94:成金解決オラァァあああああ! ユーリちゃん!!!
「さぁてクソ弟子よ、ワシとて霞を食って生活しているわけではないからのぉ〜。誠意を見せてくれるなら、それ相応の技を伝授してやるが?」
などと言いながら揉み手をするヘイト天狗。仮面の奥の目が欲にくらんでいます。
――はいどうも、ヘイト天狗こと天狗仙人の弟子になったユーリくんです!
えー仙人といったら清廉な求道者のことを指すと思うんですが、この爺さんはいきなり謝礼の話をし始めましたね! 生臭坊主ってやつですね!!!
「まぁいいぜ。教祖殺して街奪い取ったから金なら腐るほどあるしな」
「えっ、なにその金めっちゃ受け取りづらいんじゃけど!? 呪われない!?」
「いまんところ大丈夫だから大丈夫だろ。仮に大丈夫じゃなかったとしてもその時にはもう俺の金じゃないから俺は大丈夫だぜ!」
「死ね!」
「ところで爺さん、あんま露骨に金の話をするのは仙道的にアウトだと思うぜ?」
「人道的にアウトな貴様に言われたくないわ……!」
“やっぱコイツ追い出すべきか”と呟く天狗仙人。解せぬ。
ま、こちとら意地でも強くなって帰ってやるつもりなんだけどな。
それまでは嫌でも居座らせてもらうぜ。
「……悪いが俺には、勝ちたいヤツがいるんだよ。そしてそんな俺のことを『最強であれ』と願ってくれている連中がいる」
妹分のシル子にグリムに、ザンソードを始めとしたトップ勢。さらに俺に憧れてくれている多くのブレスキプレイヤーたち。
そいつらの期待に応えるためにも、タダで帰るわけにはいかない。
絶対に強くなってペンドラゴンをぶっ殺してやる。そして運営をギャフンと言わせてやるんだ。
「だから頼むぜ、天狗師匠。お礼だったらなんだってする。どうか俺を、強くしてくれ」
「……ふん。カルマ値はクソを通り越して地獄じゃが、その闘志だけは認めてやろう。
――では、貴様の実力を測る意味もかねて、いくつかのモンスターの素材を持ってきてもらおうかの?」
天狗師匠がそう言うや、俺の目の前にメッセージウィンドウが表示される。
そこにはこう記されていた。
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・これより、師匠NPCへの納品クエストを開始します!
求められたアイテムを納めることで、そのアイテムの入手難易度に応じたオリジナルアーツを習うことができます!
※ただし極一部のNPCは、条件を満たさなければ最上位アーツを教えてはくれません。
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なるほどな、要求されたアイテムを渡せと。
それなら速攻で済ませてやるぜ。
「アイテムボックスオープンっと。さぁ師匠、お求めの品を言ってくれ」
「むっ、事前にいくつかアイテムを持ってきたのか? ワシの気分で決めるのに無駄なことを……。
では弟子よ、『殺人イモムシの糸』を渡せ。さすれば初級天魔流弓術『暴風撃』を――」
「ほい、『殺人イモムシの糸』っと」
「むむ……っ!?」
アイテムボックスからネチャアとした糸を取り出す。
説明によると微酸性らしい。危ねえなオイ。
「フンッ、ヤマ勘が当たりおったか。じゃがそんな偶然が何度もあると思うなよ!?」
「はいはいっと。んじゃいちいち技を教わってから次のアイテムを渡すのも面倒だから、全部の技分一気に要求してくれよ」
「なにぃ!? ……では『大熊猫の爪』と『炎雷蝶の鱗粉』と『懐古鳥の大羽』と……」
「ほいほいほいっと」
「はぁ!? ででっ、では『世界樹の朝露』と『白鯨の鋼髭』と『獅子神獣の顎』とッ!」
「ほいほいほいほいほいっと」
「はあァァあああああ!!?」
ドッチャリと積まれたアイテムを前に、素っ頓狂な声を上げる天狗師匠。
元気な爺さんだぜ。
「どっ、どうなっとるんじゃ貴様!? なぜ、ワシの要求したアイテムが全て手元に……!」
「ああ、俺は生産職でもあるからな。その最上位スキル【万物の王】の力で、ギルドの倉庫からアイテムを呼び寄せられるんだよ」
前回のギルドイベントで獲得したスキルだな。
俺のギルドハウスが街クラスの大きさなことを考えれば、実質アイテムボックスの容量が無制限になったに等しい。
「んで、アイテムのほうも最上位強奪スキル【冒涜の略奪者】でプレイヤーから奪いまくってありまくりってわけだ。さぁ師匠、次は何をお求めで?」
「ッッッ!? も、もうえぇわクソ弟子がっ! 中級までの天魔流アーツを全部教えたらぁーッ!」
ヤケクソ気味に叫ぶ天狗師匠。弓を手に取り、「ついてこいっ!」と庭に飛び出していく。
よーしやったぜ!
新技獲得祭りの開始じゃーっ!