みんな、優しすぎる
「おい、あいつ本当にアーレス様に挑むのかよ……」
「やめたほうがいいってのに……」
試験会場にて。
俺はBランク冒険者――名をアーレスというらしい――と向かい合っていた。
そしてどういうわけか、冒険者たちはこの試験に興味を持ったらしいな。
俺たちを囲むようにして、三十名ほどの冒険者が見物にきている。
正直目ざわりではあるんだが……まあ、関係ない。
どんな状況においても雑念を捨てる。
いままでもやってきたことだからな。
「イスラ君。武器はいいのかい?」
距離を置いて構えるアーレスが、ふとそう聞いてきた。
「さすがに試験時くらいは武器を貸すよ。剣でも細剣でも……なんでもいい。得意な武器を言いたまえ」
なるほど。
俺ごときにここまで気にかけてくれるなんて……アーレスという男もかなり優しい人間とみた。
けど……武器はいらない。
下手に慣れない武器を使ってしまうと、《フレーム攻撃》が失敗してしまう可能性があるからな。指一本で攻撃するのが一番安定するんだ。
「気にかけてくださり、ありがとうございます。でも……俺は武器を使えません。このままいかせてください」
「武器を……使えない……?」
「ええ。この3年間、剣を握ったことすらありません。俺にはその才能がありませんから」
「そ、そうか……大変だったんだな……」
なんだろう。さっきよりも優しい目で見られてるんだが。
「ぐず……」
「頑張るねぇ……剣が使えなくても冒険者になりたいってか……」
「ナードより頑張り屋なんじゃないか?」
どういうわけか、他の冒険者たちも同情の眼差しで俺を見つめていた。
「ふぅ……しかし、イスラ君。試験官を買ってでたからには、私は手を抜くことができない。わかってるね?」
「ええ……わかっています。厳しくお願いします」
下手に温情をかけられても、後で苦労するだけだ。
最悪、依頼中に死んでしまう可能性だってあるわけだし。
「俺も本気でいきます。アーレスさんもどうか……よろしくお願いします!!」
「ああ……もちろんさ!!」
アーレスは快活な返事を響かせると、数秒だけ目を閉じ……
そして猛然とこちらへ突進してきた。
なるほど……向こうから先にしかけてくるとは……
やはり彼自身が言っていたように、温情をかけるつもりはないらしい。
ならば俺も、細心の注意を払って対処を……
「……って、あれ?」
遅い。
なんだあの動きは。
本気を出すと言っといて、やっぱり手を抜いているんじゃないか。
あの程度のスピードなら、《フレーム回避》は充分使える。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
大きな雄叫びをあげて、アーレスが剣を横一文字に振り払う。
もちろん、その動きは事前に予測済み。
視線の動き、わずかな一挙手一投足から、敵の動きを見極めるのには慣れている。
なにせ、これに3年も費やしたわけだからな。
あとは《フレーム回避》の無敵時間に回避行動をすれば……
サッ――と。
アーレスの剣が俺に触れるより一瞬早く、俺は《フレーム回避》を発動。アーレスのいる方向にあえてローリングをすることで、敵の身体をすり抜け、一瞬にして背後に回り込むことができる。
「…………え?」
アーレスがぎょっとしたように目を見開いた。
やっぱり、優しいな。
こんなにわかりやすい隙をつくってくれるなんて。
ならば俺も……この優しさを無駄にしない!
スキル発動。《フレーム攻撃》。
「ぬおおおおおおおおおっ!!」
俺の人差し指に背中を突かれたアーレスが、でかい声をあげて吹き飛んでいった。
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