72:三つ巴の決戦
ただいま!!!!!!!!!(´;ω;`)
「ユーリはオレ様の獲物だぁッ! 邪魔すんなら殺すぞ!」
「えぇい黙れ! そやつと闘るのはこの拙者だァッ!」
次の瞬間、スキンヘッドとザンソードは刃と手甲をぶつけ合った!
ギィイイイインッと響く金属音。さらに二人は止まることなく技を繰り出し、本気で命を狙い合う。
そんないきなりの展開に、実況役のチビ妖精・ナビィは大声を上げた。
『おぉーーーっと! ユーリさんのことを巡って、二人の男が殺し合いをおっぱじめましたぁあああッ!』
ってアイツ、なんで困惑じゃなくて興奮してるんだよ……? いきなり仲間同士で争い始めたっていうのに。
広場に集まった観客たちも『男同士の取り合いキターッ!』『いいぞぉやれー!』とハイテンションだ。
「……だけどまぁ」
高速で殺し合う男たちを見ながら俺は呟く。
戸惑いながらも、俺の胸にあるのは確かな喜びだった。
スキンヘッドは言うまでもなく最高のライバルだ。バトルロイヤルの時には頭が沸騰するような熱い戦いをしてくれて、今回は俺を倒すために何万人ものプレイヤーをぶつけてきてくれた。
ザンソードだって負けてない。いきなり現れた上に俺を差し置いて最強宣言してきた時には「なんだコイツ」と思ったが、技のキレは本物だった。レベルも上だし、たくさんの時間をかけて戦闘経験を積んできたのだろう。
「「うぉおおおおおーーーーーッ!」」
そんな最高の男たちが、俺と闘るために殺し合っているのだ。これで嬉しくないわけがない。
ゆえに、
「――俺を放置して、盛り上がってんじゃねぇぞコラーーーッ!」
連中に向かって二百を超える武装の数々を叩きこんだ!
それに対して瞬時に反応する二人。彼らは共に絶技を繰り出し、剣や槍を次々と弾いていく。
「くっ、そなたは引っ込んでいろ! このツルッパゲ男を殺すまでなぁッ!」
「って誰がツルッパゲだこの廃人野郎ッ!?」
罵り合いながらも、俺に対して抗議の視線を飛ばしてくる男たち。
だが、一言言いたいのはこっちだっつの!
「人のことを好き勝手に『自分の獲物』発言しやがって……。
いいかよく聞け野郎どもッ! 最後に勝つのはこの俺だ。お前たちが、俺の獲物になるんだよッ!」
「「ッ――!?」」
その言葉を放った瞬間、彼らの鼓動がドクンと跳ね上がるのを感じた。
スキンヘッドとザンソードは牙を剥き出すように笑うと、飛来し続ける武装を弾き飛ばしながら疾走してくる。
「テメェ、言ってくれるじゃねぇかユーリッ! 一発ブチ込ませろやオラァッ!」
「フハハハハッ、囀りおったなユーリよ! 我が刃で貫いてくれるッ!」
上等だ。俺は飛び掛かってくる二人に笑みを浮かべた。
最高の男たちがやり合っている姿をただ眺めているだけなんてもったいないだろう。
前からでも後ろからでも構わない。さぁブチ込んでくれスキンヘッド。さぁ貫いてくれザンソード。こちらも全力で相手をしてやるから!
ああ、何万人ものプレイヤーたちが見ている熱狂のステージなんだ。三人一緒に楽しもうぜ!
「ルールは単純、生き残ったヤツが最強だ! ――ジョブスキル発動、【禁断召喚】!」
「グハハハハッ、単純でいいじゃねェかオイッ! ――スキル発動、【鬼神化】!」
「フッ、やはり貴様は面白い女だ! ――必殺アーツ発動、『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』!」
次の瞬間、三者三様の輝きが戦場に満ち溢れた。
俺の背後からは漆黒の光を放つ召喚陣が現れ、闇の焔を纏ったキマイラモンスター『ジェノサイド・ファイヤーバード』が禍々しく羽ばたいた。
対するスキンヘッドは自身の肉体を変貌させる。額からは二本の角が生え、全身より灼熱の闘気を立ち昇らせた。以前の決戦でも使っていた、ステータスを大幅に上昇させる代わりに一分後に死亡するというスキルの効果だ。
そして最後にザンソード。こいつはセカンドジョブに選んだという『エンチャンター』のアーツを使い、全身を炎に包みこんだ。
その色は覚めるような青色だ。摂氏千度を超えることで変化する炎の完全燃焼状態……つまりはそれだけ強力ってことなのだろうが……、
「ん、ちょっと待てザンソード。たしか攻略サイトを覗いたときに書いてあったが、『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』って『エンチャンター』の上位職にならないと習得できないんじゃなかったか?
セカンドジョブで選べる職業って、初期のものだけなはずじゃ……」
「フハハッ、甘いなユーリよ! 75レベルに到達することで、セカンドジョブを進化させることが可能となるのだッ!
