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75:みんなトンチキ!!!!ユーリ軍団!!!!!!!




 ――スキンヘッドが激闘の果てに散り、クルッテルオが奇策によって敗北する中、自称勇者であるヤリーオの戦いは続いていた。

 

 彼が相手にしたのはシルという元PKの少女だった。

 司令官であるザンソード曰く、『集団で弱者を甚振いたぶるプレイスタイルが祟ったせいで、トップ勢に比べたらレベルも腕前も一歩劣る』とのことだ。

 弱くもないが飛びぬけて強いわけでもない。そんな相手にヤリーオは負けるわけがないと信じていた。


 彼は常に、勝利するために最善手を選ぶことが出来る人間だ。

 敵が近接戦に不得手ならばその槍で突き、遠距離を苦手とするなら投げる。不利だと判断すれば一目散に逃げ、そしてそこから奇襲をこなして最後には勝つという……まさに教科書通りのプレイングができるプレイヤーだった。

 間違っても、弓使いなのに拳での戦いが大好きだったり追い込まれたらシステムの穴を突いてくる銀髪巨乳トンチキ野郎とはわけが違う。


 そう――堅実ゆえに弱点はあらず。

 そんなヤリーオが総合的戦闘力で劣るシルに負けるわけがない。(なぜかモヒカンの)NPC軍団を引き連れているようだが、それだってすぐに駆け付けた味方のプレイヤーたちに相手をさせた。


 さぁ、これでおしまいだ。シルとは完全な一対一に持ち込んでやった。振るってくる大剣も冷静に軌道を読んで避けていき、徐々にHPを削っていく。


 “すまないが不良少女よ、我が勇者道を飾るために散る華となってもらおう!”


 あまり女性は倒したくないが、魔王と呼ばれるプレイヤーの配下ならば問題ない。むしろ勇者ロールをしている者として心が躍るシチュエーションじゃないか。

 内心でそうほくそ笑みながら、ヤリーオが決着を付けようとした――その刹那、



「はぁ……こうなったらもうしょうがないか。悪いわねぇ手下ども、ちょっと殺すわ」



 そう言って彼女は、プレイヤーと鍔ぜり合っていたモヒカンNPCの背中に大剣を突き刺したのだった――!


「な、なんだと少女よっ!?」


 突然の行動にヤリーオは驚く。


 “今の一撃によってNPCと共に鍔ぜり合っていたプレイヤーも死亡したが、どうして今なのだ!? なぜ自分との闘いの最中にそんな横やりを!?”


 そう困惑する彼だが、ともかくこれはチャンスだと武器を振るう。

 狙い澄ますのは一瞬の隙だ。攻撃のために大剣を使った以上、盾として引き戻すためには数瞬の時間がかかる。それまでに槍を叩きこめば勝利だ!


 今までのシルの挙動速度から防御は間に合わないと確信し、これで今度こそ終わりだとヤリーオは笑った。

 だが、しかし。


「おっと、危ない危ないっと」


「なにぃッ!?」


 ガギィイイイイインッと甲高い音が響き渡る。なぜかシルは絶対的に不可能だったはずの防御をこなしてみせたのだ。

 さらに、


「アンタって地味な顔して強いわよねぇ。――だからもう、まともな戦い方はやめるわぁ」


 シルはヤリーオから高速で飛び退くと、そのまま踊るように大剣を振るって周囲の者たちを一切合切斬り飛ばし始めたのだった!

 これにはプレイヤーたちも混乱する。敵の指揮官が味方NPCごと大虐殺をおっぱじめるなど予想できるわけがない。

 

「なっ、なにがっ!?」

「うわーーーーっ!?」

「なんだこいつッ、狂ったのか!」


 一瞬にして戦場は悲鳴と鮮血で溢れていった。

 多くの者がモヒカンNPCたちと組み合っていたため、シルの突然の凶行に対処など出来るわけがない。首や手足や胴体が花吹雪のように散乱し、地獄が作り上げられていく。


 さらにはNPCたちまでもが異様だった。彼らはリーダーが暴れ始めたというのにニィっと笑みを深めると、プレイヤーたちの身を抑えて叫び始めたのだ。


「さぁシルの姐さんッ、盛大にぶっ殺してくれやーーーーッ!」

「オレも続くぜ戦友ッ!」

「敵ごとズパっと斬ってくだせーーーっ!」


 NPCたちの声に応え、シルは次々と大虐殺を続けていく……!

 もう何もかもが滅茶苦茶だ。彼女は敵味方問わず斬っていくどころか、むしろ味方のNPCを優先して斬っている節すらあった。


「アハハハハハハッ! あぁーーーーーーーやっぱりコレよコレッ! 殺戮最高ーッ!」


「な……なんという……」


 彼女の狂乱を前にヤリーオは顔を青くして震え上がった。

 それは他のプレイヤーたちも同じだ。「殺せ殺せ」と興奮しながら叫ぶNPCたちと、爆笑しながら淫らなドレスを真っ赤な血潮で染めていくシルの姿……その完全に常軌を逸した光景に、多くの者が恐怖に固まり散っていく。


 “ダメだ、このままでは雰囲気に飲まれる。まさかシルという少女はそれを狙っているのか!?”


