70:魔王軍、大集結!!!
・アンフロの主人公が地味にローン組んで畑付きの家を買ってるのに、こっちは教皇ぶっ殺して街を奪い取るという落差よ……!
https://ncode.syosetu.com/n1988gc/
数千人のプレイヤーに対する一騎駆け。それはあまりにも無謀を極めた。
「魔術系アーツ発動! 『メテオシュート』ッ!」
「斬撃系アーツ発動! 『飛燕刃』ッ!」
俺へと殺到する無数の攻撃。そのうち何発かをスキル【神殺しの拳】によって無力化するも、文字通り手が足りない!
ただでさえ多勢に無勢なのに、コリンとの戦いによって『部位欠損』という状態異常を負っていたからだ。治そうにもイベント用回復ポーションを使用している暇さえない。
『倒れろッ、魔王ユーリ!』
「がはっ、クソッ!?」
絶え間なく降り注いでくる遠距離攻撃の雨嵐。それにより俺は開戦十数秒にして30回は殺されていた。
ときおり爆破系武器を投げつけて一人や二人を爆死させるも、やはり敵の数が多すぎる。
「さぁて、どうしたもんかな……!」
スキル【武装結界】の封印が解除されるまで数十秒。それまで死なずに耐えることができるか……!
残った腕で必死に攻撃を弾きながら、流石の俺も冷や汗を流し始めた――その時、
「――我らが魔王殿を援護せよォオオオオッ!」
『ウォオオオオオオオオオオーーーーッ!』
ボロボロになった俺の背後より、野太い声が響き渡った!
それと同時に無数の武器が投げつけられ、敵プレイヤーたちに当たった瞬間大爆発が巻き起こっていく。
「な、なに……?」
この戦場はシルとグリムとNPCども以外、全部敵じゃなかったのか……? それに今のは爆発武器!?
一体何が起きているんだと、他の敵プレイヤーたちと共に攻撃の飛んできたほうを見ると、
「ご無事ですか、ユーリ殿。我ら『生産職革命軍』、アナタ様を援護しますぞ」
「あっ……アンタはクラフトメイカーの!?」
そこにいたのはメガネをキラッと光らせた生産職の先輩だった。
さらに彼の背後には、工房にいた他のクラフトメイカーたちや職人らしき恰好をした者たちが数百人と揃っていた。
「アンタたち、どうして……!?」
「愚問ですなぁユーリ殿。生産職はみんなで仲良く協力し合うのがモットーですぞ? その輪の中には当然ユーリ殿も入っている。
そして何より、アナタは我らにこう言ったではありませぬか。『本当にこのまま、戦闘職に舐められっぱなしでいいのか』と。
――それが嫌だから、こうして意地を張りにきたのですぞ」
そう言って先輩は俺を守るように敵プレイヤーたちの前へと立った。
さらに他のクラフトメイカーたちも自信満々の笑みで、次々と先輩に並び立っていく。
この光景に困惑したのは俺以上に敵プレイヤーたちだ。
いきなり戦場に現れた生産職たちを前に、何のつもりだと吼え叫ぶ。
「なっ、なんだよテメェら!? 邪魔するならユーリと一緒にぶっ殺すぞ!」
「やれるものならやってみるがいい! 我ら生産職の真の力、貴様らに見せてやろうッ!」
かくして戦いは始まった。
気を取り直して武器を構えなおす敵プレイヤーたち。彼らは戦闘ジョブ特有の斬撃系アーツや魔法系アーツを放ち、盾突いてきた生産職プレイヤーたちを撃滅せんとしたのだが、
「フハハハハハハッ! 遅い遅いそして弱いッ!」
ここでさらに意味の分からない事態が発生した!
非力に見えた生産職プレイヤーたちが、シュババババババッとものすごい速さで動き回り、敵プレイヤーたちの攻撃を避けまくっていったのだ!
あまりにも速すぎる動きに自分でも制御しきれないのか、よろけて攻撃が当たってしまうことがあるも、それほど効いていない様子で再び前へと突撃していく。
その光景に敵プレイヤーたちが混乱する。
「なっ、なんだコイツらーーー!? 生産職って戦えないはずじゃッ!?」
「フハハハッ! それは間違いですぞ戦闘職どもッ! 我らはあくまで攻撃手段がなかっただけなのだ!
そう……我らは自分たちでさえも戦えないと諦めきり、フィールド素材の収集に専念するために、ステータスポイントを防御値や敏捷値だけに振り続けてきた!
つまりしぶとさと素早さに関しては、貴様たちよりも上なのだーーーーッ!」
「はぁーーーっ!?」
驚愕の声をあげる敵プレイヤーたちを前に、ついにクラフトメイカーたちはカサカサカサッと動き回りながら攻撃の雨を突破する。
そうして敵の眼前に躍り出ると、全員がその手に巨大な大剣を顕現させた! どれもこれもが爆破武器のようで、赤黒いオーラを纏わせている。
……ってちょっと待て!?
