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3/19

こんなのやっぱり外れスキルだって

《フレーム回避》の習得は困難を極めた。


 あの謎の声から、初めてスキルの内容を聞いたのだが――これがひどい。


「ガァァァァァァァ!!」

「ぐおっ!」


 フォレストタートルの頭突きに、俺は呆気なく激突。

 痛みはないが、これで十回目の失敗だ。


「くそ……回避行動をすれば、0.0015秒の間は相手の攻撃をすり抜ける……だって?」


 そんなんできるわけないだろ。


 厳密には、回避行動を取って0.001秒後に無敵時間ができるのだとか。

 この後の0.0015秒間だけ、実質的に無敵になるらしい。


「……って、難しすぎるだろ!」


 なんだよ《フレーム回避》って。

 できるわけないだろそんなの。

 期待した俺が馬鹿だった。


 外れスキルは結局外れスキルのまま、はっきりわかんだね。


「なにを仰いますか。少しずつできていますよ」

「ほんとかよ……」


 謎の声は定期的にそう言って励ましてくれるが、実感が全然沸かない。


 ……というか、使いこなしたところで本当に強いのかこれ?


 ナードの《剣聖》スキルのほうがよっぽど強い気がするんだが。


「ふふ……あなたは謙虚ですね。昔とまったく変わっていません」


「謙虚じゃねえよ! ガチモンの外れスキルじゃねえかこんなの!」


 ああ……やっぱり人生やり直したほうが早いのだろうか。


 ナードなんか、ろくな修行しなくても最初から強かったのにな。これが外れスキル所持者の宿命ってやつか。


 仕方ない。

 無能は無能なりに、できることをやらねば。


「ふぅ……」


 俺は大きく息を吐くと、改めてフォレストトータルと対峙する。


 ここまでの修行で、なんとなくコツっぽいものは掴めてきた。


 相手の攻撃が始まる前から回避行動するのでは早い。


 なにせ無敵時間は0.001秒後に訪れるわけだからな。

 本能的にすぐさま避けたくなってしまうが、それでは《フレーム回避》は成功しないわけだ。


 その恐怖心の一切をかなぐり捨てて、ギリギリのところで回避する。


 それが重要だ。

 だから戦いの最中に雑念があってはいけない。


 あらゆる迷いを打ち消し、この戦いのすべてに集中しなければ――《フレーム回避》は発動できないわけだ。


「…………」


 父アルナスは、これを《無我の境地》と呼んでいた。


 これを習得できれば剣士として一流になれると聞いて、何度も訓練に励んだことがある。まあ、結局できるわけなかったんだけどな。


 ――昔のことはいい。

 いまは、いまの戦いに集中しなくては……


「おや……」


 なんだろう。

 心なしか謎の声が驚いていた気がするが、構っていられない。


 ここで雑念を抱くわけにはいかないからな。


「グォォォォォォォォォオオオ!!」


 雄叫びをあげ、フォレストタートルが突進してくる。


「…………」


 フォレストトータルは巨大だ。

 だからどうしても恐怖心を抱いてしまうが、それは捨てる。


 目を閉じ、あいつの動きすべてを観察する。


 ――いま!

 俺はかっと目を見開き、フォレストタートルの方向へ向けて回避する。


「ガッ!?」


 大きく目を見開くフォレストタートル。


 無理もない。

 俺がフォレストタートルの攻撃をすり抜け、一瞬にして奴の背後に回り込んだからだ。


「はぁ……はぁ……できたか」


 11回目にしてようやく掴めてきたみたいだ。


 たかが一回スキルを使ってこんなに疲れるなんて……改めて外れスキル所持者であることを痛感させられたが。


 しかしこれにて、たしかな一歩を踏み出すことはできたようだな。


「な……なんと……」

 そしてなぜか、天から聞こえる謎の声が、驚きの色を帯びていた。

「もう《すり抜けバグ》を習得しつつあるなんて……玄人が数年単位でやっと身に着けるテクニックですよ……?」


「す、数年……?」


 そんなわけないだろ。

 きっとあれだな。

 外れスキル所持者たる俺を、こうやって慰めてくれてるんだろうな。


「ははは。あんたって優しいんだな。まだまだ先は長いが……少しだけ元気でたよ」


「いえ……慰めたわけではないんですが……」


「え?」


「……駄目ですね。《そういうところ》まで昔と同じとは」


「…………?」


 なんのことかわからないが、これ以上話しているわけにはいかなそうだ。


 フォレストタートルが、鈍重ながらも距離を詰めてくる。


 あいつに攻撃されたところで痛くはないんだが、吹き飛ばされるのはあまり良い気持ちじゃない。できれば早急に片をつけたいところだ。


「あいつに《勝つ》には……あと二回、《フレーム回避》を成功させればいいんだったな」


 ほんとに地道すぎる修行法である。


 弟のナードなら、一瞬であいつを倒せるだけの実力を身につけるんだろうな。

 しかもこれからベルモンド学園に通うはずだし……俺とは差が開く一方だろう。


 でもまあ……仕方ないか。

 これも外れスキル所持者の宿命。

 俺は俺で、少しずつ実力を積み重ねていこう。


「さて……それじゃ、いっちょ頑張るか!」


 俺は気合を入れ直し、改めて《フレーム回避》の修行に集中するのだった。


7話目から無双が始まります!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1/60秒かと思ったら、1/600秒位になってそうですが、フレーム回避だいぶ厳しすぎな気が。。。
[良い点] 展開の速さ [気になる点] PCじゃないんだから0.001秒って人間に知覚できるんか? 神経の伝達速度より速くね? 11回目で成功してるくらいの能力があるなら、設定で有った運動音痴って…
[一言] 後書きにタップとありますがPCユーザーには違和感があります。押して、タップorクリックして、などの表現をご検討頂きたくお願い申し上げます。
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