4:月下の死闘と初勝利!
だだっぴろい草原の中、手元に弓矢を顕現させて弦を引き絞る。狙うのは数十メートル先にいるウサギのモンスター『ホーンラビット』だ。
よ~し悪く思うなよウサギィ! 草をモシャモシャと食っているその無防備な背中に向かって、バシュっと矢を放ったのだが――、
『ウサァ~ッ!』
「ってあークソッ、外した上にこっちに気付かれたッ! 撤退だー!」
ヤツがこちらを振り向くや、俺は一目散に逃げだした! 一度攻撃を受けてわかったが、防御0じゃ一撃でHPの半分を持ってかれちまう!
チクショウがぁあああああああああッ! 最弱の練習用モンスターだって聞いてたのに、これで三回連続の敗走だーッ!
◆ ◇ ◆
「――はぁ。駄目だ、サモナーに弓に運極振り……マジで全部ゴミすぎる」
街を出てから数時間。俺は未だに、一匹もモンスターを仕留めれずにいた。
気付けば辺りは真っ暗だ。現実の世界でも真夜中だろうし、そろそろログアウトしたほうがいいかもしれない。
草原の中にあった大きな岩に腰を下ろし、俺はメニューウィンドウを呼び出した。
「ログアウトボタンはっと……いや、その前にアイテムを確認しておくか」
キャラ作成時に『初心者の弓』と一緒にもらえた『初心者の矢』は……うわ、あと二本しかねぇ!?
つまり放ったものを回収しない限り、たった二回しか攻撃できないってことだ。俺は弓の不遇さに改めて溜め息を吐いた。
「街に戻って購入するにも金がかかるよなぁ。俺、まだモンスターを倒せてないから所持金ゼロだし……どうすんだよ一体……! しかも今は夜だから、もっと弓が当たりづらくなってるし……!」
俺は完全に途方に暮れた。モンスターを操るサモナーの職業には一撃で相手を倒せるような『アーツ』がない上に、ステータスは運極振りでボロカスだ。逆に相手の攻撃を二発もくらったら死んでしまう。
そんで通常攻撃は当たりづらい上に、回数制限もあると! なんだそりゃっ!
「はぁぁぁぁ、不幸だ……! 結局ゲームをはじめてよかったことなんて、気の良いスキンヘッドのやつと出会えたことくらいじゃねぇか! くそっ、やっぱりキャラを作り直そっと!」
そうして俺がログアウトボタンをタップしようとした時だ。不意に地面がボコリと爆ぜるや、錆びた剣が飛び出してきた!
『ウラメシヤ……ウラメシヤァーーーッッ!』
「って、なんだよ一体!?」
口もないのに唸り声をあげる謎の剣。いきなりのことに戸惑いながらもソイツを注視してみると、うっすらと文字が現れた。
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レアモンスター:リビング・ウェポン
プレイヤーに放棄された初期装備品が、持ち主に対する恨みから蘇った存在。
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っ、なるほど。そういうモンスターだったか。そういえば今は夜だから、ゴースト系の敵が現れたって不思議じゃないな。レアモンスターというからには、ヤツはその中でも珍しいタイプのモンスターらしい。
『キシャァアアアアアアーーーーー!』
「ッ!?」
って納得してる場合じゃない! 斬りかかってきたリビング・ソードの攻撃を横に転がることで回避し、すぐさま弓矢を顕現させる!
「くそっ、これでもくらいやがれッ!」
弦を引いて矢を放つ! だが相手が細身なこともあって、矢はどこかに飛んで行ってしまった! クソッ、これで俺はあと一回しか攻撃出来ねぇッ!
戸惑う俺に、リビング・ソードは真っ直ぐに突進してくるッ!
『ウラメシヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
ああ、こうなったらイチかバチかだ! 俺は弾丸のように飛んでくるリビング・ソードを前に手を広げ――白羽取りを行った!
結果は見事に成功だ! 奴の刀身を受け止めることができた!
『キシャァ……キシャーッ!』
「くぅうう……ッ!?」
だが、ヤツの執念は強かった。こちらの筋力値がまったくないこともあり、俺は勢いのままに押し倒される!
そうして倒れ伏す俺の顔へと、ヤツは切っ先を近づけてきた……!
