表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/68

1-12

【正義のヒーロー電撃入籍。お相手は共演者の美人女優】


 結婚披露記者会見。

 会見席である白いテーブルには、華やかな色とりどりの花が飾られてある。

 大勢の取材陣とカメラの前。新郎であるスーツ姿の広瀬翔は、かつての共演者である美人女優の新婦と肩を並べ、テーブル席に腰掛けていた。

 多くの質問に答えた後、翔は「自分からも、少しだけ宜しいでしょうか」とテーブルマイクを引き寄せた。

「本日は、私たち新郎新婦の為にお集まりくださり、誠にありがとうございます」

 無数のフラッシュライトの中、翔は言葉を続けた。

「自分には何人もの大切な人がいます。文字通り命を懸けて、正義の心の大切さを教えてくれた天国の父。そんな父をずっと支え、人を信じることの大切さを教えてくれた天国の母。ずっと自分を応援してくださっている、ファンの皆さん。事務所の社長や、多くの仕事の関係者の方々。そして、ここにいる妻」

 カクテルドレスを着た新婦が、頬を桃色に染める。

 有名美人女優である新婦は、惜しまれつつも入籍と同時に芸能界を引退。今後はひとりの主婦として、夫の仕事を影ながらサポートしていくとのことだ。

「そして、もうひとり。僕の事をずっとずっと応援してくれていた、ひとりの少年――」

 翔が一瞬、瞳を瞑る。感極まったのだろうか、そのまま彼は天を仰いだ。

 しかし直ぐに気を取り戻し、言葉を続けた。

「これらの大切な人たち……いわば恩人です。これからは自分が、みなさんへ恩返しをする番です。まだまだ若輩者の自分ですが、妻とふたり手を取り合い精一杯精進しますので、これからも応援の程、どうぞよろしくお願い致します」

 新郎が結婚会見の席を立つ。彼は颯爽とテーブルマイクを掴んだ。

 それに習うかのように、新婦も続けて立ち上がる。

 無数の眩いフラッシュライトの光。遍く銀河の星々のように、新郎新婦を照らし出す。

「いいかい、ピンク?」

「OK、レッド!」

 ピンクのドレス姿をした新婦の橋本麻衣が、満面の笑みでウインクする。

「義理と人情、正義の心で恩返し」

 新郎の声が会場に響き渡る。かつて新郎新婦が演じた、子供向け特撮ヒーロー番組の決め台詞だ。

 背筋を伸ばし決めのポーズ。赤色のスーツ姿の端正な顔立ちの新郎が、両手を大きく振りかざす。その勢いでテーブル席の五色の花が、ふわりと風に揺る。

 新郎は、胸を張って叫んだ。

「純烈戦隊セイギリオン!」


「うふふ、広瀬さんったら」

 ほうじ茶をすすりながら、お茶の間の望美は頬を緩めた。


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