69:セルフロケットパンチッ! ユーリちゃん!!!!!
なかなか返信が出来ず申し訳ありません!
みなさまからのご感想、いつも楽しく見させていただいておりますよ!!!(´;ω;`)
「「倒れろォオーーーーーーーッ!」」
焼け焦げた戦場で幕開けた俺とコリンの一騎打ち。俺たちは同じタイミングで駆け出した。
「来やがれポン太郎どもォッ! いくぞーーー!」
両手に十一本の矢を握り、短剣のごとく斬りかかる。
本業の近接職であるコリンに対してこんな無茶をする理由は単純。向かって来ている数千人のプレイヤーどもを足止めしている使い魔たちが、『滅びの暴走召喚』の制限により30秒しか持たないからだ。
ちらりと視線を向ければ範囲攻撃から特大火炎放射まで使って暴れ回っているようだが、全滅させるには至らない。プレイヤーどもも時間制限を意識してか逃げ回るように努めている。
一応チュン太郎も向かわせたが、流石に敵の数が多すぎる。
対してコリンはというと、
「死ねーーーッ!」
スキル【軽量化】とアーツ『ウィンドショット』の加速コンボ。それを用いて弾丸のごとく俺の下へと飛び込んできた。
ギィイイインッという音を立てて漆黒の光に包まれた矢と青い光を放つ霊刀がぶつかり合う。
そのたびにコリンは【魔王の波動】の効果によって吹き飛ばされるも、一切怯みはしない。
空中でくるりと姿勢を整えては、風魔法の噴射によって何度も何度も何度も何度も、突き殺そうと蜂のように襲い掛かってくる。
その無謀ともいえる猛攻っぷりでわかる……彼女もまた短期決戦を狙っていることに。
「あんまり時間をかけすぎると、霊刀の効果で封印した【武装結界】が復活しちまうからな。そしてなにより、他のプレイヤーどもに駆けつけられて一騎打ちを邪魔されたくないってか」
「ええ、大正解ですよッ! アナタはもはやこのゲームの顔とも言える存在です。そんなアナタをはじめてぶっ殺したプレイヤーになれれば、わたしの名前も伝説になるッ!
もう嫌なんですよ……ベータテスターでありながらスキンヘッドさんやザンソードさんのように名を上げることも出来ず、中途半端な存在でいるのはーーーッ!」
ガンッガンッガンッ! と激しさを増していく刺突の連打。
弾いてからコンマ1秒もかからずに繰り出される連続攻撃により、徐々に対処するのも難しくなってきた。
はははっ、やりやがるなぁコリン……スキル【軽量化】とこちらの【魔王の波動】による吹き飛ばし効果を利用した疑似的なヒットアンドアウェイ戦法か。おかげで反撃さえもおぼつかない。
さらに【禁断召喚】による爆破系キマイラなどの召喚も警戒してか、付かず離れずの状態を無理やり維持してきやがる。
ああ、認めてやるよコリン。お前は強敵だ。
だったら――。
「――よっと」
「え?」
彼女の繰り出した何度目かの刺突攻撃。俺はそれが迫りくる直前、右手に握ったポン太郎たちの鏃を使い、自分の片腕を肘から切り落とした――!
鮮血を撒き散らしながら舞い散る左腕。その光景に、コリンの表情が一瞬無になる。
そら、惚けてる場合じゃないぞコリンッ!
俺は【執念】によって自傷から生き残りながら、足を思い切り後ろに振りかぶり、
「食らいやがれーーーーッ!」
空中に舞う自分の腕の切断部を、短刀を構えたコリンへと全力で蹴り飛ばした!
スキル【魔王の波動】によってすさまじい衝撃が発生し、ロケットパンチとなって彼女に迫る――!
「なっ、ええええええええッ!?」
驚愕の声を上げながら飛んできたソレへと咄嗟に刃を当ててしまったコリン。
だが攻撃を防いだ瞬間、グチュリと響いてきた音にそれは失策だったと彼女は気付く。
柔らかな肉に鍔まで埋まり、リーチのわずかな『短刀』の刃が完全に隠れてしまったからだ……!
「し、しまっ――!?」
「刃で刺したら効果が発動するんだろう!? だったらそいつはもはやナマクラだ!
さぁ、これで決着と行こうかーーーーッ!」
片手に握った複数本の矢を構え、飛び掛かってきていた彼女に向かって突き出した!
薄い胸へと鏃が刺さり、コリンの口から「がはッ!?」と鮮血が噴き出す。さらに、
「終わりだコリン。モンスタースキル【闇分身】発動!」
そして解放されるシャドウ・ウェポンたちの能力。漆黒の矢がコリンの体内で分裂を果たし、彼女を内側から引き裂いていった――!
「がッはぁああああーーーーッ!?」
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・プレイヤー:コリンさんを倒しました!
ユーリさんにイベントポイント+1!
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ファンファーレと共に表示されるメッセージウィンドウ。
こうして二人の一騎打ちは、俺の勝利で幕を下ろしたのだった。
だが……、
「はっ、ははは……やっぱり強いですねぇ、ユーリさんは……相変わらず戦い方が意味不明ですよ……ロケットパンチってなんですか……」
粒子となって消えていくコリン。彼女は悔しげな声で呟きつつも、最後に俺へと言い残していく。
「残念ながら負けてしまいましたが――任務は果たさせていただきましたよ」
そう呟いて消えた瞬間、背後よりザッと複数の足音が響き渡った。
……振り返るとそこには、数千人のプレイヤーたちが燃え落ちたファイヤーバードの死体を背に立っていたのだった。
『いくぞ魔王! 次の相手はオレたちだッ!』
武器を構えながら一斉に吼え叫ぶプレイヤーたち。
対して俺は【武装結界】を封印されたままの状態だ。おそらくはまだ一分近く解除までかかるだろう。
コリンは見事に俺を弱体化させ、必殺アーツ『滅びの暴走召喚』を使わせた上にこの場に縛り付けてみせたのだった。
やるなぁアイツ……試合には勝って勝負には負けたって感じだ。この戦いが終わったら、ウチのギルドにスカウトするのもいいかもな。
そんなことを考えつつ、俺はプレイヤーたちへと叫び返す。
「さぁ、かかってこいよお前らッ! 悪いが全員倒させてもらうぞ!」
ここで死ぬわけにはいかないからな。
数日前の宣言通り、俺のことを集団戦法でグッチャグチャにしにきたスキンヘッドの野郎をぶっ殺してやらなければ。
宿敵との熱戦を夢に見ながら、俺はプレイヤーたちへと駆けて行ったのだった。
・ギルド戦終了まで、あと三話です――!
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