57:(死体)生産職、ユーリちゃん!!!
さて、イベントまで残すところ二日。何時間も狩り続けたことで、いよいよ使い魔になったモンスターも9999体に達しそうだ。先日は『禁断邪竜クトゥルフ・レプリカ』のやつもゲットしたし、これで街の防備は完璧だな。
やっぱりセカンドジョブ『クラフトメイカー』を獲得したのが大きいな~。アイテムボックスの量が増えたことで【武装結界】で飛ばせる武器の数が増え、ラクにモンスターを狩りまくることが出来た。
だがしかし、
「う~ん、一発一発の威力が問題なんだよなぁ。数匹のモンスターが相手なら百発くらい剣の雨を降らせれば勝てるけど、イベントだと何万ものプレイヤーを相手にしなくちゃいけなくなるわけだし」
ヘルヘイムの街にある定食屋にて、カツ丼をモショモショ食いながら俺は考え込んでいた。
ちなみに周囲ではモヒカンに世紀末みたいな裸ジャケットになったサモナーNPCたちがバクバクと飯を食っている。こいつら、人格が悪属性になったせいで見た目まで変わっちまったな。
まぁこいつらのことは置いといて……そう、【武装結界】による射出攻撃はあんまり強力なものじゃないのだ。
何しろ、筋力値ゼロの俺が武器をぶん投げただけって判定になってるからな。ダメージアップ系スキルで威力を増幅させても微妙なのだ。
激レアで重いモノや状態異常を起こす武器を大量に射出することで誤魔化してるが、敵が武器の量を上回るような大軍であることを考えると、それだけでは足りない気がする。モンスターと違って、プレイヤーはアクセサリーで状態異常を防ぐことも出来るわけだし。
「街の防備は完璧でも、それだけじゃイベントで暴れられないよなぁ。たしか敵のギルドをぶっ潰せば勝利って条件だから、どうしても攻めに行く必要があるし。
なぁ店主、アンタはどう思う?」
「へっ、へいッ!? い、いやあの、自分料理人なんでそういうことはわからなくて……!」
「だよなぁ」
ビクビクしながら俺やサモナーたちを見ていた店主NPCに聞いてみたけどダメだった。ちょっとテロを起こして街を乗っ取っただけなんだから、いい加減懐いて欲しいものだ。
う~ん、まぁ料理人に聞いてもしょうがないよなぁ。料理ばっかり作ってるわけだし、戦いのことなんて……んッ、作る!?
「ハッ、それだッ! 武器の威力をさらに高めればいいだけじゃないか!」
シンプルかつ合理的な答えに俺は辿り着いてしまった! そう、何しろ今の自分は『生産職』なのだ!
高級武器や限定武器をそのまま使って満足するのではなく、さらに手を加えて強化すればいいじゃないか!
「よし、今から武器をいじりまくってくるわ! じゃあな店主!」
「えっ、たしか魔王様ってクラフトメイカーになったばかりですよね!? なら気を付けたほうがいいですよ……素人がヘタにいじった武器は、爆発するとか聞いたことが……」
「ばばばばっ、爆発だってーーー!?」
おいおいおいおいおい、なんだよそれ!? 最高じゃないか!
俺はあくまでも武器を振るうのではなく射出するんだ。だったら爆発なんて望むところだ! むしろミサイルみたいでカッコいいじゃん!
俺は店主に――いや、『先生』に礼を言う!
「ありがとう先生。アンタのおかげで道は見えた……! ミサイルを作ってぶっ放せばいいんだな!」
「せ、先生!? いやていうか、あっしの発言からどうしてそんな頭のおかしい結論にッ!?」
「サモナーたちよ、聞いていただろう!? この人のおかげで死体の山を量産しまくれるぞッ!」
「ヒューッ! なんてクレイジーなアドバイスをするんだ!」「ただモンじゃねぇぜ店主さんよォ!」「よっ、血も涙もない戦争屋の鑑ッ!」
「ええええええええ!?」
ワイワイと騒ぐモヒカンたちと(たぶん)喜びの声を上げる先生に手を振り、俺はさっそくグリムの工房に向かって行った。
あいつはNPCたちの装備を揃えるのに忙しいからな。一角だけ貸してもらって、自分の武器は自分で何とかするとしよう。
よーーーし、生産職として頑張るぞー!
・はじめてのこうさく: ミ サ イ ル !
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