84:激突ッ、修羅道のキリカVSユーリくんちゃん(+ニート侍)
さらっと掲示板にも書いてあった便利アーツ、『座禅』。
発動条件は『目を閉じること』と『10秒以上動かないこと』と『プレイヤーの頭の高さが起立時の胸の位置以下になっていること』と『背筋が伸びてること』。
戦闘中に使うには至難に思えるけど、実は座禅の姿勢以外にカエルみたいにノビてても使える模様(最初はビシッと座禅してないと発動しない設定だったが、「ミニスカートのプレイヤーがあぐらかいたらパンツ見えちゃうんじゃね? こりゃアカン!」という運営の妙な配慮から発動条件がゆるふわになった)
座禅をこっそり使って回復からの奇襲を図ることを、「死んだふり回復戦法」という。
きたない。
乱戦中にへばってる剣士プレイヤーは、問答無用でぶっ殺そう。
イベント【異世界からの襲撃者】発生。
突如として現れたそのメッセージを前に、俺とザンソードは困惑する。
「刺客プレイヤーとの、公開決闘だと……!?」
「そうや! アップデート時のメッセージであったやろ!? 上位レベルのプレイヤーに向け、刺客が放たれるってなぁ!」
ッ、アレのことか――!
てっきり特殊なモンスターでも放ってくるのかと思ったが、まさか別のゲームからトッププレイヤーを呼び出すとは思わなかったぜ。
運営も思い切ったことしやがる。
「ちなみにウチらはボスキャラとして、運営から特別なアバターを与えられとる。たとえば、こんなことが出来たりなァーーーッ!」
パンッと手を打ち合わせるキリカ。
その刹那、俺とザンソードの周囲に無数の召喚陣が現れ、何百体もの骸骨武者たちがそこから這い出てきた――!
「なっ、これは『滅びの暴走召喚』!? アイツもサモナーのジョブなのか!?」
「いいやッ、少し違うぞユーリよっ! これは『戦国六道オンライン』において、高レベルの修羅道亡者のみが使える奥義だ……!」
困惑しながら語るザンソード。
なるほど……たしかに『滅びの暴走召喚』は、呼び出せるモンスターは百体までだからな。なのにキリカは、ざっと六百体近い数を呼び出してやがる。
それに骸骨武者なんてモンスター、今のところ見たことがない。
「特別なアバターってのはそういうことか。つまり刺客プレイヤーは、別のゲームの力が使えるってわけだな?」
「フフッ、理解が早いなぁお嬢さん。正解や。――ちゅーわけで、二人仲良く嬲り殺しになってまえーッ!」
キリカの叫びと共に、何百体もの骸骨武者が一気に襲い掛かってきた――!
『ガガガガガガガガガッ!』
剥き出しの顎を震わせながら迫る地獄の武者ども。
ああ、ものすごい数だ。骨だけとなった亡者たちが刀を振り回しながら飛びかかってくる光景は、一般人なら間違いなく身が竦んでしまうことだろう。
だがしかし、
「つい先日、数万人のプレイヤーに襲われたばっかでなぁ。これくらいどうってことないんだよぉ――!」
武者どもに飲まれる直前、巨大召喚陣を足元に描く。
そして次の瞬間、俺とザンソードを肩に乗せる形で、全長百メートルの巨大モンスター『ギガンティック・ドラゴンプラント』を召喚させたのだった――!
『グガァーーーーーーーーッ!』
『ガガガガガガガガァァアアアッ!?』
天へと伸びた竜樹の巨体に、骸骨武者どもは弾き飛ばされる。
どうやら数はすごいが耐久力は低いらしく、ただそれだけで多くの者がバラバラの骨となって消え失せた。
「さぁギガ太郎、異世界からのお客さんに一発かましてやろうぜぇ!」
『グガガーーーーーーーーーーッ!』
俺の言葉を受け、ギガ太郎の七つの花弁が光り輝く。
かくして次瞬、ゲーム内最強クラスの必殺技『ジェノサイド・セブンスレーザー』が修羅の女に向かって放たれた――!
