書籍版☆発売記念短編:「ニート侍の恋愛相談!」
書籍版発売中デースッ!
オリジナルエピソードももちろんあるデスよー!
1巻はおっぱいおっきいユーリくんと、「オンリーセンス・オンライン」のアロハ座長が書いてくれた帯が目印でーす!
今コロナだからあんまり無理せずネットとかで買ってね!
「――単刀直入に聞くぞ。スキンヘッドよ、貴様はユーリと付き合っているのか!?」
「はぁ~~~~~~~?」
寂れた酒場にスキンヘッドの呆れた声が響く。
バトルイベント終了後のこと。彼はニート侍ことザンソードに呼び出されていた。
そして席に座った瞬間、開口一番に聞かれたのが先ほどの質問である。
スキンヘッドは溜め息を吐いてしまう。一体お前は何を言っているのかと。
「あのなぁザンソード、どうしてオレ様がユーリと付き合わなきゃいけねーんだよ。だって、おと――」
男だと言おうとしたところで、彼はハッと気が付いた。
そういえばユーリの中身が男だと知っているのはほぼ自分くらいであることに。
『ブレイドスキル・オンライン』は精神への影響を考慮し、アバターの顔は実際の顔をベースとしたものでなくてはならない。
ゆえにほとんどの者はネカマなんて不可能だろうが、ユーリはあの美少女顔である。
それゆえ今では『電脳世界に舞い降りた美少女魔王』とネット中で話題になっているのだから、まったくアイツも罪な女だとスキンヘッドは呆れてしまう。
「むっ、おと……? 何か言おうとしたかスキンヘッド?」
「いやいや、なんでもねーよ。とにかくオレ様とアイツはただのダチだっつの。で、なんでそんなこと聞いてくるんだよ?」
目の前のチョンマゲに訊ね返す。
するとザンソードは日本酒(っぽい味がするだけの電子飲料)を飲みながら、顔を赤くしてスキンヘッドに告げる――!
「じっ、実はだな……拙者、あのおなごに気があるというかだな……ッ!」
「はっ、はぁああああああああああーーーーーーーーッ!?」
つまりは恋をしてしまったということである……!
スキンヘッドはひっくり返りそうになるほど驚いた。
まさかゲームにしか興味がなさそうな廃人ザムライの口から、そんな言葉が飛び出すなんて思わなかったからだ。
しかもよりにもよって親友のユーリが恋の相手だというのだから、「なんだそりゃッ!」と言わざるを得ない。
「お前なぁ、もっと相手を選べよ……! だってユーリだぞユーリ? 顔はたしかに最高に美少女だが、性格は喧嘩番長じゃねぇかよアイツ。
弓使いのくせにすぐ拳で解決しようとするし、不遇職で最強目指すくらい諦め悪いし……」
「うむ。それで実際にトッププレイヤーになってしまうのだから、もはや感服するしかないだろう。それにリーダーシップも実はあるらしく、今回の大会では多くの味方をつけていたな」
「あぁ、アイツ戦闘狂でぶっ飛んでるけど性格は明るいからな。目が死んでるくせによく笑うし、どんなメシも美味い美味いっていい笑顔で食うし、本当にこのゲームを楽しんでるんだなーって感じで一緒にいるとこっちまで満足しちまって……って、あれ……?」
……盛大にノロケたところでスキンヘッドは首を捻った。
ユーリへの恋を諦めさせるために悪いところを言おうとしたのに、気付けば美少女魔王のことを褒めてしまっていたのである……!
そんなスキンヘッドに対してザンソードは目を見開いた。
「ッ、このツルツル頭……興味なさそうなフリをしてやはり彼女を狙っていたかッッッ!」
「ってちげーよッ!? いやまぁたしかにアイツはすっげー気の合う奴で、オレ様がここまでゲームにのめり込めたのも、この世界でアイツに出会えたからってのもあるが、オメェとは違って友情を感じてるだけでだな……!」
そう捲くし立てるように反論していた時だ。「おいっすー」という気の抜けた挨拶と共に、噂のユーリが姿を現したのである……!
「よぉお前ら、なに二人だけでコソコソ飲んでるんだよ? 三人でバトルした仲なんだから、俺も混ぜてくれよー!」
「んげっ、まためんどくせぇところに現れたなコイツ……!?」
顔を歪めるスキンヘッド。それに対し、ザンソードは「むむむむっ!?」と唸りながら頬を赤くした。
「ふっ、ふん、貴様も来たかユーリよ! まぁなんだ、こっちの席が空いているからとりあえず座るがいい……!」
そう言って自分の隣をポンポンと叩くザンソード。
そんな露骨な行動にスキンヘッドは「コイツ恋愛経験ゼロかよ……」と呟く。
「あはっ、どうしたんだよザンソード。えらくガチガチになってるじゃねーか? まぁいいや、じゃあお言葉に甘えて……」
そうしてザンソードの隣に座ろうとするユーリ。事情を知らない美少女魔王は特に何も考えていなかった。
かくして、その尻が席に着こうとした瞬間、なぜかスキンヘッドの心に妙なモヤモヤが走った――その時、
「――なーんてなっ! オラァ食らえスキンヘッドっ、お尻アターック!」
「んなっ!?」
なんとユーリは屈もうとした姿勢のまま、スキンヘッドのほうに背中を向けて飛び掛かってきたのである!
……いきなりの強襲であったが、ユーリの筋力値は0だ。驚いただけでほとんど身体は揺るがない。
結果、小学生のような攻撃をかましてきた美少女魔王は、スキンヘッドの股の間に腰掛ける体勢となってしまったのである――!
それを見た瞬間、ザンソードはガタッと立ち上がった!
「ふぁああああああああーーーーッ!? な、なんとハレンチなことをしているのだ貴様らは!? やっ、やっぱり、付き合っていたんだなッ!? うわぁあああああーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
絶叫を上げながらどこかに走り去ってしまうニート侍。
そんな彼の背中をスキンヘッドは「だからちげーよ……!」と呟きながら見送り、相変わらず何も知らないユーリは「なんだアイツ?」と小さく小首を傾げるのだった。
「どうしたんだよザンソードのやつ。なんか意味わからんこと言ってたけど」
「へっ、オメェは知らなくていいんだよ。――それよりも飲もうぜ、ダチ公!」
「おうっ、そうだなダチ公ッ!」
明るい笑顔を浮かべるユーリに、スキンヘッドもニッと笑った。
――やっぱりコイツとはこういう関係が一番だ。
二人っきりの酒場にて、彼は美少女魔王を股に置きながら心からそう思うのだった。
※【悲報】ここまでの登場人物、全員男――!【地獄】
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新連載はじめました!
「俺は長男だから諦めない」~『ファイヤーボール』しか使えず『ブラックギルド』を追放された俺、『10万年』修行したことで万能魔法に到達する。戻れと言われても『もう遅い』。ホワイトな宮廷に雇われたからな〜
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