『ウラメシヤ……ウラメシヤァァアアアアアアア!』
俺の手のひらを削りながら、ジリジリと迫るリビング・ウェポン。持ち主に捨てられた憎しみが、怒号となって夜空の下に響き渡る。
ああ、だが……頭に来てんのはこっちもなんだよォッ!!!
「ふざけんなふざけんなふざけんなッ! 現実逃避をしたくてゲームを始めた結果がこれかよッ! 悪質な連中のガセに踊らされ、何も出来ずに無様に死ねだと!? ふざけるなッ!
俺のことを……舐めんじゃねぇーーーーッ!」
折れるほどの勢いで首を傾け、両手を離してリビング・ウェポンを解放するッ! するとヤツは俺の頬を斬り裂きながら、地面に勢いよく突き刺さった!
『キシャァアアアアアアッ!?』
戸惑いながらも再び浮かび上がろうとするヤツだったが、させるものか! 俺はリビング・ウェポンの柄を全力で握り締めると、空いた片手に最後の矢を顕現させた!
そうしてソレを、弓につがえるのではなく――、
「食らいやがれぇッ!!!」
リビング・ウェポンの錆びた刀身に、思いっきり叩きつけたッ! 筋力値のせいで腕が跳ね返される始末だが、知ったことかッ!
折れないように先のほうを握り、ガンガンガンッと何度も何度も何度も叩き付ける!
するとここで、幸運値極振りの効果が発動した――!
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スキル【真っ向勝負】発動! ダメージアップ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージアップ!
スキル【真っ向勝負】発動! ダメージアップ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージアップ!
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低確率でダメージを上昇させるスキル二つが、攻撃を当てるたびにほぼどちらかが発動する!
スキル【真っ向勝負】はスキンヘッドと殴り合った後に習得していたものだ。俺はあいつと出会えた『幸運』に心から感謝した!
『ウゥゥゥゥゥゥッゥゥウッ、ウラメシヤァアアアアアアアアアアッ!』
「ッ!?」
その時だ、リビング・ウェポンが力づくで拘束から逃れたのだ! ヤツは矢を握り締めていた俺の腕を一瞬で斬り飛ばすと、放物線を描いて距離を取った。
そうして――今度こそ俺を殺すべく、超高速で突進してくるッ!
「ハッ、やってくれるぜ。片腕がなくちゃ白羽取りも出来ねぇか……!」
――だが、上等だ。見れば先ほどの連打のおかげで、リビング・ウェポンの刀身にはヒビが入っていた。ヤツも限界が近いのだろう。
ならばッ、
「真っ向から、ぶん殴るだけだあああッ!」
俺は残った片手を握り締め、ヤツに向かって全力で駆け出したッ!
一瞬にして縮まっていく距離の中、俺は腕を引き絞り、ヤツの切っ先めがけて突き出すッ!
『キシャァアアアアアアアアアアアッ!』
「オラァアアアアアアアアアアアアッ!」
月明かりの下、刃と拳が激突を果たすッ!
鋭い切っ先はいともたやすく俺の皮膚と肉を抉り裂いていくが……知ったことかーッ!
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スキル【根性】発動! 致命傷よりHP1で生存!
スキル【真っ向勝負】発動! ダメージアップッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージアップッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ激増ッ!
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その瞬間、圧倒的な幸運値により全てのスキルが発動を果たすッ! 文字通り【根性】によって鋼よりも硬くなった俺の骨は、リビング・ウェポンの切っ先を叩き割った!
『キシャァアアアーーーーッ!!?』
「いい加減にッ、くたばりやがれーーーッ!」
気合一閃――! 俺の拳はヤツの刀身をバキバキに打ち砕き、残った柄を何十メートルも向こうへと殴り飛ばしていったのだった!
その瞬間、盛大なファンファーレが鳴り響く……!
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レアモンスター討伐! レベルが5までアップしました!
ステータスポイント40獲得!
条件:『初討伐が自分よりも格上のモンスターor30回以上、自分より格上のモンスターを討伐する』達成!
スキル【ジャイアントキリング】を習得しました!
【ジャイアントキリング】:極低確率でレベルが上の相手に対するダメージを一割アップさせる。
調教成功! レアモンスター:リビング・ウェポンが仲間になりましたッ!
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「よっ……しゃあああッ! やってやったぜーッ!」
ファンファーレが響き続ける中、俺は拳を上げて初勝利を喜んだのだった!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』
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