80:新スタイル完成! マルチウェポンユーリくんちゃん!!!!!!!!!
大剣によって縫い留めていた触手たちが、悶絶するように蠢きながら宙を舞う。
「えっ、なっ、何が起きているんだ!? 縫い留めてただけなのに、なんで触手が切れてんだよ……!?」
困惑しながら、俺はもうすぐ消えようとしている五本の大剣に目を向けた。
――そこで気付く。
「え……剣が、光ってる……?」
なんと、刀身から光の刃が現れていたのだ。
間違いなく『光刃一閃』による特殊効果だ。本当に何が起きてるんだよ……!?
「おいおい……攻略サイトなんかで予習してきたが、たとえ複数の武器を持っていてもアーツって一本からしか出ないんだろ? まぁ放たれた矢は別らしいが――って、あぁッ!?」
俺の脳裏に電流が走る……!
バラバラだったパズルが一気に組みあがっていき、一枚の絵が見えていくような感覚に陥る――!
「っ……そうだ……よく考えてみろ……! そもそも俺が使ってきた【武装結界】による武器の雨は、条件を満たしていないときに装備がすっぽ抜けちまう現象を利用した技だ。それが攻撃になっちまうこと自体、おかしいことなんだ……」
所詮、エラーはエラーだ。投擲などとはまるで違う。
ゆえに、『攻撃時』に発動するダメージアップ系スキルなどは適用されないはずだった。
しかし俺は、『弓を持っている時に放たれたモノは、システムが攻撃として認識する』という仕様外現象に気付いてしまった。
そうして防御スキルである【武装結界】は、攻撃技へと変貌を遂げたわけである。
「そうっ――『弓を持っている時に放たれたモノは、システムが攻撃として認識する』! じゃあその攻撃っていうのはなんだ!? 一体『何』による攻撃だと認識されているんだ!?」
そんなの答えは簡単だ。だって俺の手には、弓が握られているのだから……っ、
「――答えは、『矢』だッ! つまり【武装結界】によって放ったモノは、矢の持っている『放たれた全てにアーツが適用される』というルールが適用されるんだッ!!!」
ついに辿り着いた恐るべき真実に、俺は思わず声を上げてしまった――!
その結果がクトゥルフ・レプリカの致命傷だ。
五本の剣には『剣』であるのと同時に『矢』のカテゴリーが付与されており、斬撃範囲拡張アーツ『光刃一閃』が一気に発動したってわけだ。
「ふっ、ふふふふ……! 見つけたぜぇ。新たなる弓使いの戦闘スタイルをッ!」
ああ、こりゃあ最高に面白くなりそうだッ!
新しい戦闘スタイルを思いついたことで、さらにさらにと頭の奥からアイディアが湧き上がってくる――!
「アハハハハハッ! よぉぉおおおおしッ、ステータスウィンドウオープン! 新しい武器にコレを選択してってと……ッ!」
そうして俺がハイテンションにウィンドウをいじくっていた時だ。
悶絶していたクトゥルフ・レプリカ・レプリカが、『ギシャァアアアアアアーーーーッ!』と怒号を張り上げた。
そしてこちらを睨みつけ、口をばっくりと開けて――!
『ギッッッッシャァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーッ!』
次の瞬間、ヤツは魔力を収束させると、暗黒の破壊光線を全力放出してきた――!
「ハハッ、そういえばそんな技もあったなぁお前!」
以前はギガンティック・ドラゴンプラントの必殺技と対消滅させてやりすごしたっけか。
だがしかし、もはや俺には召喚獣を呼び出す必要すらなくなった!
「スキル【武装結界】発動! 現れろ、七つの盾よ!」
俺の叫びに応じ、硬く分厚い盾たちが亜空間より飛び出してきた。
これが俺の選んだ新しい武器だ。そしてさらにっ、
「アーツ発動ッ、『閃光障壁』!」
ここで盾のアーツを発動させる。
防御アーツ『閃光障壁』は盾を光の魔力で包んで、その衝撃緩和性を高める技だ。
それを七つすべてに適用させたことで、クトゥルフの放った破壊光線は俺に届かず霧散するのだった。
『クェーーーーーッ!?』
「そして悪いが、これで終わりだッ!」
俺は盾を消し去ると、新たに七つの刀剣を顕現させる。
さらに使い魔『シャドウ・ウェポン』の宿った強力な矢を何本も呼び出し、弓につがえた!
「ハハッ! 他の弓使いなら一気に何本も矢を放ったって当たらないだろうが、俺はサモナーだからなぁッ! 命中率も威力もモンスターたちが補正してくれるんだよ!」
『『『キシャシャ~ッ!』』』
久々の出番にはしゃぐポン太郎たち。そんな可愛い舎弟どもの様子に微笑みながら、俺は弦を引き絞った。
「そして、俺が顕現させた武器には全て『矢』のカテゴリーが付与される……!」
つまりッ、
「矢のアーツを使えば、ポン太郎たちだけじゃなくてそっちにも適用されるってわけだッ! つーわけで死ねッ、射撃系アーツ『シャイニング・アロー』!!!」
かくして放たれる光の矢と剣の群れ。
その全てに威力大上昇のアーツ効果を纏わせながら、クトゥルフ・レプリカに殺到したのだった――!
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スキル【ジェノサイドキリング】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージ二倍ッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ三倍!
スキル【非情なる死神】発動! クリティカルダメージさらに三割アップ!
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『クェーーーーーーーーーーーーーッ!?』
幸運値極振りの効果も無論健在。
ただでさえアーツによって激しくなった攻撃がダメ押しのダメージアップを果たし、クトゥルフはもはや悲鳴を上げるしかなくなった。
そして、最後に。
「――爆殺系スキル、【紅蓮の魔王】発動」
次の瞬間、ドゴォオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!! という激しい音を立てながら大爆発が巻き起こる――!
爆破タイミングを自在に操れる新スキルを使い、クトゥルフの身体に深々と刺さった剣たちを爆発させたのだ。
それによって原型すらも残さず吹き飛ぶ禁断邪龍。赤き火柱が轟と沸き立ち、血肉の雨が降りしきる。
「じゃあなクトゥルフ、楽しかったぜ?」
俺は全身に血を浴びながら、さらなる最強への道を目指して修練場を後にするのだった……!
今の俺の姿――完全に覚醒した勇者だなッ!
※魔王です。