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2-4

「ここは古くからボクの縄張りなんだ」

 自分は半世紀近く前から、この界隈で冥土の土産屋を営んでいる。なのに、そんな自分に何の断りもなく、新参者が無断で場を荒らしているのが許せないと少年が苦言を並べる。

 つまり少年は、同業者の少女にクレームを付けに来たのだ。

「だから営業妨害しないでよ。ねっ、新参者アラシの天使さん?」

「関係ないわ」

 少女が冷たく言い放つ。

「私選冥界道先案内士は自由競争が法の原則よ」

「なにが法の原則の自由競争だよっ。違法スレスレの危ない橋を渡ってるくせにさ。ていうかボクら最高神おかみの使いが、客と直接交渉するのはルール違反だろ?」

 冥界からの使徒が現世の人間に道先案内の直接交渉をすることを、最高神は好まない。

 天使や悪魔が露骨に姿を現し、表立って人間と交流すると世界の秩序が乱れてしまう。

 その為に冥界からの使徒は、交渉の代理人つまり伝道師として現世の人間と『雇用契約』を交わす。

 それに当たるのが蒼月家の人々だ。また広義な意味ではあるが、神父や僧侶や神主や巫女、はては宗教の教祖や、俗に言う予言者などもこの類なのである。

「法のグレーゾーンを付いてるだけよ」

 最高神が定めし冥界道先案内士法の規準には『冥界の使徒である道先案内士が、現世の人間である顧客と契約に関する直接交渉を行うことは誠に遺憾であり、極めて好ましくない』と曖昧な表現で記載されているのだ。

 ハナは飼い主である葉子の身体を無断で借用しているだけで、伝道師としての雇用契約自体は交わしていない。だから葉子はハナの正体にすら気が付いていないのだ。

「言いたいことは以上かしら。そっちこそ、営業の邪魔をしないで欲しいんだけど」

 蒼い瞳の色白少女は、猫のように鋭い目つきで少年を顎で出入り口へと促した。

「今夜はまだ案件が残っているの。お引き取り願えるかしらクレーマーさん?」


 退出したマホは、フランス語で天使と書かれた店の看板に向かって悪態を吐いた。

「ちぇっ、何が天使のアロマサロンだよ。アクマサロンの間違いじゃんか」


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