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83:強襲ッ、異世界からの襲撃者!



「がはぁーーーっ!?」


「ザ、ザンソードッ!?」


 夜桜の散る中、惨劇は起きた。

 血を吐きながら泣き別れするザンソードの胴体。容赦なく両腕ごと切断され、ビチャリッという音を立ててヤツは地面へと落下したのだった――!


 俺は急いで回復薬を出し、駆け寄ろうとしたのだが……、


「おっと、通せんぼや。回復なんてさせまへーんっ♡」


「ッ、テメェ……!」


 俺の前へと、ザンソードを斬った謎の女が立ちはだかった。


 片手に金の煙管キセルを持った、遊女のような雰囲気の女だ。

 しかし、頬に飛び散ったザンソードの血と、もう片方の手に握られた刀が、その艶やかな風貌をおぞましい印象へと変えていた。


「なんだよお前は……! いきなりザンソードを襲いやがって、汚いぞッ!」


「ハッ、汚い? これだからケンカ馬鹿のお嬢さんは困りはんなぁ。奇襲や暗殺なんて、『戦国六道オンライン』じゃぁ当たり前やえ?」


「『戦国六道オンライン』……?」


 なんだそりゃ――と呟こうとした瞬間、女は超高速の突きを放ってきた!


「なッ、会話の途中でそんなんありかよ!?」


 どうにか半身を逸らして避けるも、女の攻撃は止まらない。


「あははははッ! ウチのいた『戦国六道オンライン』じゃぁ攻撃こそがコミュニケーションや! そぉら死ね死ねぇぇええええ!!!」


 首に胸に手首に足にと、急所や斬られたら戦闘困難になる場所を執拗に狙ってくる謎の女。

 こちらも双剣を振るって攻撃をいなそうとするが、あまりにも剣術の練度が違いすぎる。

 おかげで何度も剣先が掠め、着ているドレスがボロボロになっていく……!


「くそっ、ガチでやめろ謎女! ただでさえ露出が激しいってのに……っ」


「はんっ、恰好の心配していられるとは余裕やなぁ!」


 忌々しげにこちらを睨む謎女(いい加減名乗れ)。

 その視線に、俺はフッと笑って答えてやる。



「ああ、余裕だとも。だって俺には、頼れる戦友がいるからなぁ――!」



 そして、次の瞬間。


「――切り捨て御免ッ!」


「なぁっ!?」


 復活を遂げたザンソードが、背後から謎女を袈裟切りにするのだった――!


「ッ、ザンソードはん……いつのまに……!」


 地面に倒れ伏す謎女。そんな彼女にザンソードは答える。


「回復系アーツ『座禅』というものを使わせてもらった。まぁ上半身だけで伏した状態を、座っていると呼んでいいのかは知らんが……それはともかく」


 そこで言葉を切り、彼は視線を鋭くさせた。


「――なぜここにいるのだ、キリカ。『戦国六道オンライン』のトッププレイヤーともあろうものが」

「ッッ……!」


 ザンソードの問いかけに、キリカというらしい女は答えない。

 されど瞳を憎悪に染め上げ、これ以上ないほど恨めしそうな表情を浮かべるのだった。


「おいザンソード……何がなんだかわからんが、そいつはお前の知り合いってことでいいのか? んで、さっきから言ってる『戦国六道オンライン』ってなんなんだよ? 置いてけぼりは寂しいぜ」


「ああ、すまぬ。『戦国六道オンライン』というのは、VRMMO時代の初期に出た対人戦特化型ゲームの名でな……」


 ザンソードは概要だけを掻い摘んで話してくれた。



 ――舞台は戦国。プレイヤーは奈落から常世に逃げ出した亡者という設定で、最初に餓鬼道や修羅道など、どこの苦界を潜り抜けた亡者か選び、それに合った能力を得るらしい。

 そして、他の亡者プレイヤーを殺すことによって存在強度……つまりはレベルを上げるわけだ。



「――これが面白いシステムでな。敵プレイヤーを殺害した者は、そのプレイヤーのレベルを全て吸収することが出来るのだ」


「な、なんだそりゃ!? じゃあ初心者が一発でトッププレイヤーになれる可能性があるってか?」


「そういうことだ。それゆえ一応はモブモンスターが用意されていたものの、誰もがチマチマとした経験値稼ぎなどせず、格下狩りや格上への集団的強襲を楽しんでおったよ。まさに亡者のごとく、な」 


 うわー……すげぇ殺伐としたゲームだな。

 そんなところの出身なら、そりゃキリカって女も息するように奇襲してくるわけだ。


「やばいゲームだけど、ちょっと面白そうだな……!」


「ああ、面白かったとも。ただ――一度の死で全てを失うシステムは、長期でやるにはあまりにも疲れる。

 それゆえ、引退者が続出してな。やがて拙者も新たな戦場を求め、このブレスキに流れ着いたというわけでござる」


 はえ~……ネットゲーマーにも経緯ありだな。

 そういえばザンソードのヤツも、いきなり奇襲してきてたっけか。しかも距離を開けることが難しい洞窟内で襲ってくるとか、他の弓使いなら普通に死んでたぞオイ。


「よく考えたらお前、奇襲してきたキリカのこと責められないよな。薄暗い中で斬りかかってくるとか普通にやばくね?」


「むっ、仕方なかろう! あの時の拙者は亡者度が高かったのでござるッ!」


「亡者度ってなんだよ」


 なんか謎のワードが飛び出してきたんですけど……!

 そうして俺がどういう意味やねんと首を捻った時だ。地面に伏しているキリカが、「何が新たな戦場を求め、や!」と吠え叫んだ。や!(可愛い)。


「ザンソードはん、アンタは結局逃げただけやないかっ! こんなほんわかしたゲームで美少女プレイヤーとイチャコラして、アンタの亡者度も地に落ちたなぁ!」


「亡者度ってなんだよ」


 あと美少女プレイヤーじゃねえから。イチャコラもしてねえから。


「アンタは黙っときッ。――せやからザンソードはん、ウチはやってきましたえ。亡者オブ亡者の身でありながら『戦国六道オンライン』を捨てたアンタを始末するために、ここの運営の勧誘に乗ってなぁ……!」


「勧誘、だって……!?(あと亡者オブ亡者ってなんだよ!?)」


 ――かくして俺が困惑する中、キリカの全身から赤黒い波動が放たれた!

 たまらず後退させられる俺とザンソード。そして次の瞬間、彼女はふわりと宙に浮き上がり――!



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ・ワールドニュース!

 ただいま0時より、イベント【異世界からの襲撃者】を開始します!

 ユーリさんとザンソードさんが、『修羅道のキリカ』と遭遇しました!

 これより、刺客プレイヤーとの公開決戦を開始します――!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「なんだと!?」



 上空に表示されるメッセージと巨大ウィンドウ。

 そこには刃を構え合う、俺とザンソードとキリカの姿が映っていた――!



・ブクマに評価にご感想、お待ちしています――!


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― 新着の感想 ―
『戦国六道オンライン』のノリを別ゲーに持ち出すとは…とか言われそう(笑) ザンソードさん達は金魚鉢の鮫だったんですね。
[一言] どこかの幕末ですかね? 天が誅せよと言えば何でも許される世界かな?
[一言] 刺客(マジで雇った人間)
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