だが、
「舐めんなやぁッ! オンキリキリバサラウンバッタッ――魔の力を以て魔を祓え! 修羅道呪法『斬魔の太刀』ッ!!!」
キリカが叫ぶと、その刀身より地獄の光が溢れ出した――!
そして眼前に構えるや、ギガ太郎の『ジェノサイド・セブンスレーザー』を真正面から受け止めてみせたのだ!
「アハハハハッ! こんなんまったく効かへんわーッ!」
勝ち誇ったように笑うキリカ。
実際、全てを滅するはずの魔力光は彼女の刀身に触れた瞬間に真っ二つに裂け、傷一つ付けることすらできない。
「なるほど、魔法を無効化するアーツってところか……!」
便利な技を使いやがる、ブレスキにも実装して欲しいところだぜ。
そうして攻撃を凌がれること数秒。巨大召喚獣は十秒程度しか実体化できないという縛りにより、ギガ太郎は『グガァ~……!』と無念そうな声を上げながら徐々に消えていく……!
――だけどっ、
「ザンソード!」
「うむッ!」
キリカが魔力光の防御に集中する中、すでに戦友は行動に移っていた!
全身を蒼き炎で包む奥義『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』を発動し、火の鳥のように彼女へと斬りかかる――!
「さぁキリカよ! この世界で磨き抜いた我が刃、受けてみよッ!」
「望むところやァーッ!」
ガギィイイイイイインッという音を響かせ、空中でぶつかり合う二人。
ザンソードの纏った高温の炎がキリカを焼くも、それでも彼女は笑顔だった。まさに傷付くことこそ本望だとばかりに。
「カァーッ、近づいた敵を常時焼き続ける付与呪法かッ! えぇなぁそれッ、このヌルゲーにもいい技あるやんッ!」
「あぁそうとも! そしてこの世界にも、おぬしを仕留められるほどの亡者はいるッ!」
「おらへんわそんなんっ!」
唸り声を上げるキリカ。そうして彼女が、ザンソードを押し切るべく全力を発揮した――その瞬間、
「いいや、いるさ。拙者を二度も打ち負かした、亡者を超える魔王がな――!」
そこで、ザンソードは一気に力を抜いた。
それによってキリカに押し切られ、舞い散る木の葉のように夜空から落ちる。
「はっ、な、なんで――」
虚を突かれたことで戸惑うキリカ。
そこで彼女はハッと俺のほうを見るが、もう遅い――!
「悪いが、準備は整えさせてもらったぜ」
飛行型の使い魔『バニシング・ファイヤーバード』を足場にしながらキリカに告げる。
俺は両手に剣を握りながら、スキル【武装結界】を発動することで七つの大剣を背後に展開させていた……!
これまでであれば弓を握っていなければ【武装結界】は使えなかったのだが、
「よく考えたら手に持つ必要もなかったってな。なぁ、ポン十一郎?」
『キシャァ~ッ!』
宙に浮きながら唸る『初心者の弓』。
そう。俺は手にした双剣と同じく、シャドウ・ウェポンの一体を弓に移していたのだ。ポン一族の宿った武器はファイヤーバードなどと同じく、【飛行】の特性を得るからな。
これで合計九本。九つの切っ先がキリカに向くことになったのだが、彼女は「ハンッ!」とせせら笑う。
「なんや、全然大したことあらへんやないかっ! 動画で見たから知っとるで。アップデート前は何十本も武器を飛ばしていたのに、ずいぶんと貧相なことになったやないか!」
地獄の炎を噴き上げるキリカ。長刀を握り、俺へと一気に高速で迫る――!
「ボケカスがァッ! そんなんでウチを倒せるかァーッ!」
――あぁ、たしかにお前の言う通り、ずいぶんと数は寂しくなったさ。
だけどッ、
「だったら、一本一本の攻撃力を何倍にも跳ね上げればいいってなぁ! アーツ発動『シャイニング・アロー』!!!」
「なぁあああああああッ!?」
かくして放たれる、極光を纏った剣の群れ。
九つ同時のアーツ攻撃という新必殺技が、驚くキリカを飲みこんだのだった――!
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