7:再会のスキンヘッド!
『始まりの街』に戻ってきた俺は、騒がしい表通りを抜けて寂れた路地裏にきていた。
その理由は簡単だ! チャラチャラとした場所より、こういうジメっとしたところのほうが凄腕の職人がいるって昔から決まってるからだ! きっと営業努力まったく絶無の、頑固で偏屈だけど腕だけはいい爺さんが店を構えてるに決まってる! さぁ、出てこい職人オラァアアアアアアッ!
そうして裏通りを練り歩くこと数分。不意に後ろから声をかけてくる者がいた。
「へへへっ、そこの銀髪の綺麗な姉ちゃん! オレとしっぽり遊ばねぇか~?」
うげ~ナンパかよ~! 女と間違えられるのはリアルだけにしてくれってのッ!
うんざりとしながら後ろを振り向く。すると、
「「って、お前かよッ!」」
……そこにいたのはスキンヘッドの野郎だった。
俺たちは顔を見合わせ、はぁ~~~と揃って溜め息を吐いたのだった。
◆ ◇ ◆
「――コンチクショウッ! 後ろ姿だけでわかるくらいタイプの女がいると思ったら、ダチ公だったとか笑えねぇよッ! つーかユーリ、なんでオメェ路地裏なんかにいたんだよ?」
「そりゃ職人を探すために決まってんだろ。腕のいい職人は目立たないところにいるもんだ!」
「って偏見じゃねぇかソレッ!?」
あれから数分後、俺とスキンヘッドは表通りのオープンカフェで食事を取っていた。
VRゲームというだけあって味覚も完全再現されている。俺たちはハンバーガーをバクバクと食べつつ、適当にダベることにした。
「おいスキンヘッド、食べかす付いてるぞ。あ、そこじゃなくて……あーっ、俺が拭ってやるよ」
「おうわりぃな! ……んでユーリ、バトルのほうはどうだったんだよ? ゴミ職業と最弱武器とクソステータスの組み合わせ、ちゃんと戦えたかぁ~?」
「ああ、バッチリだぜ! おかげで10レベルになれたところだ!」
「ってマジかよッ!? 今のプレイヤーどもの平均レベルよりちょい上じゃねぇか! オメェすげーな!」
お、そうなのか! そいつは嬉しいぜ!
ウサギと追いかけっこして何時間か無駄にしちまったが、ポン太郎を仲間にして戦い方を思いついてからは絶好調だったからな!
「ユーリ、オメェいったいどんな戦い方を……いや、マナー違反だからやめとくわ。とにかく頑張ったんだなぁオメェ!」
「ああ、ありがとうなスキンヘッド。つーか他のヤツならともかく、お前にだったら教えてやっても構わないぞ?」
「いやいや、聞かねーどくわ。なんたって三日後にはプレイヤー同士の大規模バトルイベントが開催されるからな! そこで戦うことになった時に情報知ってたらフェアじゃねえだろ」
ほほう、大規模バトルイベントとな! あ~そういえばそんなこと書いてあったなぁ。
たしか特殊フィールドに呼び出されて、最後の数人になるまで殺し合うとかだったっけ。俺、防御力ゼロだから多人数戦は自信がないな~……! それをなんとかするためにも装備職人を探さないと。
「オメェも出るんだろ、ユーリ? なんたってガセ情報を書いた連中をギャフンと言わせる絶好の機会だもんな!」
「おう、もちろんだ! ……なぁスキンヘッド。そこで相談があるんだが、腕のいい職人プレイヤーを知ってないか? じつは新しい防具が欲しくてさぁ。カッコいい全身鎧とか!」
「ああん? そりゃ何人か知ってるが……いやオメェ、全身鎧は無理だろ。重い装備を身に付けるにはそれ相応の筋力値が必要になるんだぜ?」
なっ、なにぃいいいいいいいいいいいいッ!? そういう設定なのかぁぁああああああ!?
じゃあ筋力値ゼロの俺には鎧なんて一生着れないじゃないか! せっかく全身鎧を着て今のヘンテコな見た目を隠そうと思ったのにっ!
思わずガックリと項垂れてしまった。そんな俺の肩を、スキンヘッドはバシバシと叩きながら大笑いする。
「ガハハハハハッ! まぁ元気だせやユーリ!
あ~、そういえば知り合いの職人プレイヤーの中に高性能な服飾類を作れる奴がいたわ。弓と同じく、このゲームの生産作業はかなりシビアで慣れが必要になるもんなんだが、ソイツぁ腕がよくってよ~」
「マジかっ! 紹介してくれスキンヘッドー!」
「おういいぜ! かなりぶっ飛んだ性格のヤツだが、オメェだったら紹介しても問題ねぇだろ。連絡は飛ばしておくから、ここの建物に行ってみな。そこがヤツの店だぜ」
そう言ってスキンヘッドはマップ画面を表示させ、ある一点を指してくれた。
へぇ、サービス開始から二日目なのにもうお店を持ってるのか! すごいな!
「サンキューダチ公ッ! さっそく行ってみるわ!」
「おうまたなぁユーリ!」
お礼としてアイツの分のハンバーガー代も机に置き、さっそく俺は駆け出す!
よーし、男らしい服とか作ってもらおーっと!
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