46:宣戦布告のスキンヘッド!
まぁデザインのほうは俺の伝達ミスだから仕方ないとして、『死神姫』シリーズの性能は最高だ。
俺はパッツンパッツンでスケスケなドレスを見ながら、ステータス画面を開いた。
さてさて、バトルロイヤル前は『2500』くらいの幸運値だったんだが、これでどうなるか……。
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名前:ユーリ
レベル:46
ジョブ:ハイサモナー
使用武器:弓
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:0 敏捷:0 幸運550×3×2+54+900=『4254』
スキル
【幸運強化】【執念】【致命の一撃】【真っ向勝負】【ジェノサイドキリング】【非情なる死神】
【アブソリュートゼロ】【ちゃんと使ってッ!】【逆境の覇者:HP1のため発動状態。全ステータス二倍】【神殺しの拳】【魔弾の射手】【魔王の波動】【魔王の眷属】【魔王の肉体】【悪の王者】【武装結界:限定スキル】【異常者】
装備
・頭装備『呪われし死神姫の髪飾り』(作成者:フランソワーズ 改変者:グリム)
装備条件:プレイヤーの筋力値・魔力値・防御値・敏捷値全て半減 MP+100 幸運+300
・体装備『呪われし死神姫のドレス』(作成者:フランソワーズ 改変者:グリム)
装備条件:プレイヤーの筋力値・魔力値・防御値・敏捷値全て半減 MP+100 幸運+300
・足装備『呪われし死神姫のブーツ』(作成者:フランソワーズ 改変者:グリム)
装備条件:プレイヤーの筋力値・魔力値・防御値・敏捷値全て半減 MP+100 幸運+300 マーくん憑依状態
・武器:『初心者の弓』 装備条件なし 威力1
・装飾品:『呪われし姫君の指輪』(HPを1にする代わり、極低確率でスキル再発動時間ゼロに) 『邪神契約のネックレス』(HP1の時、幸運値三倍) 『耐毒の指輪』(低確率で毒を無効化)
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「うおおおおお! 幸運値、ついに四千超えしやがったー!」
大幅にレベルアップしたのもあるが、やはり装備補正がハンパない!
レベル40を超えてからはかなりレベルが上がりづらくなっていたため、これは助かる。
「本当なら幸運値以外のステータスが全部半分になってるところだが、俺は元からゼロだからなぁ。つまりデメリットなしってことだな!」
「クックック、尊敬する魔王殿に喜んでもらえたようで何よりだ。デメリットごつ盛りのトンデモ装備を作れて、私も楽しかったぞっ!」
グリムと一緒に満面の笑みで笑い合った。俺は幸運値極振りの道をさらに極めることが出来たし、コイツとは相性最高だ。
これからも末永くお世話になっていきたいもんだな。
「あ、そうだグリム。シルってやつの装備もいじり終わったら、今度はNPCたちの装備も用意してもらえるか?」
「うぐっ!? ……たしか600人以上いたっけ。イベントまでに間に合うかなぁ……?」
「無理はしなくていいぞ。間に合わなかった分は街で売ってる高級装備を着せればいいだけだから、どうか気負わずやってくれ。……職人NPCたちも、グリムに協力してやってくれよ?」
『ひぃっ!? わ、わかりました魔王様ッ!』
俺の一言に作業していた職人たちが震える。
う~む、スキル【悪の王者】の影響でビビられやすいんだったな。キビキビと言うことを聞いてくれるから便利なんだが、この反応は傷付くなあ。
ちょっとクーデター起こして無理やり新領主になったからって、そこまで怖がることはないだろう。絶対にあのスキルのせいだなっ。プンスカ!
「職人たちよ、恐れることは何もない。俺は有能な部下に対してはとことん褒美を与えるつもりでいる。
お前たちの作り上げた武具が敵を貫き斬り裂くたびに、それに見合うだけの土地と大金をくれてやろうッ! さぁ、欲望を燃やして腕を振るぇッ!」
『はっ……ハハァッ!』
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・職人NPCたちの人格属性がわずかに悪寄りになりました。
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ってなんでじゃーいッ!? 「働き者にはやさしくするよっ! だから頑張って働いてねっ!」って言っただけなのに、なんでお前ら悪に堕ちるッ!? バグってんのかお前ら!?
「おいグリム」
「クックック、流石は魔王殿。見事な悪の首領っぷりだなっ!」
って悪の首領じゃねぇよ! 気持ち的に勇者やってるつもりなんですけど!?
