６８：かかってこいよ、コリンちゃん！！！
・ブレスキの発売時期が決まりました！
ざっくり冬です冬！ たぶんブレスキ終わってるんですけどおおおおッ！？(´;ω;｀)
ズドンッ！ という音を立てて俺は地面に着地した。スキル【魔王の肉体】のおかげで落下ダメージは皆無だ。
「くそっ、やりやがるなコリン……！ 一体いつの間にチュン太郎の上にっ、」
そう呟いた時だった。頭上に影が差し掛かったと思いきや、コリンのヤツが俺を殺すべく落ちてきたのだ！
はははっ、ぼやく暇も与えないってか。やる気いっぱいだなアイツ。
付近の砦から数千人の敵プレイヤーたちが迫りくる中、俺は彼女と対峙する。
「いいぜ、来いよコリン！ 勝負だッ！」
「ええ、アナタを殺してトッププレイヤーの座を奪い取ってやりますよッ！」
俺は弓を構えると、コリンのヤツを射ち墜とさんと数本の矢を一気に放った。
彼女の武器は短刀一本。全て弾くのは難しい上、空中では身動きが取れないので回避することも困難だ。
さてどうなるかと思いきや、
「スキル発動、【軽量化】！ さらに魔法系アーツ発動、『ウィンドショット』！」
その瞬間、コリンは一発の弾丸となった！
セカンドジョブに魔法使いを選んだのだろうか。それによって使えるようになった風魔法を、なんと背後に射出してスラスターとしたのだ。
小さな身体を活かして矢が殺到する寸前の隙間を縫い、俺に向かって降り注いできた――！
「死んでくださいユーリさんッ！」
「ハッ、死んでと言われて死ねるかよぉッ！」
俺は弓をそこらへんに捨てると、拳を突き出して彼女の短刀へと叩きつけた。
拳を無敵化するスキル【神殺しの拳】と衝撃を発生させる【魔王の波動】が同時発動し、俺の腕は生身でありながら凶器と化す。
刃とぶつかり合った瞬間、ギィイイイイイインッ！ という異音が戦場に木霊した。
「っ……やっぱりそう簡単には倒せませんねっと！」
激突は一瞬。コリンはくるりと身をひるがえして地面に着地する。
【軽量化】というスキルの効果だろうか、まるで猫のように足音さえも立てない身軽さだ。
「なるほどな……風魔法とスキルの組み合わせで、上空にいる俺の背後まで飛んできたわけか」
俺の回答に彼女は頷き、青く輝く刃を自慢するように見せつけてくる。
「さぁさぁユーリさん、私の『霊剣フツノミタマ』は強いですよぉ！ どんなふうに突き刺しても１ダメージしか与えられない武器ですが、代わりにスキルのランダム封印が行えるんです！
まぁ、自分の筋力値に比べて相手の防御値が高すぎれば、効果が発動しないという条件もありますが……わかりますよねぇ？」
「ああ、ＨＰは１で防御値はゼロな俺を倒すにはピッタリな武器ってわけだな。
――そしてお前はスキンヘッドにこう言われたな。
『殺せそうなら殺していいぜ。だが無理そうなら、温存していた数千人のプレイヤーどもと一緒にユーリを焦らせて、必殺アーツ「滅びの暴走召喚」を使わせろ』――と」
「っ……！？」
余裕のあった彼女の表情がわずかに硬くなった。どうやら正解みたいだ。
ったく、あのダチ公め……どんな手を使ってでも本気で俺を殺しにきてやがるな。
顔に似合わずネチっこい手を使いやがって。なんて野郎だ、大好きだ。
「う、うぅ……正解ですよ。最初の数発でスキル【執念】を封印できなかったら、殺すのは二の次にして弱体化に務めるつもりでした……」
「急に武器をペラペラ紹介し始めるやつなんて、時間を稼ぎたいかただのアホのどちらかだからな。
半ばブラフだったが、当たってたようで何よりだ」
「うぎぎぎぎぎ……ッ！？ じゃ、じゃあ、どうしてスキンヘッドさんに言われた言葉が一字一句あってたんですか！？ むしろそっちにビックリなんですけど！」
「えっ……あーなんでだろうな？ なんかこう、アイツとは語り合わずとも通じ合えるっていうか……？」
「ってなんですかそれ！？」
なぜか顔を赤くしつつ「恥ずかしいこと言わないでくださいっ！」と叱りつけてくるコリン。
はて、どこらへんが恥ずかしいのだろうか？ 要するにアイツとは気の合う友達同士だからと言ってるだけなのに。
う～んと首を捻る俺に対し、コリンはふと訊ねてくる。
「……それでユーリさん。私の狙いに気付いているのに、どうして仲良くおしゃべりに興じているんですかね？
『ユーリのことだからま～た虐殺しまくるだろう』と読んでスキンヘッドさんが温存させていたプレイヤー集団、もう間近まで迫ってますよ？」
「うん？ そんなの決まってるだろ。――アイツの策と、なによりお前に、真正面からぶつかるためだよ」
そうして俺は超大量の召喚陣を顕現させた。
コリンが驚愕に目を見開く中、俺は特大のアーツを発動させる。
「必殺アーツ発動、『滅びの暴走召喚』！ さぁモンスターどもよ、プレイヤーの軍団を迎え撃てッ！」
『ギシャァァァアアアアアッッッ！』
そして放たれる百体のモンスターたち。どれもが元々超高レベルな奴らな上に、俺に経験値を与えられて強化されている。数では劣るが、一筋縄ではいかないはずだ。
俺はモンスター軍団を見送り、瞠目しているコリンのやつに対峙する。
「なっ……その技、再発動まですごく時間がかかるはずですよね！？ それなのになんで……！」
「言っただろうがコリン。お前とぶつかるためだってな。
最初の数発で仕留めきれなかっただけで、もう諦めるのか？ もう満足か？ スキンヘッドの言いなりになって、あとは戦力を削れれば上等？
――違うだろう。お前の口から出た、俺を殺してトッププレイヤーの座を奪い取るという言葉。あれこそがお前の本心のはずだ」
「っ……！」
俺の指摘に、コリンは短刀を強く握りしめた。
彼女の大きな丸い瞳に再び戦意が宿り始める。
「強くなって尊敬の目で見られるために、アーツとスキルの組み合わせを考えてきたんだろう？
俺みたいに注目を集めて気持ちよくなりたいんだろう？
ああ、だったら来いよッ！ 俺に勝ったら今日からお前が最強だ！ 燃え尽きるまで殺し合おうぜ、コリンッ！」
「い……言われなくても、やってやりますよぉおおーーーーッ！」
咆哮と共にコリンは一気に駆け出した。
こうして俺はいつか助けた少女との、熱い殺し合いを開始するのだった。
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