ロワリエ、さらば
そして、四月になり、ロワリエはただの大都会へ、ちまちまと稼ぎの口を守るのに汲々とする人間のごった煮へと回帰していった。
季節の変わり目は変態たちが活発になる。そのせいか三件の任務が僕とアレットに割り当てられたのだけど、この過密なスケジュールを僕らはなんとかこなして見せた。ギャングの抗争も女優のスキャンダルもなかったので、三件の連続殺人なんて目立つことをやらかすわけにはいかず、三人とも事故に見せかけるハメになった。一人目は市電に轢かれて、二人目は釘の腐った窓枠に寄りかかって真っ逆さまに落ち、三人目は銃が暴発して顔が吹き飛んだ。自惚れるわけではないけど、まあ、いい仕事はした。そして、ロワリエ支部長も同じことを感じたらしくて、僕らにご褒美をくれることになった。組織の本拠地へ、あの何もないド田舎の城へしばらく戻っていいという許可をもらったのだ。どうしてそれが褒美になるのか、全く分からない。とはいっても、当時の僕は脳たりんだったから、淡々とそのご褒美を受け取った。アレットも同じだけど、彼女のなかにはもう都市を観察することへの欲望が心に居場所を作っていた。きっと内心は不満だったに違いない。
アブサン中毒の家主に三か月分の家賃を前払いにしておいて、僕らの不在のあいだも部屋を誰かに貸したりしないように言っておいてから、僕とアレットはランルザック通り一一一番地を出発した。僕らとしては一ヶ月くらいで戻る予定だったのだけど、実際は一年、ロワリエを離れることになった。




