49:最強の座をかけて!
「27:魔王ユーリ誕生」より抜粋:
『レーザーの放射された地域から数多の絶叫が響き渡る。さらにギガ太郎は身体の向きを変え、周囲をグルリと一周するように焼き払っていった!
プレイヤー:ヤリーオさんを倒しました! プレイヤー:シルさんを倒しました! プレイヤー:コリンさんを倒しました! プレイヤー:ザンソードさんを倒しました!←』
ザンソードつぁん……!(´;ω;`)
ザンソード。たしか前回のバトルロイヤルイベントでも活躍していた男で、スキンヘッド曰く六十四のギルドのまとめ役となったプレイヤーだ。
俺が参加した第一回目のバトルロイヤルでは見かけなかったが、まぁ用事があって途中から参加したのだろう。
「人を差し置いて最強宣言とは、腹は立つけどいい根性してるじゃねぇか。いいぜ、相手になってやるッ!」
漆黒の矢を手元に呼び出し弓につがえる。それを合図に、ヤツは一気に駆け出した!
「参るッ!」
着物をなびかせながら超高速で駆けてくるザンソード。そんなヤツに対し、俺はスキル【武装結界】を発動させた。
俺の周囲に合計十六の魔剣や魔槍が浮かび上がり、ザンソード目掛けて射出される!
だが、
「アーツ発動、『居合一閃』『弧月烈閃』『斬空殲滅迅』!」
伊達にアイツは最強のプレイヤーを名乗ってはいなかった。手にした刃が超高速で振るわれるたび、キンキンキンッ! という音を立てながら全ての武装が弾き飛ばされていく。
それに加えて一切足は減速しない。アーツによって繰り出される強烈な斬撃を放ちながら、ザンソードは俺の目の前にまで距離を詰めた!
「貴様は覚えていないのだろうが、拙者は貴様に借りがある身だ。あの日の屈辱、晴らさせてもらうッ!」
って何のことだ!?
そう聞き返すよりも前に、超神速の刃が俺を袈裟斬りに切り裂いた!
あまりの速さに傷口からパァッと一瞬遅れて血が飛び出る。
「がはっ!?」
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・スキル【執念】発動! 致命傷よりHP1で生存!
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血を吐きながらも、食いしばりのスキルによって一度は耐えることが出来た。
だがザンソードもそれは予測済みだった模様。ヤツは無駄に貫禄の顔に笑みを描き、油断せずに追撃をかます――!
「五秒に一度しか耐えられぬことは把握している! ゆえに、これで終わりだァアアアッ!」
必殺アーツ発動、『斬空閃裂破』!
そう叫んだ瞬間、ヤツの振るった刃から『光の斬撃』が放たれた。
もはや剣術ではなくレーザーだ。それによって俺は斬り飛ばされ、壁際にまで叩き付けられた……!
これで決着。そう思い込んだザンソードはチャキンッと刃を鞘に納め、俺の死体に背を向ける。
「消え去る前に語ってやろう。……拙者は第一回目のバトルロイヤル時、貴様の使い魔が放った虐殺レーザーによって死んだ一人だ。
ああ、あんな屈辱は初めてだったとも。β時代からトップだった拙者が、その他大勢のプレイヤー共と一緒にめちゃくちゃ雑に殺されるとはな……!」
時代劇めいた口調が崩れた。よっぽど頭に来てたのだろう、声が怒りで震えている。
「ユーリよ。あの日から、頭の中は貴様のことでいっぱいだった。
ゆえに勝つために情報を仕入れ続けた。貴様の映っている動画を何度も再生し、さらには掲示板からまとめサイトまで、貴様についての噂話がありそうなところは全て巡回した……!
また本人からのインタビューがないかと写真集も買ったが、何もなくて残念だったぞ……」
いや知らねーよ! つかお前も例の写真集買ってたのかよッ!?
微妙に肩を落とすザンソード。ヤツは歩き去りながら最後に言い放つ。
「だが、これであの日の屈辱は消え去った。あとは静かなる心で『ギルド大戦』の時を待つのみよ。
さらばだ魔王よ。次は貴様が怒りを燃やしながら、拙者にかかってくるがいい。フフフフフ……」
――そんなことを言いながら去っていくアイツの背中に、俺は漆黒の矢を打ち放った!
「っ、なにィ!?」
弦の音で察知したのか、咄嗟に刃を振るって矢を弾き落とすザンソード。
良い反応だがもう遅い。すでに必要な距離は確保した。そもそもお前は、俺がまだ生きていることを察するべきだったのだ。
立ち上がった俺を見てチャンバラ野郎は瞠目する。
「死んでいないだと!? 貴様、情報では弱体化したはずでは……いやまさか、その妖艶なる衣装に一新した影響か!?」
「衣装についてはほっとけよ。……俺についての情報を集め続けたならわかるだろう? クソ運営に弱らされたまま、泣き寝入りするような性格はしてないってなぁ!」
さぁ、今度はこっちが攻める番だ!
俺は再び【武装結界】を発動し、アイテムボックスに収まった二十一本の魔剣や魔槍を全射出する。
さらには指の間に複数本の矢を握り、ザンソードに向かって打ちまくった!