 そう判断したヤリーオは、半ば焦るように駆け出した。

 とにかく殺す。今すぐ殺す。つねに最善手を選ぶことの出来る勝負勘が、一刻も早く彼女を止めろと叫び続ける。


「アーツ発動、『隠密行動』! 『攻撃強化』! 『刺突一閃』――ッ!」


 腹をくくったヤリーオは万能型ジョブ『ブレイブランサー』の技を一気に発動させた。

 存在感を希薄にする補助アーツに数秒だけ筋力を上げる強化アーツ、さらに鋭い突きを放つ攻撃系アーツの組み合わせにより、狂乱しているシルを一撃で殺すつもりだ。


 “これで、終わりだーーーーッ!”


 瞬く間に距離を詰め、シルの背に槍を叩きこもうとした――その時。


「あぁーチマチマやるのも面倒ねぇ! 一切合切、吹き飛びなぁあああああーーーーッ!」


 次の瞬間、シルが地面へと大剣を叩き付けたのだ。

 ……そして終わりは訪れた。まるで巨大隕石でも墜ちたかのように、地面が爆散して土の大津波が発生したのである――!

 

「はっ、はぁあああああーーーーーーーー!?」


 これにはヤリーオも対処不能だった。他の多くのプレイヤーたちと共に弾ける土石に吹き飛ばされ、高々と宙を舞っていく。

 そうしてゴミのように消し飛ぶ中で彼は気付いた。NPC一体を殺すことで速度が上昇し、そのほとんどを殺し尽くした果てにまるで意味の分からない威力の斬撃を可能としたということは……つまり、


「みッ……味方殺しによるステータスアップだとぉッ!?」


「大正解っと!」


 顔を引きつらせるヤリーオの前に彼女は現れた。

 なんとシルは大剣を放り投げるとそれに飛び乗って彼の前までやってきたのだ。強化に強化を重ねたステータスが、意味の分からない挙動を実現させていた。


「ウチのギルドのロリ職人が頭おかしくてねぇ。筋力値や敏捷値補正は高いのにほとんど防御力のないようなピーキー装備を渡してきた上、仲間を殺せば殺すほどステータスが一時的に強化されるやばい装飾品を作り出したのよ。

 『味方殺しの暗黒女騎士ってカッコいい』とかいう理由で……アイツ絶対に道徳の成績0点だわ」


 流石は魔王様の連れてきた女ねぇ~とぼやくように語るシル。だがヤリーオからすれば、味方の鮮血で全身を濡らした彼女も狂人にしか見えない。

 そして、その判断は何も間違ってはいなかった。


 かくして青ざめるヤリーオに対し、シルは空中を舞っていたモヒカンNPCの頭部を掴み、ニィイイッと笑みを深めたのだ。


「まぁ道徳的には落第点の装備だけど――プレイヤーキラーのアタシ的には百点満点なのよねぇえええーーーーッ!

 つーわけで死になさいよ地味顔勇者! アタシが気持ち良くなるためだけに、派手に爆散しろやオラァアアアアアアーーーーーーッ!」


 真下にいるヤリーオに向かい、シルは超絶強化されたステータスのままにモヒカン頭を投げつけた!

 それはまさしく終焉の一撃だった。一瞬にして光速に近づいたモヒカン頭は空気抵抗の中で溶け果ててエネルギーだけが残り、摂氏数千度の灼熱のレーザーと化したのである――!


「うぎゃあああああああああああああああーーーーーーーーッ!?」


 それを受けたヤリーオは絶叫を上げながら絶命した。

 彼にどれだけプレイングスキルがあろうが、最善手を選び続けられるような勝負勘があろうが、道徳心と味方を犠牲にして極限まで上げまくったステータスの前には何の意味もない。

 そんな、どこまでも暴力的なシルのプレイスタイルを前に、ヤリーオは塵となって消えていく。


 “ああ……もう地味だと言われても構わない。だから勇者ロールなんてやめて、二度と魔王ユーリの一味には関わらないようにしよう……!”

 

 最後に彼は、心に強くそう誓ったのだった……!



――そうして彼の脱落より数瞬後、敗北感に崩れ落ちたザンソードをユーリが抹殺。

 そしてそのままギルドコアを破壊し、長き戦いに決着を付けるのだった――。



・三人合わせて道徳0点、ユーリ軍団大勝利――ッ!


『更新早くしろ』『ホント更新早くしろ』『止まるじゃねぇぞ』『毎秒更新しろ』

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↓みんなの元気を分けてくれ!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ⚠️NPCに痛覚抑制機能はありません!⚠️
[一言] 0点で済むなんて良心的なテストだなぁ(遠い目)
[気になる点] か [一言] 大剣からの大地の津波とか中二の頃に絶対妄想したロマン攻撃やん。カッコ良すぎる
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