「ちょっ、そんなデカい武器持てるのかよ先輩!? 防御値や敏捷値だけを上げ続けてきたってことは、筋力値は最低辺なんじゃ……あッ!?」
言いかけたところで俺は気付いた。
このゲームにおいて俺こそが一番知っている。システム的に持てない武器を持ったらどうなるか……その結末を!
「フハハハハ、気付きましたかなユーリ殿!? モノ作りの極意は他者の技術を盗むこと……魔王殿の必殺奥義、パクらせてもらいますぞーーーッ!」
先輩が叫ぶのと同時に、みんなが手に持った大剣の数々が一斉に射出された!
そう、持てない武器を無理やり持てば、システムによって弾かれてしまうのだ。
それによって無数の武器は敵プレイヤーたちへと襲い掛かり、接触した瞬間に大爆発が巻き起こる――!
「ぎゃあああああああああッ!? なっ、なんだそりゃーーーッ!?」
絶叫を上げながら吹き飛んでいく敵たち。そんな彼らに生産職の者たちは情け容赦なく武器を射出し、戦場を地獄に変えていく。
その光景に俺は苦笑いするしかなかった……!
「ははははっ……ああ、お前ら最高にカッコいいわ……!」
「フッ、全ては魔王殿のおかげですぞ。アナタ様が我らのケツを蹴り上げてくれたからこそ、我らは参戦を決めたのです。
さぁ、ここは任せていきなされ魔王殿ッ! 敵のギルドに所属している生産職仲間からの情報によると、スキンヘッドとザンソードめがいるのは、この先にある巨岩城ですぞ!」
ふはっ……情報のリークまでこなしてくれるとは、本当に頼もしすぎるぞ生産職……!
敵を爆殺しながらハイになって笑うクラフトメイカーたちを前に、こいつらだけは敵に回さないでおこうと俺は誓うのだった。
さぁ、彼らが時間を稼いでくれている間に行くとするか。
そうして俺が駆け出さんとした時だ。爆殺武器によって全身をグチャグチャにされながらも、何人かの敵プレイヤーが爆炎の中から飛び出してきた。
「クソがぁッ、行かせるかぁあああああッ!」
「生産職どもなんかに負かされてたんじゃ、オレたちのメンツが立たねぇんだよォオオオーーーッ!」
黒焦げになりながらも襲い掛かってくる者たち。
――だがその時、さらなる横槍が彼らの命を奪い取る。
「よっしゃァ、コイツら弱ってるぞ! 集団でグチャグチャにしようぜーーーー!」
『わーーーーーーーーーーいッ!』
次の瞬間、俺の背後よりまたも多くの集団が現れた。
彼らはピカピカの武器を手に、HPも残りわずかになっていた敵プレイヤーに対して一斉に飛び掛かっていったのだった。
「えっ、えええええッ!?」
「「「わーーーーい死ねぇえええええええええ!」」」
……たった数名を相手に数百名で襲い掛かり、グチャッブチュッゴチュッと槍やら剣やらを突き刺しまくって無数の肉片に変えていく。
そんな鬼畜集団の顔に、俺は見覚えがあった。
「……よぉお前ら、元気そうだな」
『あっ、魔王様だーーーーーーーーーーーー!』
俺を見るや目をキラキラと輝かせる鬼畜集団。
そう、彼らは俺が遊んでやった初心者プレイヤーたちだった。
たしかどこのギルドにも入れてもらえなかった連中のはずだが、どうしてこいつらまでギルド戦にいるんだ?
そう首を捻った時、後ろから「さあ、敵は弱ってますわよ! どんどんグチャグチャにしてやりなさい!」とお上品にえげつないことを言う声が飛んできた。
って、
「フランソワーズ!? なんでここに!」
「あらユーリさん、ごきげんよう。
うふふふ……実はアナタが初心者プレイヤーたちのためにプチイベントを開いてくれたと聞きましてね。
わたくしも負けていられないと思いまして、急遽『みんなで殺そう! 初心者部隊!』というギルドを作って参戦させてあげることにしましたの!」
みなさん大喜びですわ〜と華やかに笑うフランソワーズ。
焼き焦げた戦場に白いドレスの彼女の姿は非常に浮くが、ときおり手にした傘からレーザー魔法をぶっ放して敵を殲滅しているあたり、セカンドジョブ獲得に至ったほどの高レベルプレイヤーなんだろう。本当にどいつもこいつも怖すぎるな……!
「さぁ魔王様、ここは生産職ギルドのみなさまとわたくしたちが引き受けます。どうか存分に戦いを楽しんで来てくださいませっ!」
「……ああ、もちろんだ!」
彼女の言葉に力強く頷く。
頼もしすぎる仲間たちの想いを受け、俺はスキンヘッドの下へと駆けていったのだった。
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『毎秒更新しろ』
と思って頂けた方は、最後に『ブックマーク登録』をして、このページの下にある評価欄から評価ポイントを入れて頂けると、「出版社からの待遇」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!
↓みんなの元気を分けてくれ!!!