「ぬぉおおおおおッ、負けるかァッ! アーツ発動、『牙突瞬連迅』『弧月烈閃』『旋風一閃』!」
アーツによって攻撃を弾きながら再び接近してくるザンソード。
システムによるモーションアシストを受けて強烈な斬撃を放ちまくるが、徐々にその顔は焦りで曇っていった。
当たり前だよなぁ?
「魔法だろうが剣技だろうが、アーツを発動するには『MP』が必要だ。いつまでも乱発できるものじゃないだろ」
対してこちらが攻撃に使っている【武装結界】はスキルだ。『HPが一割以下の時』という発動条件さえ満たせば何の消費もなく使える。俺は常にHPを1まで減らしているから、実質使い放題だ。
さらに、俺が持っているノーコストでの攻撃手段はこれだけじゃない!
「禁断召喚ッ! 現れろ、『キメラティック・ライトニングウルフ』ッ!」
『ワォオオオオオオオオンッ!』
俺の呼び声に応え、漆黒の魔法陣より雷を纏った狼が現れた。
これがハイサモナーの『ジョブスキル』、禁断召喚だ。十二体までの召喚制限とは別に、アイテムと融合させたキマイラモンスターを召喚できるのだ。
ライトニングウルフは地面を蹴り、一瞬にしてザンソードへと迫った!
「くっ、コイツはスキンヘッドを麻痺させたモンスター!?」
「その通り。触れたら痺れる俺の愛犬だ! そら、避けてみろよザンソード!」
とは言ってもここは洞窟。大狼から逃れることはほぼ不可能だろう。
さぁ、動きを封じてしまえばそれで終わりだ。今度は俺のほうが勝利を手にしかけた、その時。
「チィ……! アーツ発動、『ファイヤ・エンチャント』!」
なんとヤツは、魔法系のアーツを使用してきたのだ!
激しい炎を噴き出す刀。ザンソードはそれを振るってライトニングウルフを一瞬で斬り裂いたのだった。
刃に魔法を纏わせたせいかヤツに麻痺した様子はない。だがその表情は苦々しいものとなっていた。
「まさか、イベント前にセカンドジョブを晒してしまうことになるとはな……」
「セカンドジョブだと?」
「知らんのか? 50レベルを超えたプレイヤーは、新たにもう一つのジョブを選べるようになるのだ。
拙者が選択したのは『エンチャンター』。武器に様々な効果を宿らせる魔法職だ」
なるほど、それで侍なのに魔法が使えたってことか。いわゆる『魔法剣士』ってやつだな。
つーか俺の情報を集めまくりながらレベル50に到達してるとか、コイツ一日にどんだけゲームしまくってんだよ……あっ。
「そ、そうか、なるほどな……うん……」
「ってなんだその微妙に優しい表情はッ!? えぇいやめろやめろっ、母上を思い出すからやめろッ!」
叫び散らしながら刀を構えなおすザンソード。
その顔には、ついうっかりで奥の手を晒してしまった恥と苦渋の色が浮かんでいた。あのままわざと死んでいればよかったんだしな。
しかしそれを馬鹿にはしない。むしろそこまで俺との戦いに熱中してくれたことに、喜びすらあるくらいだ。
俺は彼へと笑いかける。
「恥ずかしがるなよザンソード。俺だって、スキル【執念】が復活したことを見せちまったんだ。
負けたまま死体のフリをしてやり過ごす手もあったんだが、そんなのは臆病者のすることだろう?
俺もお前も、負けん気だけは『最強』だったってだけだ。だからそんなにくよくよすんなよ」
「っ……ユーリよ、お前……」
「さぁ、やろうぜザンソード。お互いに全部をさらけ出した上での、真剣勝負を!」
周囲にポン太郎と無数の武装召喚陣を出現させながら、俺は弓を強く握った。
それを見てザンソードも再び表情を引き締める。
ヤツも俺と同じく、微笑を浮かべながら刀を構えた。
「フッ……いいだろう! いざ決着をつけようぞッ!」
「ああ、ギルド大戦の前祝だ! 大将同士、パァッと盛大に殺し合おうぜ!」
笑い合いながら、俺たちは共に行動に移った。
遠距離攻撃に特化した俺と近距離攻撃を極めた男とのぶつかり合いだ。
剣を、槍を、斧を、そして矢を射出する俺に対し、ヤツは燃える刀一本で走り寄ってくる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーッ!」
雄叫びを上げながら攻撃を弾いていくザンソード。MPが尽きたことでアーツを使えなくなってしまったようだが、まったく怯んだ様子はなかった。
身体中を武装の雨で傷付けられながらも、ザンソードは猛烈な勢いで突き進んでくる!
そうしてついに、俺の眼前にまで迫ったところで……、
「――ぐぅ……無念……ッ!」
ヤツはだらりと腕を下げ、壊れた人形のように倒れるのだった。数多の裂傷を受け、ついにHPが尽き果てたのだ。
そんな男の身体を抱き留め、俺は健闘を称えて背中を叩いた。
「楽しかったぜ、ザンソード。『最強』の称号の取り合いは、三日後のイベントでやることにしよう」
「あぁ……次は負けんぞ、魔王ユーリよ……!」
粒子となって消えていくザンソード。
かくしてヤツに勝利した瞬間、俺のレベルは50に達したのだった。
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