もう意味がわからん。周囲の評価にぐぎぎぎぎぎぎぎぎっと俺が唸っていたその時、ふいに屋敷の入口のほうから争う声が聞こえてきた。
「きっ、貴様止まれーッ! 貴様のような蛮族を、魔王様に接触させるわけにはっ」
「アァンッ!? てめぇ、オレ様とユーリの仲を邪魔すんじゃねぇえええッ!」
野太い怒号が響くのと同時に、何枚もの壁を突き破ってサモナーNPCが吹き飛んできた!
そうして出来た穴をズカズカと進み、そいつはでかい身体とツルツルの頭をにゅっと俺の前に覗かせた。
「お~ようやく見つけたぜぇ! よぉユーリ、久しぶりだな~!」
「スキンヘッドー!」
なんだ、何事かと思ったらお前かよー!
俺たちは再会の喜びに笑いながら、ハイタッチを交わし合った。
ちなみに側にいたグリムはスキンヘッドを見た瞬間、ピィッという声を上げて部屋の隅に隠れてしまった。なにやら「身体一つで魔王殿と殺し合った『鬼神』が、なぜここに!? まさか襲撃……!?」と怯えている。いいヤツだから安心しろっての。
「おぉ~ユーリ、見ない内にずいぶんとエロ可愛い恰好になったもんだなぁ……!
ほれ、横乳ツンツンっ! ってうおっ、指が吸い込まれる!? クセになる柔らかさっ……!」
「くすぐったいからやめろっての。『通報しますか?』ってメッセージが出てきてるし、間違っても俺以外にはやるなよ?
……それでスキンヘッド、今日は何しに来たんだよ? ちょっとした用事ならフレンドメッセージを送ってくれればいいのに」
そう言うと、スキンヘッドは「そういうわけにはいけねェんだよな~」と困ったような笑顔を浮かべる。
そして、次の瞬間――血管が浮かぶほどに握り締められた大きな拳を、俺の心臓へと打ち放ってきたッ!
あまりの速さと強烈さに空気の壁が爆裂し、ズパァァァァンッ! という音が部屋中に響き渡った。
だが、俺にはほとんど衝撃がない。胸の肉にヤツの拳が当たり、そのまま胸骨に届くかどうかというところで寸止めされていたからだ。恐るべき肉体のコントロール精度である。
スキンヘッドは熱い拳を俺の心臓部へと押し付けながら、ニィィイイっと獰猛に牙を覗かせる。
「――宣戦布告しにきたんだよ、ユーリ。
次のイベントでテメェのことをぶっ潰すために、六十四ものギルドが同盟を組むことになった。このゲームに存在しているほぼ全てのギルドだ。
総司令はザンソードの野郎だが、同盟を掻き集めたのはこのオレ様だ。流石に一人じゃテメェを殺せそうにないからなぁ」
だから数の力で殺すと、きっぱりと言い切るスキンヘッド。
それは聞く者によっては卑怯な策だと感じるかもしれないが、俺は違うと断言する。
コイツは……この男は、俺のためだけに各地を奔走し、仲間たちを掻き集めてきたのだ。冷静に戦力差を見極めて、俺を確実に殺すために全力を尽くしてくれたんだ……!
「あぁ、スキンヘッド……!」
俺は嬉しさで胸がいっぱいになった。胸に押し付けられたヤツの拳が、その奥にある俺の心臓を高鳴らせる。
その剛直な凶器で貫かれてみたいと思いながら――それと同時に、コイツのことをぶっ殺したいと切に思った!
俺は爪先立ちで背伸びをし、長身のヤツの瞳に顔を近づかせる。
「上等じゃねぇかスキンヘッド! やっぱりお前は最高だ……全部の敵を薙ぎ払って、必ずお前に会いに行くぞ……!」
「あぁ、その意気だぜェユーリ! 他の野郎どもは所詮オマケだ。最後は必ず、このオレ様がテメェを滅茶苦茶にしてやるよ……ッ!」
吐息が混ざるほどの距離でギラギラと睨み合う俺たち。必ずお前を倒してやるぞと、互いに闘志を燃やし合う。
そんな俺たちに対し、なぜかグリムは微妙に頬を赤らめながら聞いてきた。
「あっ、あの、お二人は付き合ってるんですか……!?」
「「は? なんでだよ?」」
いったいどういう意味だろうか……?
彼女の謎の質問に、俺とスキンヘッドは「う〜ん?」と揃って首を捻るのだった。
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