87:絶望の、瞬間。
夜桜と共に舞う鮮血。
気付けば俺の両腕は、女騎士により落とされていた。
「なっ……!?」
――いいや、両腕どころではなかった。
“斬られた”と認識した時にはすでにペンドラゴンの刃はさらに一閃振るわれており、切断された俺の足がばたりと地面に倒れたのだった。
「は――は?」
遅れて落ちゆく上半身。
地上にいながら地に落ちていくという、未知の感覚に晒される。
だがしかし、目の前の女は四肢を切っただけでは満足せず、剣を引きながら姿勢を低くし――!
「――呆けている場合かァッ! さぁユーリくんッ、私を満足させてみろォオオーーーーーーッ!」
咆哮と共に、幾重の突きが放たれたッ!
ペンドラゴンは超高速で疾走しながらひたすら刺突を繰り返し、俺の全身をグチャグチャにしていく!
ああ、もはや地面に落ちることさえ叶わない! 一秒ごとに光の剣が何発も肉を抉っていき、まるで流星群にでも巻き込まれているかのような衝撃を味わう――!
「ぐああああああああああああああーーーーーーーーッ!?」
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一瞬遅れて目の前に表示される大量のメッセージ。
不運なことに俺は『幸運値極振り』だ。
それによって死ぬことさえも許されず、俺の視界は電子表示と舞い散る自分の血と肉でいっぱいとなった。
ああ、もはや俺の力だけではこの状況を打開できない。頼みの綱があるとすれば、ザンソードだけだが――、
「あぁごめんなさい。アナタを助けに行こうとしてたから、殺しちゃったわ」
――少女の声が絶望を告げる。
剣閃の中でペンドラゴンの真後ろを見れば、そこには黒焦げたザンソードの死体と、冷たく笑うアリスの姿があった……!
その光景に、俺は全てを理解する。
“あ――終わったな、こりゃ”
脳裏を過る敗北の二文字。
バキリという音を立て、俺の闘志は粉々に砕け散ったのだった――。
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