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「まったく、真幌のやつ。まーたトロトロ仕事してくれちゃってさ」
黒猫マホは青色のソフトクリーム片手に、少年の姿で美観地区のデニムストリート周辺を歩いていた。
桜並木に彩られた昼下がりの倉敷美観地区。緩やかに流れる白銀の倉敷川には、家族連れを乗せた高瀬舟が優雅に運行している。
最近、すっかり暖かくなってきた。左手にしっかり握られた、青色のデニムソフトをぺろぺろと舐めまわす。お行儀の悪い歩き食いだ。
昨年の丁度この時期から、まほろば堂にも正規雇用のメイドスタッフが増員された。
以来マホは彼女に店番を押し付け、店主の蒼月真幌に憑依し、少年の姿で日中の倉敷市街を徘徊する事が多くなった。
店主がメイドを正規雇用したのは昼間の営業の方。相変わらず、夜の店は忙しい。
にも関わらず、冥土の土産屋としての業務成績には、殆ど反映できていないのが現状だ。
「それもこれも、真幌のやつが無能だからだよっ」
ぶつぶつと独り言で少年がぼやく。
「仕事にやたらと無駄が多くて、話が回りくどくて理屈っぽくて。おまけに契約結ぶのもチンタラ遅くて、いつも先延ばしばっかしてて。そんなんだから、まーた」
ラムネ味の青いソフトクリームをぱくりと頬張る。密かな彼の大好物だ。
冥土の土産屋のオーナーである少年が、もぐもぐと職場の愚痴をこぼす。
「まぁーた同業者に、契約の先を越されふぁっふぁじゃんかよ。あの」
唇の周りを長い舌でペロリと舐め回すと、少年はボヤいた。
「あの、生意気で憎ったらしい新参者にさ」