5話 修行
5話です。よろしくお願いします。
そしてそれからは午前に体力強化として街の中を走り回り、それから腕立て伏せや腹筋、そして岩を持ち上げるなど筋力強化、最後に素振りを千回行った。
前世の頃は鍛錬といえば素振りしかしてこなかったものだが時代が違うのであろう。2人の兄達も同じメニューをこなし、何故かドラグノフ師もそれに付き合った。
「儂はまだ黒騎士を名乗っている、つまりまだ現役なんじゃ。だから若いもんと同等、いやそれ以上の鍛錬が必要なんじゃよ」
午後は型の稽古、そして兄達も交えての模擬戦に明け暮れた。型の稽古では黒騎士一門の技の数々を惜しげもなく教授された。
数ヶ月が過ぎて最初はぜいぜい言っていた午前中の鍛錬も普通にこなせるようになっていき、ドラグノフ師との模擬戦闘も防戦一方ではなくなってきた。
そして一年が経過する頃ついにドラグノフ師から一本を取ることが出来た。首元に寸止めした木刀がしばらく時間を止め、お互い木刀を仕舞った。
「この儂から一本取るとは。弟子達ですらまだ誰一人成し遂げたことがないというのに……。しかし強いのう、技も今伝えられるものはあらかた伝えた。儂が今の小僧に教えられるものも無くなってきたのう。そうなるとそろそろ戻るとするか。弟子達もあまり放って置くわけにもいかんしな」
次の日、ドラグノフ師は身支度整え、屋敷の門を出ると、家族使用人総出でで見送ることとなった。
「ドラグノフ師、1年もの間息子達を見てくれてありがとうございました」
「お前も鍛えてやりたかったがの、ケイオス」
「いえ、結構です。絶対に嫌です」
ケイオスとドラグノフ師のそんなやりとりが終わると、私たちもお礼をいうことになった。
「師匠。1年間ありがとうございました。いずれ剣聖になれるよう努力いたします」
兄達もそれぞれに感謝の言葉を告げる。
「レオンは間違いなく優れた剣士になるじゃろう。レッドもヨハンも優れた剣士になれる。これからは王立騎士学校に入るのが良いだろう。各地から優れた若者が集まってくる」
「王立騎士学校は12歳で入学できる。レッドはあと2年、ヨハンその1年後、レオンはあと6年かまだまだ先だな」
「まあ、将来が楽しみじゃな。儂の弟子と戦うことがあるのか?あるいは儂自身と本気でやり合う日が来るのか。いずれにしろ、また会おうではないか小僧ども」
ドラグノフ師はそう言うと馬車に乗り、去っていった。
それからは兄達と日々修行に励むことになったのだが、剣技についてはある程度の目処がたち、これから成長するにつれてどんどん強くなっていくであろうことは推察できた。