73:死闘、決着。そして――、
・みなさまのおかげで、4月に発売した『底辺領主』の二巻発売&コミカライズが決まりました! 本当にありがとうございます!
あと5月14日現在、みなさまのなろうのホームになんか自己主張激しすぎる変な名前の人のメッセージが表示されてますのでよろしければ読んでください!
「――がはッ、げほッ!?」
スキンヘッドに殴り飛ばされた俺は何度も地面を跳ねさせられた。
超強化スキル【鬼神化】を発動させたヤツの筋力値は異次元だ。感覚的なダメージ自体は痛覚制限機能によって最低限に抑えられているものの、衝撃と振動が俺の意識をかく乱し続ける。まるで洗濯機で回されたまま音速で転がされているような気分だ。
ああ、激闘に慣れていなければ失神してしまいそうになるほどの一撃だったが――それであの男が満足するわけがない。
スキンヘッドは大地が爆散するほどに踏み込むと、一瞬にして吹き飛ぶ俺の背後へと回った!
「へばってんじゃねぇぞユーリィッ! オラァッ、天まで逝きやがれぇええッ!」
そして下から迸る衝撃。スキンヘッドは丸太のように太い腕で、俺を力強く突き上げたのだ。
もはや好き放題の扱いだった。今度は上に向かって吹き飛ばされ、俺は瞬く間に上空何十メートルもの地点に到達する。
超高速で横から縦へと強引に振られ、意識はもう限界だった。
「なるほど、な……っ!」
白くなりゆく視界の中、目の前に『警告:意識レベル急低下中。ただちに回復の見込みがない場合は身体に異常が起こっていると判断し、強制ログアウトさせます。ログアウト処理まで、10……9……8……』と数を刻んでいくシステムメッセージが現れた。
それを見て俺は気付く。これがスキンヘッドの編み出した強引すぎる勝利法なのだと――!
「ガハハハハハハハッ! さぁ、オレ様の手で滅茶苦茶になってくれやユーリィイイイッ!
テメェに負けたあの日から、オレ様はテメェに夢中なんだよッ! どうしようもないほどドロドロ溜まった情熱を、テメェに全部ぶち込ませろやァアアアアーーーーッ!」
狂笑を上げるスキンヘッド。ヤツは地震が起こるほどの震脚によって地面を爆散させると、空中に浮かんだ破片を足場にして俺に向かって接近してきた――!
もはや意味が分からない。何でもありなVR空間だろうが身体を操るのは人間だ。運動感覚自体は現実と変わらない以上、そう簡単に漫画のような動きが出来て堪るか。
それを可能としているのはまさしく、ヤツの勝利への執念に他ならなかった。
「ユーリィッ、テメェこそオレ様の運命の宿敵だッ!
気も合えば話も合うし、一緒にいれば心が安らぐ! こんな出会いは初めてだっ!
あぁ、だからこそオレ様の手で死んでくれーーーッ! 身も心もオレ様にグッチャグチャに破壊されて、今度はテメェがオレ様に夢中になってくれやァアアッ!」
咆哮を上げながら天を駆けるスキンヘッド。【鬼神化】の影響によって全身の筋肉を灼熱化させていることもあり、その姿は狂気的だった。
そう、コイツの勝利に懸ける情熱は異常な領域に達していた。
俺一人を追い詰めるためにいくつものギルドを説き伏せたことはもちろん、食いしばりスキル【執念】と幸運値極振りによって限りなく死に辛い俺を倒すために、意識を断絶させることを狙うという発想がおかしい。
きっとアイツは俺の下まで到達したが最後、こちらが完全に気絶するまで上から下にと殴り飛ばし続けることだろう。三半規管がぶっ壊れるくらいに何度も何度も。
ああ、そんな恐ろしすぎるほどの情熱を燃やす男を前に――俺の胸は、熱く熱く昂った!
「ハッ、やってみろやスキンヘッドォオオオーーーッ!」
リアルの身体に異常が出ても構わないくらいにぶっ倒したいとか最高すぎるだろう! いろんなモンスターやプレイヤーと戦ってきたが、そこまで本気で勝ちに来た野郎は初めてだッ!