50レベルのときに貴様に負けてから数日……毎日二十時間も狩りを続けることで掴み取った、拙者の新たな力だーーーーッ!」
「って毎日二十時間!? お前死ぬぞッ!?」
もはや働けというツッコミ以前に、命が危ぶまれるほどの廃人っぷりだ。
俺とスキンヘッドは揃って顔をひくつかせた。この炎上ニート侍大丈夫かよ……?
とんでもないバカ野郎を前にスキンヘッドが提案してくる。
「おいユーリ、この炎上ニート侍を集中攻撃しねぇか? さっさとぶっ倒して強制的に休ませてやろうぜ……!」
「って誰が炎上ニート侍だッ!? えぇい、何にせよ勝つは拙者だーッ!」
激怒するザンソードの反応に笑いつつ、俺たちは油断なく全員を狙い合う。
かくしてここに、三つ巴の最終決戦が始まった。
「いけ、ジェノサイド・ファイヤーバードッ! 命を散らして奴らを殺せッ!」
『ピギャァアアアアアアアアアアッ!』
俺の命令に応え、地獄鳥は死の特攻を開始する。
コイツの攻撃方法はただ一つ。魔力を暴走させて大爆発を起こすだけだ。
はたしてジェノサイド・ファイヤーバードは二人に向かって着弾し、回避不能の大爆発を巻き起こしたのだが――、
「オラオラオラオラオラァーーーッ!」
「無駄だぁーーーーッ!」
必殺の一撃も宿敵たちには効かなかった!
スキル【神殺しの拳】の宿った鉄拳のラッシュで爆風を消し飛ばすスキンヘッドと、火炎の中を真っ直ぐに突き進んでくるザンソード。
まだスキンヘッドのほうは予想できたが、ザンソードのほうはどうなってんだ!?
「っ――たしか書いてあったな、『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』の効果は……!」
「応ともっ! 今や拙者はすべての攻撃に炎属性を帯びているだけではなく、炎攻撃を完全無効に出来るのだァッ! 死ねぇ、ユーリーーーッ!」
一足先にザンソードは切り込んできた! 俺は初心者の弓を盾のように構え、ヤツの刃を受け止める。
だが炎の魔人と化したザンソードの熱は、ジリジリと俺の肌を焦がしていった――!
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・『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』による効果発動!
一メートル以内に存在するプレイヤー・モンスター全てに『灼熱地帯』と同等のダメージを発生させます。最大HPより毎秒1%のダメージ発生!
スキル【執念】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【執念】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【執念】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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「ってマジかよコイツッ!?」
ただ近づいてるだけでダメージが発生するとか、HP1の俺にとっては鬼門すぎるだろ!?
さらにこちらは筋力値ゼロだ。それでも最低限、リアルの人間くらいの力は確保されているが、レベルを上げまくって超人と化したザンソードからすれば赤子同然。俺は瞬く間に抑え込まれていった。
ヤツは鼻先が当たるほどに顔を近づけてくると、苦しむ俺に言い放つ。
「さぁ、拙者のことを見るがいいユーリッ! どんなゲームでもトップに立ち続けてきた拙者に、初めて屈辱を味わわせた者よ!
貴様の宿敵はこの拙者だ! スキンヘッドなどもう見るな、拙者だけを意識して殺されろォオオオッ!」
「くそっ……!」
真正面からやり合える相手ではない。悪いがザンソード、少しズルをさせてもらうぞ!
「スキル、【武装結界】ッ!」
俺は抑え込まれながらも、必殺のスキルを発動させた。
その瞬間、ザンソードの足元から召喚陣が発生する――!
「なっ、これは!?」
察したようだがもう遅い。そう、【武装結界】は自分の周囲に武器を召喚するスキルだ。
つまりは自身の近くであれば、文字通り敵の足元を掬う使い方だって出来るんだよ!
「串刺しになりやがれーーーッ!」
そして炸裂する無数の剣山。ザンソードの足元から射出されたそれらはヤツの身体をズタズタに貫いていき、一気に宙へと吹き飛ばした。
「ぐぉおおおおおおおーーーーッ!?」
絶叫を上げながら空に消えていくザンソード。あれでも十分死にそうだが、油断なんてするものか。
俺はひさびさに弓矢を構えると、舞い上がっていくザンソードに狙いを定めた。
「これで終わりにしてやるッ!」
そうして弦から指を放そうとした時だ。背後よりダンッ! という音が響いたところで、俺はようやく気が付いた。
もう一人の宿敵、スキンヘッドが拳撃の構えを取っていたのだ――!
「ッ、スキンヘッド!?」
「よぉユーリ……オレ様以外の野郎と盛り上がりやがって……! オレ様だけを、意識しやがれーーーッ!」
咄嗟に振り向いたがもう遅い。鬼の鉄拳が俺の胸部に炸裂し、そのまま何十メートルも吹き飛ばされたのだった――!
色々あって更新が遅れてしまい申し訳ありません……!
25日にいよいよ『底辺領主の勘違い英雄譚』が発売となります!
表紙は↓のとおりエロエロですよエロエロ!
また帯には「乙一先生」がコメントを書いてくれました!本屋さんで要チェックしてくださいませ~!
『更新早くしろ』『ホント更新早くしろ』『止まるじゃねぇぞ』『毎秒更新しろ』
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