。」
空を見上げるコハクは静かに空に手をかざす。
「1年前の戦争は特にひどかったからな。総国民の3割は亡くなった悲惨なものだったからな。」
「そうだな。でも、復興はかなり進んでいるからもうじき国は1年前のように活気を取り戻すだろうな。」
リューガ達の住む王江戸の国では大樹の所有権を奪うべく、オーパーツ戦争終戦後も幾度となく好戦国に襲われた。
とはいえ、大樹の加護を持つ神子と神子の授かるお告げのおかげで危機を乗り越えてきた。
しかし、1年前世界でもトップクラスの戦力を持つ東の国アガリアが戦争を仕掛けてきた。
結果としてはアガリアと停戦協定を結ぶことになったものの、両国の戦死者は想像を絶するものだった。
王江戸の国では今でも復興作業が続いており、先代王ガエンは負傷により王座を退き、現在の王はその息子ガロウが即位した。
ガロウ王はひ弱で争いを好まない性格だが非常に賢く、国がここまで復興できたのは彼の力が大きい。
人柄もよく、戦好きの先代王より支持されているといえる。
リューガ達もガロウ王とは面識があり、たまに城に招待されたりもした。
「みんな、そろそろ帰ろうぜ。」
「もういいのか? 明日は選抜試験だから来れないと思うぞ。」
「ああ、大丈夫だ。だからコハク、今から午前の試合の続きをしようぜ!!」
「お前は、あんなにコハクに叩きのめされたのにまだ戦うってのか…」
「良いよ。守護者試験に受かりたいなら僕くらい倒せなきゃ話にならないからね。」
「じゃあ私とカイリくんはラーメン屋さんにお代を払いに行って来るね。ほらカイリくん、日が暮れるまでに行こう!」
「ちょっと店長さんとは顔を合わせづらいから行きたくな……あぁっ!」
ミコトに引きづられながらカイリが何か言っていたようだが、2人にはもう聞こえていない。
「次はさっきみたいにならないでね、リューガ。」
「ああ。今回は本気で行くぞ。」
両者が向かい合い1分程経った。
風が互いの髪をなびかせ、肌を撫でるように過ぎ去る。
リューガはコハクの瞬きの瞬間を逃さずコハクの懐に入り込む。
拳がコハクの顎に直撃する瞬間、視界が反転した。
「足元が疎かだね。狙ってくださいって言ってるようなもんだよ。」
「ぐぅぅっ!!」
地面に叩きつけられ、衝撃が身体に響く。
立ち上がろうと地面に手を出そうとするが、手はすでに抑えられていた。
「僕の勝ち。」
「ぐぬぅぅ……」
「さてと、そろそろ日も暮れそうだし僕らも帰ろうか……ッッ!!」
何かが爆発するような音と共に2人の意識はそこで途絶えた。
感想や修正点などを教えてくださるととても嬉しいです!
後編は少しダークになりますが、楽しんで頂けると嬉しいです!!