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なんだこの規格外の修行は

「ひそひそ……」

「見て、あいつが例の……」

「アルナス家から追い出されたのか……?」


 貴族アルナス家から試験最下位の者が出た――


 予想通りというべきか……このことは、大きなニュースになっているらしい。


 そりゃそうだよな。

 落ち目にあるとはいえ、アルナス家は有力な貴族。

 その子息が試験最下位の成績を残したとなれば、良い話のネタになるだろう。


 ほとんどの場合、能力は遺伝する。魔法師の子は魔法の才に優れているはずだし、剣士の子は剣の才に優れている。


 まれにその《遺伝》から外れる者もいるが、そういう場合でも別の分野でなにかしらの才能を見出されているんだよな。


 でも、俺の場合は文字通りなにもない。


 正真正銘の無能力者だ。

 このことが、噂をする人間にとっては面白い話題になるんだろうな。


「ははは、見ろよあの振る舞い。完全に負け犬だな」

「ぎゃはははは、聞こえちまうだろ。やめてやれ」


 ……うん。


 王都にいると、それだけで精神衛生上よくなさそうだ。

 どこでもいいから、とりあえず違う場所に行こう。

 そう判断した俺は、ひとまず王都を出るのだった。





「なんだ……ここは……?」


 数十分後。

 なんとか王都から脱出した俺は、思わぬ光景に目を見開いていた。


 ――これは、森か……?


 一面に背の高い木が天を貫いており、空を見上げても木々のてっぺんが見えない。しかも森全体がうっすらと翡翠色に輝いていて、思いもよらず幻想的な雰囲気を放っている。


 だが、おかしい。


「こんなところに……森なんかあったっけか……?」


 俺の記憶が正しければ、王都の外壁を抜けた後は、ひたすらだだっ広い草原が広がっているはず。近隣に森もあるにはあるが、それでも歩いて一時間はかかるはずだ。


 こんな、王都のすぐ目の前に森なんかあろうはずもない。


「どういう……ことだ……?」


 王都の連中は誰も見えていないのだろうか。

 こんな不可解な出来事、騒ぎになってもおかしくないはずなのに。


「どうするか……? 冒険者にでも報告したほうがいいか……?」


 しかし、いまの王都では俺の悪評が広まっている。

 こんなことを告げたところで、まともに取り合ってもらえるかどうか――




「――お入りください、イスラ・アルナス。あなたをお待ちしていたのですよ」





「え……」


 なんだこの声は。


 女性の声に聞こえるが、俺に女の子の知り合いはいない。

 無能力者だと知って、みんな逃げていったからな。


 ……じゃあ、なんで俺の名前を知ってる?


「迷うお気持ちはわかります。しかし、あなたの《すり抜けバグ》はそのまま・・・・では強くなれません。使い方がわからなければ、宝の持ち腐れです」


「な……《フレーム回避》のことを知っているのか!?」


「ええ。あなたに会えるときを待っていました。――来てください、そのスキルの神髄を教えて差し上げます」


「…………」


 正直、こんなんじゃまったく信用できない。

 見たこともない森林があって、聞いたことのない声に呼ばれて……


 怪しさ満点の状況だ。


 だが――


「わかった。森のなかに行けばいいんだな?」


「……話が早くて助かります。どうかお願いします、イスラ様・・・・


「…………」


 今度は様付けか。

 ますます怪しいな。


 だけど――それでも構わない。


 どうせアルナス家から追放された身。行く当ても特にないし、最悪死んだって構わない。生きる意味は――とうに失ったからな。


 俺はごくりと唾を呑むと、怪しげな森に足を踏み入れるのだった。



    ★


「来てくださいましたね……」


 ある程度森のなかを進んだところで、さっきの女性の声がした。


 まわりを見渡しても、誰もいないんだけどな。

 いったいどうなっているんだか。


「……で、俺はどうすればいいんだ? 《すり抜けバグ》のことを教えてくれるんだよな」


「…………ええ。しかし……この状況をすんなり受け入れていらっしゃいますね?」


「はは。なにも持ってない俺なんかを嵌めたって、あんたにメリットがあるとは思えないからな。少なくとも罠ではない――それくらいはわかってるさ」


 まあ、百歩譲って罠だったとしても、もう構わない。


 死んでもいいんだよ。

 俺なんか。


「……驚きました。そのご年齢にして、数千年前にも劣らぬ風格を身につけていらっしゃるとは」


「は……?」


 ちょっと待て。

 なんだよ数千年前って。


 不思議に思ったが、しかしそそれを訊ねる暇はなかった。


 なぜならば、突如として俺の目前に見るも巨大な魔物が出現したからだ。


「あ……あれは……」


 Bランクの魔物……フォレストタートル。


 巨大な亀の姿をしており、甲羅の部分には雑草と小さな木々が生えている。動き自体はノロマだが、見ての通り防御力に優れた魔物。その厄介さから、中級の冒険者でなければ敵わない相手とされている。 


 Bランク指定されているのも、そのあたりが原因である。


「おいおいおい……」


 思わず後退してしまう俺。


 あれに勝てってのか。

 無理に決まってるだろ。弟のナードでも勝てないだろう相手に、俺に勝てるわけが……


「ご心配には及びません。これはあくまで修行。あなたが傷つくことは絶対にありえません」


「え……」


 戸惑っている間にも、フォレストタートルは体当たりを敢行してきた。


 その動きそのものは鈍重。

 数回避けることには成功したが――それでも元々の戦闘力がかけ離れているからな。フォレストタートルの頭突きに、俺はとうとう直撃してしまう。


「ぬおおおおおおおおっ!」


 あまりの衝撃に、俺は大きく後方に吹き飛んだ。


 本来ならば戦ってはいけないはずの相手。そんな強敵の攻撃を喰らい、死をも覚悟したのだが――


「あれ……」


 片膝で地面に着地した俺は、思わず目を見開いた。


 ――痛くない……?

 慌てて自身を見下ろすと、やはり傷ひとつ負っていない。さらに言うならば、地面に着地した際の痛みさえなかった。


「どうなってるんだ……?」


「――言ったでしょう。これはあなたに《フレーム回避》を習得してもらうための修行です。あなたにダメージはいっさい入りません。《フレーム回避》に三回成功した場合、フォレストタートルは自然に消滅するでしょう」


「おいおいおい…………」


 なにがどうなってんだよ。


 やばすぎだろ。

 ありえない場所に森をつくったり、ダメージを与えないようにしたり……この力、まるで……


「あんた……まさか神とでも言うつもりじゃあるまいな」


「いいえ。あなたには敵いませんよ、イスラ様」


 なんだ。

 さっきから意味深なことを言ってくるな。


「ふふ……ははは……」


 思わず含み笑いを発してしまう俺。


 面白い。

 俺の人生、もう終わったと思っていたが――とんだ展開だな。


 この《フレーム回避》が強いとは到底思えないが……死ぬ前に少しくらいは楽しめるかもな。


 この修行……全力で乗るとしよう。


 俺は気合いを入れ直し、フォレストタートルと向かい合うのだった


7話目から無双が始まります!


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