スキンヘッドの闘志を受けて俺の意識は一気に覚醒。強制ログアウトまで残り1秒のところで復活し、ヤツを真っ直ぐに睨みつける。
「チッ、目ぇ覚ましやがったか。このままテメェを好き放題してやろうと思ってたのによぉ!」
「寝たまま負けて堪るかこの野郎ッ! さぁ覚悟しろ、今度は俺がお前を逝かせてやらァッ!」
吼え叫びながら俺たちは空中で拳をぶつけ合った!
そうして弾かれ合うのと同時に、お互いがお互いを抹殺すべく行動を開始する。
「スキル発動、【武装結界】!」
俺の周囲に展開される無数の武装召喚陣。そこから覗く剣や槍がスキンヘッドを捉えるのと同時に、俺は漆黒の矢を構えた。ここで完全に終わらせるためにな。
対してスキンヘッドはニッと笑うと、漆黒の手甲を纏った拳を深く深く俺へと構える。
「アーツ発動、『パワーバースト』『パワーバースト』『パワーバースト』……ッ! さぁポンザベート、最後に目にもの見せてやろうぜぇ!」
『キシャシャ~!』
ヤツが選んだセカンドジョブ『サモナー』による強化系アーツを受け、手甲に宿ったシャドウ・ウェポン(たぶんメス)が最大まで力を高める。おそらくは最初に使ってきたロケットパンチをやるつもりだろう。
ったくなんて野郎だ……。スキル【鬼神化】による強制死亡が迫る中、なんとスキンヘッドはサモナー対決を挑んできやがった。
ああ……本当に本当に、お前は最高の男だよ。
「大好きだぜ、スキンヘッド。お前に会えて本当によかった」
「あぁ、オレ様もだぜぇユーリ。だから最後は……!」
「盛大に……!」
「「ブチかまそうやァアアアッーーーー!!!」」
咆哮と共に、俺たちは技を放ち合った!
先駆ける漆黒の矢を筆頭に、百を超える爆撃武装と宝剣や魔槍の群れをヤツへとぶつける。
対してスキンヘッドは空気が爆発するほどの勢いと共に、漆黒に輝く手甲を放った――!
武装の軍勢と究極の一撃がぶつかり合い、俺たちの間で大爆発が巻き起こる!
その爆風によって二人仲良く吹き飛ばされ合うが、この程度で怯むかーーーーッ!
「「さぁ死ねや宿敵ッ! 勝つのは俺だーーーーーッ!」」」」
最後の最後で俺たちが取った行動はまったく同じモノだった。
空中を舞い散る武器を足場とし、拳を構えて弾丸のごとく飛び掛かる――!
もはや戦術も戦略も隠し玉も一切ない。俺たちの中にあるのは、熱い男の意地だけだっ!!!
「「うおおおおおおおおーーーーーーーッッッ!」」
ああ、コイツにだけは勝ちたい! コイツにだけは負けたくない! 誰よりも男らしい親友にだけは、最期まで男を貫きたいッ!
そんな想いを胸に燃やし、ついに訪れた交差の時――!
「――俺の、勝ちだァ!」
ヤツの剛腕を掻い潜り、俺の拳が見事に顔面を捉えたのだった……!
「あぁ――……負けたぜ親友、テメェの勝ちだよ」
殴られた鼻を赤くしながら、地上に向かって堕ちていくスキンヘッド。
勝っても負けてももはや時間がなかったのだろう。地面に叩き付けられるよりも先に、【鬼神化】による死亡デメリットによってヤツの身体が消え去った瞬間――観客たちの大歓声が響き渡る。
『熱かったぜぇ、ユーリちゃんッ!』
『スキンヘッドもすごかったぞーーーー!』
『今度はオレたちも挑んでやらーーーーっ!』
俺と親友を称える声が花びらのように降り注ぐ。
かくしてダチとの二度目の死闘は、俺の勝利によって幕を閉じたのだった――!
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