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81:またまた逮捕だ、ユーリちゃん!(+ニート侍)



「さぁ、走れ走れウル太郎! ひたすら東を目指しまくってっ!」


『ワォーーーンッ!』


 新たな戦闘スタイルを見つけた後のこと。

 ある思い付きをした俺は、使い魔の『ウルフキング』に乗って『絢爛都市・ナカツクニ』という場所を目指していた。


 攻略サイトによると和風の雅なところらしい。そこを根城としているプレイヤーにちょっと用があるのだ。

 かくして、久々の出番で上機嫌なウル太郎を走らせること数十分。


「よーしついたっ! ここが『絢爛都市・ナカツクニ』かぁー!」


 俺を出迎えてくれたのは、めちゃくちゃデッカい鳥居だった!

 その向こうには大河ドラマで見たような江戸時代っぽい街並みが広がっており、街の中央には巨大な石垣のお城まであった!


「おひょ~っ、好きなヤツにはたまらないだろうなぁ……!」


 さっそく中へと入りながら街の様子を見ていく。

 絢爛と名の付くだけあって、なんとも華やかなところだぜ。

 そこら中に桜が咲きまくり、その下では多くの和服の商人NPCたちが「安いよ安いよぉっ! もってけドロボーッ!」と元気に商いを行っていた。


「いいところだなぁナカツクニ! さてっ、それじゃあアイツを探しますかー」


 そうしてのんびり観光しつつ、ぶらぶらと街を歩いていると――。


「むッ、なんたる邪悪な気配を放つ女かッ!? 皆の衆、クセ者だぁーッ! 出会え出会えぇえええッ!」


『うぉおおおおおおおーーーーーーーーーーッ!』


 ……えぇ。

 街に入って約一分後、俺は新選組みたいな恰好をした見回りNPCたちに囲まれてしまうのだった。


 って、また俺捕まっちゃうのかよーーーーーーーーーッ!?



◆ ◇ ◆



「あっはっはっはっは! それでNPCどもに連行されていたというわけかっ!」


「笑うなーっ!」


 あれから数分後。俺はとある侍プレイヤーと、街を引き続き散策していた。

 まーた牢屋エリアに放り込まれそうになっていたところを、ちょうど探そうと思っていたコイツが助けてくれたのだ。


「まったく、いきなり捕まえるなんて酷い話だろザンソード? 俺は正義の勇者なのに」


「フッ、冗談が上手いなぁユーリよ」


「冗談じゃねーよ!」


 そう。俺のお目当ての人物こそ、ライバルの一人である侍プレイヤー・ザンソードだ。

 先日のイベントでは楽しませてもらったぜ。


「またナカツクニ内で捕まったら拙者に連絡するがいい。拙者、この街のクエストを制覇した結果、君主NPCから『大名侍』の地位を与えられているでござるからな。拙者自ら犯罪を行わぬ限りは、見回りNPCたちの決定にも異議申し立てができるのだ」


「はえー……!」


 クエストってのをクリアしていくとそんな特典があるんだなぁ。


「ここの君主は良き御仁でな、ギルドホームとして古城も与えてくれたでござる。おぬしの街の君主NPCはどんな感じでござるか?」


「ああ、教皇グレゴリオンな。ムカツク野郎だったからぶっ殺した!」


「……そういえばそうだったでござるなぁ」


 あの配信動画は衝撃的でござったと、俺が『聖上都市・ヘルヘイム』を攻略する様子を思い出しているザンソード。

 おいおい、なんでどんどん顔が引き気味になっていくんだ? 正義の勇者ユーリくんが囚人を率いながら悪の教皇をぶっ殺す熱いストーリーだったはずだろ?


「ゴホンッ! それでユーリよ、一体この街に何の用でござるか?」


「街じゃなくて、ザンソードに用事があったんだよ。実は俺……剣技を覚えようと思っているんだ」


「むっ……!?」


 俺の言葉に驚いた表情をするザンソード。

 まぁ、それもそうか。俺は弓使いとして知られているもんな。


「実はバトルメイカーっていうジョブに進化してさ、剣も装備できるようになったんだよ。んで、いざという時のために近接戦闘も出来るようにしておきたいなーってな」


「ふむ、それでか。しかしユーリよ、おぬしは幸運値極振りなのでござろう? それでは近接攻撃でダメージが与えられないどころか、ロクな剣も持てぬのでは……」


「それについては大丈夫だ。出てこいっ、ポン九朗にポン十郎!」


『『キシャシャーッ!』』


 俺の呼び声に応え、虚空より二振りの『初心者の剣』が現れた。

 それを見てザンソードは「ほう、そうきたか」と頷く。


「なるほど、憑依モンスターの一部を矢から剣に移動させたか……! これで剣の威力にモンスターの筋力値が加算され、それなりのダメージが叩き出せるな」


「おうよ。初心者シリーズには装備するのに必要なステータス値ってのもないから、ちゃんと持つこともできるぞ」


 漆黒の光に包まれた双剣を握り締める。

 フフフ、やっぱり二刀流ってのは男のロマンだな! テンション上がってくるぜぇ!


「衝撃を増強させるスキル【魔王の波動】に、【アブソリュートゼロ】っていう初期装備で与えるダメージが上昇するスキルも覚えてるから、筋力値ゼロでも近接職に負けないぜっ!」


「ほう、侍である拙者に向かって言ってくれるではないか……! では剣術の指導もかねて、おぬしをしばき倒してやろうっ!」


 刀を引き抜くザンソード。先日のイベントでボコボコにしてやったが、相変わらずの負けず嫌いっぷりで何よりだぜっ!


「よーし望むところだ! それじゃあさっそくバトろうやー!」


 こうして俺たちは、華やかな街の中心で思う存分剣術バトルを繰り広げるのだった――!





※街中で抜刀したため、この後二人とも逮捕されました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 祝!連載再開やったー [一言] 三巻待ってます!出るよね!?
[一言] 血の雨を降らして、血を浴びて赤く染まる……うん、魔王だなw >街中で抜刀 そういえばこのゲーム、闘技場とかの施設あったっけ?w
[一言] 行きワレェ!!!
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