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「楓ちゃん? うっそ、めっちゃ久しぶりやーん!」
電話の主は秋元楓。忍の女優としての数年先輩だ。
現在は女優業を引退し、東京で芸能事務所『チェリーブロッサム』の代表取締役社長を勤めている。
看板女優は源桜子。現在、リビングの液晶画面に映っている彼女がそうだ。
また最近では若きイケメン俳優のエースとして、以前『純烈戦隊セイギリオン』騒動で一躍、時の人となった広瀬翔も台頭している。
小規模ながら、そんな人気のツートップを抱える少数精鋭の事務所の敏腕女社長だ。
「噂には聞いてるわよ、実家に戻って霊媒師やってるんだって?」
「あ、読んでくれたんだ。例の週刊文秋」
忍の霊媒師としての噂がSNSなどの口コミで広がり、先日『晴れの国の美人すぎるご当地霊媒師』として、全国規模の週刊誌で見開きインタビューが掲載されたばかりだ。
以来、実はスピリチュアルブック的な出版の話も、数社から打診されていたりする。
「忍ちゃんの場合は『ドSすぎる』も冠に付きそうだけどね」
イジワルな口調で先輩が言う。
「うっさいわね、まあ否定はしないけど」と笑って返す後輩。
先輩に対してタメ口なのが忍っぽくもあり、ふたりの親しい間柄を感じさせる。
「でね、実は。今日はお誘いがあるのよ」
「お誘いって?」
「ねえ、忍ちゃん。もう一度、東京でひと花咲かす気はない?」
「は?」
「良かったらなんだけど、是非うちの事務所に入って欲しいの」