やっぱりバレてしまうか
さて。
メルアをなんとか撒いた俺は、なんとか王都に辿り着いた。
もともと《神秘の森》は王都の近くにあったので、そう時間もかかることはなかった。
のだが。
「ここが、王都……?」
3年ぶりに訪れた王都は、すこし記憶と異なっていた。
昔はみんな活気に溢れていたのに……今はどことなく雰囲気が暗い。風景はそこまで変わってないものの、元気が失われたというか……
「3年の間に……なにかあったのか……?」
そんな疑問を抱きつつ、冒険者ギルドの建物を発見。
3年前と同じ場所にあったので、ちょっとホッとした。
「こんにちはー……」
かすれる声を発しながら、俺はおずおずとギルド内に足を踏み入れる。
たったそれだけで、周囲から品定めするような視線が突き刺さってきた。
――さすがに緊張するな……
実はギルドに入ったのは今日が初めてだ。
剣の修行はアルナス家の屋敷だけで事足りたからな。
「こんにちは! なんの御用でしょうか?」
受付カウンターに行くと、担当の女性がはにかみながら挨拶してくれた。
おお……めっちゃ可愛いな。
情けない話だが、綺麗な少女を見たことで少しだけ心が和らいだ。
「えっと……冒険者登録をしたいんだが」
「冒険者登録ですね? 承知しました! 簡単な試験がありますが、よろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
聞くところによると、難度としてはそこまで高くないという。
誰でもなれるわけではないが――まあ、最低限の戦力があればいいらしい。
「ありがとうございます。それではこちらの書類をご記入いただけますか?」
「わかりました」
差し出された紙には、名前や年齢、扱う武器など……
簡単なプロフィールを記載する欄があった。
だが、ここでひとつ問題が発生。
「すみません、武器持ってないんですけど、いいですか?」
「へ……? どういうことですか?」
「素手で戦ってるんです。素手で」
「…………え、ええ。大丈夫ですよ。試験を受けることはできるでしょう」
明らかに引き気味の受付嬢。
まあ……仕方ない。
俺は外れスキル所持者だからな。
こういう反応をされることは、あらかじめわかっていたことだ。
「書き終わりました。これでいいですか?」
「ありがとうございます。さっそく確認させていただきますね」
受付嬢はさっきは引き気味だったが、さすがはプロ。
輝かしい笑顔スマイルを咲かせながら、俺の手渡したプロフィールに目を走らせる。
だが数秒後、その表情が再びくもった。
「え……。イスラ・アルナスって……?」
まあ――やはりそうなるよな。
俺は小さく頭を下げて言った。
「ええ。3年前にアルナス家を追放されたイスラです。冒険者登録させていただきたいと思いまして」
「そんな……でも、そうなると戦闘のスキルもお持ちではないですよね? いいんですか? 王国全体の治安悪化を見据えて、試験は難しくなってますよ?」
「え……」
マジかよ。
さすがにそれは聞いてなかった。
王国全体の治安悪化……やはり俺が引きこもっている間に色々あったみたいだな。
なんか急に心配になってきたぞ。
ただでさえ弱い俺が、難度の上がった試験なんぞ合格できるのか?
「ん?」
「なんだなんだ?」
受付嬢の驚いている様子が気になったのだろう。
さっきまで談笑に興じていた冒険者たちがぞろぞろと集まってきた。
そして俺の正体を知るや、「えっ!?」と大きなざわめきが生じた。
「あいつがアルナス家のご子息……」
「死んだはずでは……?」
「弟のナード様は成績ダントツで卒業されたというが……彼はなんかみずぼらしいな……」
3年経っても俺のことを覚えている人は多いみたいだな。
貴族が無能力者……
こんなことはほとんど前例がないため、衝撃を受けた人も多いんだろう。
「イスラさん。悪いことは言わない。やめておきなさい」
ふいに、中年の冒険者が俺の肩を叩いてきた。
「3年前なら君でも冒険者になれたかもしれないが……今は当時とは様相が違う。冒険者は、昔と比べてかなり危険な職業になってるんだ」
「そう……なんですね……」
そんなに難しくなってるのか。
なんだか急に自信がなくなってきたぞ。
「それでも試験を受けるというなら、私が相手を務めよう。君が冒険者としてやっていけるかどうか……しっかり見極めさせてもらうよ」
「えっ……!?」
「アーレス様が……!?」
「Bランク冒険者が試験なんて、いままで前例あったか……!?」
周囲の冒険者が驚きの声をあげている。
Bランク冒険者と呼ばれているし、かなり評判が良いみたいだな。
かなり不安ではあるが……良い機会だろう。
彼なら、俺でも冒険者として通用するかしっかり見てくれるはず。
「ええ。お願いします。アーレスさん」
俺は深々と頭を下げるのだった。
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