アルナス家の崩壊②
「これはこれは! お待ちしておりましたぞミルア王女殿下!!」
アルナス家。
その玄関にて。
護衛とともに屋敷に訪れたミルア第三王女を、ラルクが満面の笑みとともに出迎えた。
ナードがびっくりしてしまうほど、すさまじく取り繕われた笑顔だった。
「これはラルク・アルナス閣下。突然のご無礼、どうかお許しください」
「いえいえ! 王女殿下みずからお越しくださって、光栄の極みでございます!」
媚を売りまくるラルクを尻目に、ナードはミルアを頭のてっぺんから足のつま先まで事細かに観察していた。
可愛い。
それはもうめちゃくちゃ可愛い。
さっきのユキナもいいが……こっちは王女様だからな。
そう思うと、ナードの気持ちも知らず知らずのうちに高まっていってしまうのだった。
「こらナード。おまえも挨拶せんか」
ラルクに肘でつつかれ、ナードはようやく我に返る。
「失礼しました。ナード・アルナスと申します。先日、ベルモンド学園を成績最上位で卒業しまして……ええ、名門校といえど他の連中など相手になりませんでしたよ、ハイ。適当にあしらってるだけで一位になれましたわ、ハイ」
「は、はぁ……そうなんですね。さすがはアルナス家のご子息です」
「でしょう! 私にかかれば、どんな魔物もイチコロですよ、あっはっは!」
「そ、そうなんですね……」
引きつった笑顔で頷くミルア。
ナードとしては、もう少しびっくりしてほしかったところだが……自分のあまりにすごい功績に驚いているのだと結論づけた。
「さあ、こんなところで立ち話もなんでしょう。ささ、どうぞなかに」
微妙な空気を察したのか、父ラルクが話題を切り替えた。
「あ、いえ。そこまでお手間はかけません。すぐに済みます」
「すぐに済む……」
ラルクがすこしだけ落胆した様子を見せたが、すぐに態度を戻したのは年の功というやつだろうか。
「承知しました。であれば、どのようなご用件でしょう?」
「イスラさんはここに来ていませんか? 彼の目撃情報が何件かあるのですが……」
「イスラ……?」
首をかしげる父ラルク。
誰のことかわかりかねている顔だった。
「あのポンコツのことですよ、父上」
それでもラルクは思い出せなかったようだが、数秒後には
「あー! あのバカ息子のことですな!」
と手を叩いた。
「いましたな、そんな息子も。ええ、こちらには帰っておりませんが……どうされましたか?」
「いえ。探しているのですよ、イスラさんを」
「え…………!?」
素っ頓狂な声を発したのはナードだった。
イスラ……
また、あいつなのか。
「お、お言葉ですが、王女殿下」
いてもたってもいられず、ナードはミルアに物申した。
「あいつはすでに行方をくらましています。しかも外れスキル野郎のポンコツですから……絶対、十中八九、必ずどっかで死んでますよ」
その瞬間。
メルアがすこしだけ眉間に皺を寄せたが――数秒後には元の表情に戻っていた。
「ええ。私も正直この線は薄いと思っていますが、念のためイスラさんを探したいと思います。……もし彼と会えたら、私にまで教えていただけますか?」
「え、ええ!! もちろんです!」
ラルクが胸を張って答える。
――こいつは本当、アルナス家の保身しか考えてないな……
と、思わず呆れてしまうナードだった。
「必ずや見つけ出して、捕まえてみせましょう! お任せくださいませ!」
「いえ、そんな物騒な話ではないんですが……」
ミルアも呆れ気味に息をついた。
「なんにせよ、彼を見かけたら教えてください。お願いします」
そう言って立ち去っていくミルアに。
「え、俺の話は……?」
せっかく豪勢な服に着替えたナードが、ぽつりと呟くのだった。
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