5:目指せ、ポン太郎マスター!
前回のあらすじ:弓を使うことを諦めました。
「よーしよしっ、勝った勝ったーーー! ……ってイタタタタッ!?」
はじめての勝利に喜んでいた時だ。不意に片腕に鈍痛が走った。
……そういえばズバッと切り落とされてたんだったな。ゲームだから痛覚制限はされてるが、それでもちょっと痛いし不快感が半端ない。
俺は急いで『初心者用ポーション』を手元に呼び出し、それを傷口にかけた。すると視界の端にあるHPバーが回復するのと同時に、傷口がパァっと光って腕が生えてきた。
ちなみに地面に落ちていた腕は溶けて消えた。草木の栄養になってくれ。
「よし、これで身体も元通りだぜ! さて、それよりも……」
治った腕を動かしながら、先ほどのことを振り返る。
たしかメッセージの最後に『調教完了! リビング・ウェポンが仲間になりました』ってあったよな?
……あいつのこと粉々に殴り砕いちまったんだけど、その場合どうなるんだろうか? 破片を集めてボンドでくっつければ復活するのかな? めんどくさくてやりたくないんだが。
無駄にデカい胸の下で腕を組み、う~~~んと首を捻っていた時だ。リビング・ウェポンの柄を殴り飛ばしたほうから、何やらフヨフヨ~っと黒いモヤが漂ってきた。
むッ、新しい敵かッ! 俺はすぐさま落ちていた矢を握り締め、モヤモヤ野郎へと向ける!
弓を使うアーチャーなんてもう古すぎるッ! これこそが天才的な俺が生み出した、矢を絶対に当てるためのバトルスタイルだ! 的に当てたきゃ近づいてぶっ刺せばいいんだよーーーーーーーーッ!
「さぁきやがれッ! ぶっ殺してやる!」
『キシャァ! ウラメシクナイヤ~~!』
するとどうだろう。黒いモヤは地面にうずくまった後、ひっくり返って腹(?)を見せ始めたのだ。なんだコイツっ、なんか犬みたいで可愛いなぁ!
楽しげに謎のモヤを見ていると、メッセージさんが文字を表示した。
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リビング・ウェポン(素体)はアナタに完全服従しています。
リビング・ウェポン(素体)に新しい憑依先を設定してください。武器アイテムに限ります。
武器が損壊した場合、モンスターは死亡します。
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んっ、あーーーそういうことね! コイツは錆びた剣に芽生えた魂そのものか!
う〜ん弓はゴミだからそのへんに捨てたし、それならば……、
「おいポン太郎、この矢に憑りつくことは出来るか?」
『キシャ~~~!』
手にしていた矢を突き出すと、リビング・ウェポンことポン太郎は細い矢の中に沁み込んでいった。
その瞬間、矢が漆黒の光に包まれる――!
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武器アイテム『初心者の矢』に憑依させました!
武器の威力に憑依させたモンスターの筋力値を加算します!
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メッセージさんがそんな表示を! むむむむっ、つまりは俺の貧弱すぎる筋力値問題解決ってことじゃねーか! これで相手に十分なダメージが与えられるぜーーーーーーーー!
「よーしよしよしよし! これからよろしくな、ポン太郎ッ!」
『キシャーッ!』
柄の部分にすりすりと顔をすり寄せると、ポン太郎もブルブルと震えて喜びを表してくれた!
……ってそういえばコイツ、剣に憑依してた時はふよふよ飛んだりしてたよな。
「ポン太郎……お前、矢に宿った状態でも飛べたりするのか?」
そう言って放してみると、ポン太郎は見事に俺の周りを飛び回った!
おっ……おおおおおおおおおおおおおッ!? これならもしかしたら、弓の命中率問題を解決できるんじゃないかッ!?
俺はポイ捨てした弓を拾い上げると、何十メートルか先で動いてる毛玉……たぶんホーンラビットに向かって矢を構えた。
「よーし……いってこい、ポン太郎ッ!」
『キシャアアアアアアアアアアアッ!』
するとどうだろう! 弦から放たれた勢いのままに、漆黒の光を纏った矢は複雑怪奇な軌道を描いて、見事にウサギの頭に突き刺さったのだ!
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スキル【致命の一撃】発動! ダメージアップッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ激増ッ!
ホーンラビットを倒した! ユーリとポン太郎は経験値を手に入れた!
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ポン太郎自身のステータスが加算されてることに加え、幸運値極振りにより発動するダメージアップスキルとクリティカルヒット……! これによってホーンラビットは一撃で死に絶えるのだった。
さらに……、
『キシャ~!』
どうですか姉貴ィッ! とでも言うように、ポン太郎を宿した矢は高速で俺の手元に戻ってきたのである! これで矢を消耗してしまう問題も解決だ!
ああ……この瞬間、俺は確信した!
「……『サモナー』で『運極振り』で『弓使い』の組み合わせ、これなら戦えるじゃねえかあああああああああッ!」
いけるいけるいけるいけるッ! まだ防御面の不安も残るが、これなら十分戦えるッ!
これならガセ情報を書いた連中……初心者を騙すような悪質なβテスターどもをギャフンと言わせられるッ!
よーーーーーーーーーーし! この組み合わせで、なってやるぜトッププレイヤーッ!
「いくぞポン太郎、今日は徹夜で狩りまくりじゃああああああああああッ!」
『キシャーッ!』
元気に叫ぶ相棒と一緒に、俺は次の獲物を探して走り出したのだった!
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