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実践的聖母さま!  作者: 逆波


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いつの世も正論には勝てない

 物事というのはいつも想定を超えていく。

 長耳族の村へと戻り、再び代表の家で事の次第を話し合う。

 盗賊たちの受け入れを長耳族に要請したのだが、別の問題が発覚、露呈することになった。


「お、男だけ? この集落にいるのは男だけだというのか!?」

「その通りです」

「男の人だけ……。あの、ここはいつからこの状態なのですか?」

「大災厄のあとからです。もう二〇〇年くらいになります」

「まぁ……それは大変でしたね」


 二〇〇年。

 さしものサーシャも目を白黒させている。私も頭の整理が追い付かない。

 どうしましょう、という目を向けてくる少女に苦笑いをしながら質問を引き継ぐ。


「一つ、確認させてほしいのだが、各々が認識する一年について教えてほしい。二人の年齢も一緒にね」

「一年ですか?」


 もしかしたら一年、という認識にズレがあるのかもしれないと聞いてみる。

 異文化ゆえに違いがあってもおかしくない。


「えっと……雪の季節、花の季節、緑の季節、実りの季節、四つ巡ったら一年です。私は花の季節に生まれたと聞いています。今は一四歳です」

「我らは八つ季節が巡ったら一年です。サーシャさんのおっしゃる季節もありますが、雪と花の季節の間に芽吹き、花と緑の間に雨、緑と実りの間に白露、実りと雪の間に霜があります。そして、私は二七一歳です」

「に、二七一!?」


 平成の世では考えられない長寿ということになる。

 世界記録どころか神話や伝説級といえよう。

 しかし、彼らの言い分が嘘偽りない場合、二〇〇年間女性と接していないことになる。

彼らは二〇〇歳を超えて、女性経験なし。この村そのものが童貞の巣窟ということになる。

 そう思った次の瞬間、


「っ!?」


 総毛立つほどの寒気に肩を抱いていた。

 私ではない、この体が怖がっている、そんな感じがある。

 しかし、同時にある考えが頭を過った。

 彼らの寿命を私も得ることができれば、日本に戻っても長く表舞台に立つことができる。そうなれば様々なことが可能となるだろう。


「!」

「どうかなさいましたか?」

「聖母さま?」

「い、いや、何でもない」


 情報量が多すぎて、いや長寿という可能性に浮かれすぎて大事なことを忘れていた。

 寿命もいいが、重要なのは日本に戻ることだ。

 長耳族が使った魔法は、私の求める結果とならなかった。

 しかし、魔法はたしかに存在し、私が元の場所へ戻れる可能性を示したことになる。

 もっと強力な魔法と、それらを操る伝説の存在を探さねばならず、使えるものは多いに越したことはない。避難民たちも使い、戻るための手立てとしたい。

 ちらり、と後ろを見ると、そこには長耳族の青年ウォルナットと盗賊首領格であったマトカが肩を寄せ合っている。


「さっきまで名前も知らなかったのに。アタシのこと、何も知らないのに、責任取っていいのかい?」

「そんなの関係ありません! これから知っていけばいいんです!」

「男なんて口だけなもんさ。いままでだってそうだった」

「僕は違います! マトカさんを幸せにしてみせます!」


 聞いているこちらが恥ずかしくなってくる。

 しかしまぁ、なんというか、長く生きても男は男、女の前だと子供っぽくなってしまう。

 環境が変わらないということも拍車をかけていることだろう。

 まぁ、ここが男だけ、童貞だけなら同化政策は成功も同然といえよう。

 身の安全は確保されたといっていい。だとしたら、確かめねばならないことがある。


「ヤヤン殿、今一度魔法について伺いたい」

「え、ええ、私にわかる範囲でよければ……」

「先頃使っていただいた魔法、あれは“迷子”と言っておられましたな。あとは姿隠し。この二つ以外で貴殿らは魔法を使えますかな?」

「私たちが使えるものは、残念ながら二つしかありません。大災厄までは多くの魔法があったと聞きましたが……」

「失われた、と?」

「いいえ、切り捨てたのです」

「き、切り捨てた!?」


 目の前が真っ暗になる。

 遠のく意識を何とかつなぎ止め、頬を叩いた。

 ここで諦めたらすべてが水の泡、これまでの苦労がないものになってしまう。

 私がいなくなったら、野党は無論のこと同じ党内からも嘲笑されることだろう。

 いなくなってよかった、などと嘯かれるに違いない。

 それだけは許せない。私の輝かしいまでの未来はこれから始まるのだ!


「き、切り捨てたというのなら元々は存在していた、そういうことになるのかね?」

「ええ、大災厄以前は多くの魔法がありました。同胞たちも使っていたはずです」

「それだ! 彼らは今、どこにいるのかね? 会う方法はないのか?」


 その同胞とやらを見つければ、可能性は残されている。

 しかし、


「聖母さま、ちょっと待ってください」


 サーシャが止めに入る。

 今が肝心なところなのに邪魔をしないでほしい。


「サーシャ君、私は今大事な質問をしているところなんだ。少し黙っていてくれないか?」

「ダメです!」


 大きな声に驚く。


「聖母さまはお約束なさいました! 戻ったら彼らの力になると! それなのにご自分の要求ばかりなんていけません!」

「い、いや、それはそうなのだが……私の望みはかなえられなかった訳だし、その……」

「聖母さまの望みが叶ったかどうかは長耳族の方々には関係ありません! 彼らは聖母さまに協力してくださった。聖母さまは戻ったら力になると約束した。約束を違えてはなりません。それでは聖母さまの威光を自ら貶めるだけです!」

「ウ、ウン、ソウダネ」

「今は彼らの悩みを聞く番です! ご自身の要求はそれからにしてください!」

「ワ、ワカリマシタ」


 あまりの剣幕と正当な主張に反論ができない。


「ヤヤンさん、ごめんなさい。続きをどうぞ」

「よ、よろしいのですか?」

「勿論です。聖母さまは嘘をおっしゃいません! そうですよね?」

「……ハイ」


 この子、ちょっと怖い。


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