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4-10

【二十代の男性、信号無視のトラックに跳ねられ死亡。園児らを庇って】

『昨日未明。岡山県岡山市の路上にて、会社員の藤宮樹さん(享年二十三歳)が信号無視のトラックに跳ねられ死亡した。藤宮さんは交差点に突っ込んで来るトラックから、幼稚園に通う園児の集団を、自ら庇うような形で巻き込まれた。そして転倒時に頭部を――。 山洋新聞ニュース県内欄』


 樹の葬儀の日。

 望美と花音は、小学校時代のクラスメイトの代表として出席した。

 その間、華音は望美の横でずっと啜り泣いていた。


 帰宅後。

 緊張の糸が切れたのか、望美は玄関先でへなへなと床にへたり込んだ。

 樹の最期の言葉が、頭の中で何度も鳴り響く。

【「さよなら、のぞみちゃん。元気でね」】

 望美は声を上げて泣き崩れた。


 ◇


 一週間後。

 望美の自宅アパートに、一通の手紙が届いた。

 差出人は『藤宮樹』と書かれてある。

 指定配達日を十日後としていたようである。つまり投函されたのは、彼が死ぬ直前だ。

 玄関先で望美は、慌てて封を開けた。

 かなりの枚数の便せんに、直筆の長文がぎっしりと書き連ねられている。


『拝啓 逢沢望美様。

 君が今これを読んでいるということは、俺はもうこの世にはいません。そしてごめんなさい。俺は君に、これまで沢山の嘘を吐いていました』


「嘘……って、どういうこと?」


『先ずは最初の嘘。シンガポールに海外赴任というのは嘘なんだ。まさか「あの世へ赴任」だなんて、さすがに言えなかったからね』


 どうやら樹は、自分が近々死んでしまう事が事前に分かっていたようだ。

「ていうことは……まさか……」


『次の嘘。俺、昼間のまほろば堂に訪れた時に店長さんと、お互いに「始めまして」と挨拶を交わしたよね。あれが、そもそもの嘘』


「って。ま、まさか!」


『そう、俺はまほろば堂の夜の客だったのです。約一月半前、突然現れた不思議な少年から、俺はもうすぐ寿命が尽きることを知らされた。だから店長の蒼月さんとは、幽体離脱した生霊として、何度も何度も夜の店で面談をして頂いていたのです。そして』


 次の一文を読んで、望美は「えええっ⁉」と仰天した。


『俺の初恋告白大作戦。その仕掛け人は他でもない、まほろば堂の蒼月店長さんです』

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