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「な…………」
翔が絶句し固まる。
――えええっ! 店長なに言ってんですか?
店主の不可解な言葉を聞いて、メイドの望美も同時に驚く。
――だってマホくんだったら、今もそこに……。
「にゃあご」
いつの間にやら、カウンター席には黒猫マホの姿があった。
黒猫の蒼い目がギロリと光る。余計な口をはさむな。まるで、そう言わんばかりに。
とっさに悟った望美は、口に出掛かった言葉を飲み込んだ。
――そっか。まさかマホく……マーくんの正体は「死神の黒猫に憑依された自分なんです」だなんて言えないだろうから。だから死んじゃった事にしたのね。
真幌が藍染着流しの袖から、一枚の写真を取り出す。
「マーくんとは、この子の事ですよね」
写真を受け取ると翔は、まじまじと見つめた。
「ええ、そうです。この子です。でも、これは……一体……なぜ?」
翔が困惑の表情を浮かべる。
――レッドの広瀬さん、なんで驚いているんだろう。店長の子供の頃の、色褪せた古ーい写真でも見せられたのかしら。
「店長さん。これは一体、どういうことなんですか?」
横から望美は写真を覗き込んだ。
「ええっ! てってってっ、店長。これは一体⁉」
望美が驚愕する。
そこに写っていた少年は、真幌に憑依したマホとはまったくの別人だった。